【連載191回目】「NZ移住のきっかけは、阪神淡路大震災でした」現地不動産のプロが、不測の事態に備えた国際的な〈資産分散資産・資産形成〉を真剣に勧める理由
2024年1月19日
連載コラム 一色 良子南半球のニュージーランドでビジネスに追われた年末年始、突然飛び込んできた祖国・日本の災害と大事故のニュース。現地の不動産バイヤーとして活躍する筆者が、自身がニュージーランド移住のきっかけとなった阪神淡路大震災を振り返り、国をまたいだ資産分散・資産形成の重要性について解説します。※本記事は、2024年1月5日現在の情報に基づいて執筆されています。
日本の災害・事故に心を痛めた年明け
年明け早々に起きた能登半島地震と、2日の航空機事故のニュースは、ニュージーランドでもすぐに報道され、映像も多く放映されました。
まずは避難生活をされている方々にお見舞いを申し上げるとともに、亡くなられた方々のご冥福を心からお祈り申し上げます。
航空機事故のときは、ニュージーランドから日本へ出発される方、そして日本からニュージーランドに戻られる方とそれぞれ連絡を取っていたことから、現地の様子をリアルタイムで伺うことになり、お正月気分は一気に吹き飛びました。
自身と航空機事故、いずれも心を痛めていますが、仕事の手は止められず、年末年始も営業活動を続けていました。
年末年始、休暇を取る人ばかりではなくなった
毎年のことですが、ニュージーランドはクリスマスを盛大に祝います。どのショッピングモールも賑わい、家族・友人と大切な時間を過ごすため、この日で年内の仕事を納めるのです。
ところが、新年を迎えた元日は、流石にハッピーニューイヤーの声を聞くものの、あとは単なる夏の一日に過ぎません。
街に出てみても、思いのほか人出がありました。ひと昔前までは、この時期は長期休暇を取って海外旅行へ旅立つ方も多く、そうでなくても、オークランドから出て近隣の街でホリデーを楽しむ、という方が大半だったことから、私たち不動産業も2~3週間は休業していたものです。
しかし、コロナ禍の影響か、必ずしも年末年始に休暇を取る人ばかりではなくなってきています。おそらく、時期をずらして海外へ行く人が増えてきたからではないかと思います。
そうはいっても、ホリデーの人も多く、そんな人たちは時間のある時期にいつもよりも精力的にネットで不動産情報を検索・チェックし、興味がある物件に問い合わせをしています。
不動産会社は年末年始関係なくメールや電話対応に追われ、内覧の予約を受け付けます。私自身も今回のホリデーはオークランドを出る予定がないことから、問い合わせには即時対応。ホリデー返上での勤務が続きました。
実際、昨年の12月27日には物件の問い合わせを受け、現地で内覧を行い、2日後の29日には速攻で契約オファー。オーナー様とやり取りして、無事、12月31日には条件付き契約オファーが成立。年内中に何とか片が付き、両者ハッピーに新年を迎えることができました。
ニュージーランドの不動産売買はそれほどまでに活発なのです。
資産分散化、有事の備え
実は今年最初の記事として、2024年の価格傾向、ファーストホームバイヤーの動きについて書いていたのですが、現在の日本の皆様にお伝えすべきことではないと思い、2ページほど執筆していた記事を削除。今回の内容をお届けすることにしました。
近年の大地震といえば、1995年1月17日、阪神・淡路大震災、2011年3月11日、東日本大震災。そのほかにも、熊本や北海道でも大きな地震がありました。実は筆者は、1995年の阪神・淡路大震災を経験したことがきっかけでニュージーランドへの移住を決心し、いまに至ります。
あの震災がなければ、自分の人生はまた異なったものになったのではないか…と考えると、非常に感慨深い思いです。東日本大震災のときには、既にニュージーランドに移住していましたが、異国の地に住んでいても、大きな衝撃と葛藤がありました。
そしてまた、新年早々に大きな地震が起こり、移住したいまの自分に何ができるのだろうか、という思いが沸き上がるとともに、再び胸の内に葛藤を覚えています。
そして考えついたのが、この場をお借りして、自らの移住の経験談や、現在の環境での知恵を提供させてもらうことなのではないか、ということです。
命を守るために避難し、崩壊した自宅をどうするべきか思い悩んでいる方もいれば、幸い難を逃れ、若干心に余裕がある方、地震の影響はないものの、毎日の報道で被災者の方々を心配している方もいらっしゃると思います。そういった方々に向け、「移住」という選択肢について、少しだけお話をさせていただきます。
①30歳以下なら「ワーキングホリデー制度」の活用も
18歳から30歳までなら、ワーキングホリデーの制度を活用し、海外である程度の就労をしながら生活することができます。
中・高・大学などでも、それぞれの勉学のために留学することもありますが、卒業してしまうと、留学は難しいことも多いのではないでしょうか。しかし、ワークキングホリデーなら、すでに社会人になっている方も比較的活用しやすいのです。現地で仕事を探し、収入を得るチャンスを作り、移住も視野に入れた暮らしをしたいと考える方には最適な方法かもしれません。
思い切って行動に移し、自らが先駆者となって、ワーキングホリデーをきっかけに移住し、家族・親族を海外へ導く、という道もあります。
カナダやアイルランドなど、一部の国では35歳までの受け入れがあるため、30歳を過ぎていたとしても、それらの国であればチャンスがあります。
日本を出て、ほかの国とのつながりを持ち、国際的な視野を培うためには、よい方法だといえます。
②「親子留学」という選択肢も
近年、お子さんの英語教育や国際的感覚を育成するために、幼稚園や小学校から留学される方も増えています。その場合、同行する親御さんにもビザが必要ですが、ニュージーランドでは「保護者ビザ(ガーディアンビザ)」が取得できます。もちろん、取得には条件があり、就労にも制限がありますが、ワークビザや学生ビザと比較すると、少ない条件での取得が可能です。
経済的に、妻子のみ移住し、ご主人は日本で仕事をして時々渡航…というケースが多いですが、起業することで「起業家ワークビザ」などが取得できれば、家族全員で暮らせる道もあると思いますので、ビザコンサルタントと相談し、ご自身の実力、資産力を考え、実行できる方はチャンスをつかんでください。
とはいえ、なにかのきっかけでニュージーランドに足を踏み入れても、資産がなければ暮らしていくことはできない、厳しい現実があります。
上記のワーキングホリデーや保護者ビザも、言わば一時しのぎで、その段階からしっかりと繋がりを持たないと、ワークビザ、永住権を取得するのは非常に大変です。
③資産分散としての不動産投資で外貨を得る
現金で約2,200万円~3,000万円規模の現金を動かせる方なら、オークランドでの不動産投資ビジネスにも可能性が見えてきます。
日本にいながら、外貨を稼いで資産の分散化を図ったり、その資金でニュージーランドでの生活や留学資金を用意したりすることも可能です。
とはいえ、机上だけでは海外に拠点は作れませんし、1週間程度の下見ではわからないこともたくさんあります。これをきっかけに両国を行き来し、そこで体験して得たものが、将来的なメリットに繋がっていけばと思います。
いまからコツコツ実行すれば、3年後の移住を検討できるぐらいにはなるかもしれません。移住はしなくても、ニュージーランドに不動産を持ち、最低限の収入を確保していたら、万一日本での収入が途切れるような状況になっても心強いでしょう。
投資へのチャレンジを足掛かりに、新しい人生の可能性を探る
「最低限の収入」の基準には個人差がありますから、いくら投資したら安心、といった保証はありませんが、しかし、実際に投資にチャレンジすることで、私たちのような不動産業界の人間だけでなく、弁護士、会計士とも交流ができ、そこからのつながりでいろんな分野の方達と出会い、ご自身で築き上げる道、レールを模索することもできます。
すべてのレールを敷いてもらうには、専門家に報酬を支払わなければなりませんが、金銭的にそれが難しいという方は、最初の一歩だけ専門家に任せ、以降は頑張って自分で築いていってはいかがでしょうか。それなりの努力は必要ですが、決して無謀なチャレンジではありません。
「ニュージーランド? あまり知らないなあ」「そういえばラグビーで有名?」といった程度の知識しかない方。興味はあるけれども行ったことがない方。ちょっとだけ行ったことがある方。それぞれの温度差はあると思いますが、この地に長年暮らす筆者は自信を持って、ニュージーランドは「人の心が温かい国」だと申し上げます。
島国で日本と共通する面も多々あり、とくにオークランドは国際都市ゆえ、日本の文化を紹介できる能力がある方にはぴったりな街・国です。
不動産投資を足掛かりとして、家賃保証のある確実な物件に投資をして収入を確保し、生活基盤を整え、日本でもニュージーランドでも暮らせるよう資産形成をしていただければと思います。
Author Profile
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元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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