ニュージーランドの現地人のファミリーは、広い庭のある家を好みますが、芝生や庭木の手入れが苦手なアジア人には、そのような家は好まれません。今回は、ニュージーランドの不動産における「庭」という要素について見ていきます。
ある日舞い込んだ1通のクレームメール
ある日の午後、1通のメールを受け取りました。それは、我々が管理している家の隣の家のオーナー様からのクレームでした。
あなた方が管理している家にこれまでテナントとして居住していた人達は、定期的に庭の手入れをしていたけれども、今年に入ってからは何もされていない。
住んでいる人々はフレンドリーでよいが、庭の手入れに関して、注意するなり、業者の手配をするなり、何とかそちらから対応してほしい・・・というご依頼でした。
お隣の塀に木々の葉が散乱しているため、リビングから見えるせっかくのシービューが台無しになってしまったというのです。
もっともなご要望でしたので、至急現場に出向き、業者の手配をしました。今のテナントさんには、ある会社の社宅として使用いただいており、その方は日々の仕事で疲れ、庭の手入れどころではありませんでした。
テナント側は、庭の手入れは家主の負担で、家主側は、テナントの負担で・・・と、それぞれの主張はありますが、ここは高級住宅街の一角です。
通常は家主の責任のもと、芝刈りやガーデニング費用も含めた家賃を設定しており、家主は管理会社を通じて、手配をしてもらう流れになっています。
業者には依頼していたのですが、夏のオークランドは太陽が照り続け、芝生や木々がよく成長するのです。そしてサマーホリディになると、業者も平気で数週間~1カ月の休みを取ります。
では、休みの間は誰かほかの人に作業を依頼してくれるのかというと、何もありません。
平気で数週間もの間、サービスの提供が止まるのです。
ちょうどそれに当たってしまったため、その数週間の間にお隣からクレームが出てしまったという悪例でした。
庭の「芝刈り」の代金はどの程度必要か?
芝刈りの代金ですが、約200㎡の広さの庭の場合、1回につき20~30NZドル(1500~2000円)、その倍のサイズになりますと、50~60NZドル(3750~5000円)かかります。
これは隔週などの定期注文の場合の金額です。
1回のみといった単独注文の場合は、広さあまり関係なく、狭い庭でも最低50NZドル(約3750円)はチャージされます。
そんな金額がかかるのであれば、自分でカットしようという住民も多いのですが、持っているのが手動の芝刈り機なのか、オイルで動く電機芝刈り機なのかで、カットする頻度も変わります。
また、機械自体にある程度お金がかかりますので、メンテナンス代も入れると、それほど大きく節約できるものでもなさそうです。
ニュージーランド現地人の家族は、芝生があり、庭が広い家を好みますが、その一方でアジア人は、手入れができない人も多いため、庭は狭くても気になりません。
仮にあったとしても、タイル張りにしたり、デッキを作って芝生の量を減らしたり、石を敷き詰めるなどして、可能な限り芝刈りを回避できる構造にして家を建てています。
庭の有無、芝生の有無が客付けに及ぼす影響は?
家を購入するとき、建設するとき、賃すとき、借りるとき・・・室内のサイズや装飾も大切ですが、庭のサイズや敷地内のデザインも注意したうえで選択することをお薦めします。
家主の立場からすれば、「家賃には芝刈り代も含まれるし、どうせテナントの負担だから、いくらでもいい」と思うと思います。
ですが、家賃が高騰するニュージーランド国内では、この芝刈り代の10ドル、20ドルの負担が、借り手がすぐ付くかどうかのきわどいところになることがあります。
そもそも庭が狭いとか、あるいは庭があっても芝生がないといった家の場合は、負担金が少なくてすむため、討論の余地はありません。
しかしその一方で、芝生の部分が少ないために、借りてもらえないというケースもありますので、どの地域にご自身が家を投資するのかをよく考え、庭の広さや芝生の量にも注目して、家を選ぶといいでしょう。
エコな生活やオーガニック商品に注目しているこの国の人々は、家庭菜園も大好きです。
木枠やレンガで囲いを作り、トマトやキュウリなどの野菜、ニンジンなどの根菜を植え、自給自足の生活を楽しみます。
最近はいろいろなハーブ栽培も盛んで、朝からフレッシュジュースを摂って健康管理をするのも人気です。
それゆえに、花を植えるだけではなく、こういった家庭菜園を添えることで注目され、家の早期販売、賃貸契約成立につながるのです。
お客様が家のどこに注目するのか、非常に興味深く感じます。
Author Profile
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元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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