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Currency Rate1NZDJPY 94.06 USD 0.594 2024年04月27日 10:30 AM  更新

各産業の成長率から分析する「ニュージーランド経済」の展望

2016年4月8日

連載コラム 一色 良子

経済 開発

2015年度、ニュージーランド経済は大半の経済学者の予想に反し、期待以上の大きな成長を見せました。この成長率は何に起因しているものなのでしょうか? 今回は、各産業の成長率をもとに、ニュージーランド経済の今後の展望を分析します。


 

建設業、小売業、旅行業の成長が目立つNZ経済

12月期(第四四半期)のニュージーランド経済は、経済学者の大半が期待した以上の成長がみられました。特に建設業、小売業、旅行業の成長が顕著で、こうした成長は移住人口の増加、多額の家計支出、そしてカンタベリーおよびオークランドでのさらなる建設支出によって支えられています。

 

ニュージーランド統計局(Statistics New Zealand)によれば、昨年に比べGDPは12月期で0.9%、年間で2.3%上昇しました。四半期ごとの成長では、3月期および6月期に比べ0.3%上昇し、2015年の年間平均成長率は2.5%となりました。
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この結果は、経済学者が予測した四半期成長率の0.7%および年間成長率の2.1%を大きく上回るもので、予測段階では年間平均成長率を2.4%、準備銀行は四半期成長率を0.7%とみていました。

 

カンタベリーの再建およびオークランドの住宅建設を受け、同四半期の建設業の伸び率は2.5%でした。また、顧客消費および観光業の伸びを受け、小売業および宿泊業は1.7%上昇し、同期の農業生産高は1.7%、製造業は0.4%それぞれ下落しました。

 

 

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しかしながら、人口増加や購買所得が加味される実際の国内の1人当たりの可処分所得は12月期で0.1%、年間で0.4%下落しました。また、この年の人口増加率は1.9%上昇し、貿易では2%下落しました。同期の一人当たりの実質GDPは0.3%伸び、前年に比べ0.3%上昇、加えて同期の1人当たりの支出は0.7%落ち込んだものの、昨年同期からは1.4%上げています。

 

12月期の家計支出は1.0%伸びました(耐久消費財支出は0.8%の上昇。非耐久消費財である食品、ガソリン、および酒類では1.1%上昇)。固定資産への投資は1.1%下落し、工場、機械、および設備への投資は11.7%下落しました。

 

経済成長の大きな要因は「労働力と資源の投入」

こうしたGDP値は、オークランドおよびクライスチャーチでの建設支出と、かつてない純移住人口増、堅調な家計支出、そして観光旅行者の多額の支出によって、経済が予想された水準を超えて成長していることを表しています。

 

しかし、1人当たりの可処分所得の2期連続の下落は、この経済成長が長期的経済成長の指標である生産性や、1時間当たりの産出量の向上によるものではなく、さらなる労働力と資源の投入によるものであることを示しています。

 

この結果を受け、NZドルは対米ドルで0.5セント以上上げ、67.6USセント(=US Cents)となりましたが、米連邦準備制度理事会による金利動向予想の引き下げにより、既に1USセント以上このデータの発表前に上げていました。大口金利は2ベーシス・ポイント上昇しましたが、通貨は夕方までには以前のGDP水準に戻りました。

 

ウエストパック銀行・シニア・エコノミストのマイケル・ゴードン氏は、建設業および小売業は目を見張る程の盛況ぶりをみせる一方、鉱業、製造業、農業は弱いと述べました。さらに、2.3%という年間GDP成長率は、約2%の人口増加があったことを考慮しなければ素晴らしい数値だが、一人当たりのGDP成長率は、現時点ではとても緩慢としたものだとも述べています。

 

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ASB銀行エコノミストのキム・マンディ氏は、この成長は予想以上のものであり、これはビジネスサービス需要、小売販売、および建設が強いことに拠ると述べています。また氏は、ASBは準備銀行が再び(政策金利)OCRも2.0%切り下げるのを6月まで待つと予測しているとしながらも、依然早まる可能性があると述べています。

 

ANZ銀行のマーク・スミス氏は、この期待以上の結果は準備銀行の金利方針を変える程の規模ではなかったと言います。氏はまた、季節調整要因が成長に0.3%寄与していると指摘しています。金融情勢の引き締めはダウンサイド・リスクを高めるため、低インフレと緩やかなインフレへの期待という観点からは、さらに低いOCRが望まれるとも述べています。

 

2016年も「2%以上の強い経済成長」を続けると予想

ビル・イングリッシュ財務大臣は、下半期の成長率が伸びたことを歓迎するとし、これは政府の政策が結果を出し続けていることを示していると述べています。

 

「堅調な成長、雇用増、賃上げがみられる状況にありながら低インフレであるという異常な状態にあります。見解としては緩やかな経済成長が続くでしょう」とイングリッシュ氏は言います。

 

グリーン・ファイナンス・スポークスウーマンのジュリー・アン・ジェンター氏は、これらの数字は経済の貿易可能な部分(貿易産業)とそうでない部分(非貿易産業)とのギャップを浮き彫りにし、今やその差は産業が分化し始めた2000年以来最大であるとしています。

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12月期の貿易産業は0.8%縮小する一方で、非貿易業界は0.9%伸びました。「7年が経ち、国は貯蓄、投資、輸出を促し、融資および消費を減らす方向で経済バランスの再編を目指している」とし、緑の党がキャピタルゲイン税、研究開発費への支出の増大、キーウィ銀行の強化による活発な銀行間競争を推奨していると述べています。

 

CTUエコノミストのビル・ローゼンバーグ氏は「生産性が生活向上の基盤をつくります。生産性を大幅に高めることが将来の収入を高めるために必要なのです。同期のビジネス投資は2.6%、年間で1.4%減少しており、政府はビジネスへの生産的な投資をもっと行うべきです。わたしたちはより多くを生産しているにもかかわらず、その見返りを少ししか得ていないのですから」と言います。

 

2015年のGDP値の発表により、専門家による意見交換が行われ、2016年は、依然2%以上の強い経済成長を続けると予想されています。

Author Profile

一色 良子
一色 良子Goo Property NZ Ltd. 代表取締役社長
元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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