ニュージーランドでは現在、政府が特別に宅地開発を進める「特別住宅地域」が着々と増えています。今回は、特別住宅地域の開発事情について見ていきましょう。
特別住宅地域では、よりスピーディな住宅建設が可能
建設住宅相のニック・スミス氏は、オークランドのマヌカウ、マウント・アルバート、ウォータービューといった3つの王領地の土地開発交渉が成立し、今後18か月から2年の間に、740軒の住宅建設許可が下りたことを発表しました。
これは昨年5月21日に、政府が2015年度予算において、5億2200万ドルを王領地の宅地化のための開発費として確保すると発表したことに続くステップです。しかし十分な開発合意が得られておらず、合意に至るのは今年後半までかかると予想されます。
スミス氏は以下のように述べています。
「740棟の住宅が建設可能な、これら3つの土地の購入交渉の成功は、政府が進める計画にとって大きな一歩となります」
「この3つの土地に、昨年発表されたモイレ・ロードの開発計画を加えると、合計で約940棟の住宅を建てることができます。2015年度予算で、この計画に割り当てられた5億2千200万ドルのほぼ全てが、これら4つの土地の購入資金に充てられました。それぞれの土地の購入代金は機密事項となっています」
昨年、政府は宅地開発に使用できる可能性がある土地がおよそ500ヘクタールあると述べています。これらの土地には、以下に紹介するような土地が含まれています。
まず1つ目は、マヌカウ・ステーション・ロードにある、600棟のアパートメント開発が可能な1.85ヘクタールの土地です。政府は金曜にオークランド・カウンシルとの合意に至っています。
60棟のアパートメント建設が可能なマウント・アルバートのニュー・ノース・ロードにある0.4ヘクタールの土地で、9区画からなり、NZTAと個人の所有地が混在しています。
これには、Nga Mana Whenua o Tamaki Makaurau 有限責任組合、およびビジネス・イノベーション・雇用省(MBIE)との協定が適用され、同組合によって数週間以内に開発提案書が提出され、8月までに最初の開発合意を得ることを目標としています。
2つ目は、80棟の家を建てることができるウォータービューにある0.91ヘクタールの土地です。この土地は、以前はNZTAが管理し、宿泊施設に貸し出されていました。このグレート・ノース・ロードの土地を巡ってはNZTAとの合意が得られたばかりです。
MBIEは現在宿泊施設と住人との移転合意を巡り、話し合いを行っています。この土地は有限責任組合との開発協定に基づき、6月に同組合による開発提案書が提出され、9月までに最初の開発合意を得ることを目標としています。
スミス氏は以下のように述べています。
「クライストチャーチの住宅供給における成功例のように、これら3つの土地と420棟の住宅を併せた分の住宅を供給するに当たっては、最初の供給が行われるまでに約18か月を要するだろうとみています」
「複数階建てのアパートメントの建設は、通常の住宅に比べ複雑なため、2年を要するでしょう。また、それぞれの土地の開発合意には、開発速度、ソーシャルハウジング(政府所管の賃貸住宅)の供給、目標住宅価格の設定といった要件が設定されます」
スミス氏が述べた4つの土地のうち、3つの土地は特別住宅地域に指定され、他の土地に比べより多くの住宅がより早いペースで建設することができます。
[図表]特別住宅地域
スミス氏は以下のようにも述べました。
「建設住宅省では、土地の供給、有技能者不足、インフラ供給、初回住宅購入者への融資、投資家への課税、建築資材費、切迫した住宅需要といった問題に体系的に取り組んでいます」
「これまでのところうまくいっており、オークランドでの住宅建築ペースを1稼働日当り10棟から40棟に引き上げました。しかし、需要に追いつくためにはこのペースを今後一稼働日当り50ないし60棟とする必要があります」
住宅不足解消への第一歩を踏み出したニュージーランド
統一未来党党首のピーター・ダン氏は、国内の住宅問題に対する現実的な解決策を見出すため、ナショナル・ハウジング協議会を招集しました。
ダン氏は、中央政府と地方政府、住宅建設業界、銀行(準備銀行を含む)、そしてソーシャル・ハウジング部門が協力しあってこそ、持続的な解決策が得られるとしています。
「これが今、政争の具とされています。協議会では住宅用地の供給増大を実現する方法、建設業界の開発能力の把握およびその能力を効果的に使用する方法、銀行が実行可能な融資パッケージ、そして中央と地方政府の役割を模索することが必要となります」
とダン氏は述べました。
これらにより、ニュージーランドは、政府主導による住宅不足解消の第一歩を踏み出すこととなりました。
Author Profile
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1982年、大阪女学院短期大学英語科卒業。カリフォルニア大学デイビス校留学。帰国後、旅行会社のツアーコンダクターに従事。1987年、ニュージーランドツアーの添乗を機に、移住希望を持つ。
1995年1月の阪神・淡路大震災を経験し、1996年に移住を実現。 自己の居住用物件さえあれば、落ち着いて生活ができると感じ、ワンルームマンション購入を実行。その経験を生かし、不動産業界に参入。当時インターネット環境が整いつつある中、日本語ウェブサイトを開設し、留学・観光・不動産投資についてのコンサルティングを始める。
現在、ニュージーランドの大手不動産売買仲介会社であるHarcourts New Lynn(ハーコウツ・ニューリン)支店にてセールスコンサルタントとして活動しながら、日本人のための投資コンサルタント会社Goo Property NZの代表として活躍中。
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