現地不動産屋が教えるニュージーランド移住&投資ガイド
Currency Rate1NZDJPY 96.13 USD 0.612 2024年05月25日 19:57 PM  更新

【連載182回目】NZ不動産「住宅価格、100万NZドル突破」の一方で…営業マン〈買い手市場〉のマーケットで肉体疲労を募らせるワケ

2023年5月30日

連載コラム 一色 良子

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南半球のニュージーランドは秋へと季節が移り替わり、不動産業界は多忙を極めています。その理由のひとつとして、「期日付き販売=Dead Line Sale」という不動産売買の手法が増えたことがあげられます。どのような事情があるのでしょうか。※本記事は、2023年4月10日現在の情報に基づいて執筆されています。

 

秋到来のNZ、不動産業界は「走りっぱなし」

 

日本はそろそろ葉桜へと変わり、学校の入学式や会社の入社式が行われる時期ですね。コロナ対策の規制緩和で今年は歓迎会も開かれているでしょうか。

 

ニュージーランドは、サマータイムも終わり、ついに秋が到来。街ではチョコレートのイースターエッグがお店に並ぶほか、連休を利用して小旅行を楽しむ人も多く、観光業が徐々に回復しつつあることを実感しています。

 

そんななかで不動産業界はというと、旅行などに行かずに不動産探しに勤しむ人もいるため、ずっと忙しいまま。オープンホームの数は伸びずとも、ゼロではないので、常に動き続けています。

 

ニュージーランドでは、サマータイムのことを「デイライト・セービング」と呼び、例年9月の最終日曜日から翌年4月の第1日曜日のあいだは、時刻が標準時から1時間早くなります。今シーズンは、2022年9月25日から2023年4月2日がその期間でした。

 

すっかりそのことを忘れていた私は「開始は毎年20日過ぎだから、終わるのも20日頃だろう」と、月初めの2日に終わるとはまったく考えていなかったのです。

 

4月2日の朝、自分の携帯・パソコンは自動で時刻が変更されるため気づくことができず、例年であれば、オフィスの仲間の誰かが、「デイライト・セービングは終わりだよ」とメッセージを送ってくれるのですが、それもなかった今年は本当に気づくことができませんでした。

 

果てには、自分で時間を変えなければいけない置時計をみて、「止まっているみたいだから、電池を交換しておいてね」と夫に伝えてしましました。

 

また、愛車の日本車はデイライト・セービング開始時に時計を調整することができず、夏の期間中はずっと1時間ずれたままの状態。同じ朝、車に乗ると、携帯の時計と車の時計の時刻が一致していたため、「あれ、時間変更できたの?」と混乱する始末。

 

幸いなことに、オープンホームの時間は携帯電話の時計に合わせて行動しているので、間違いなく開催することでき、お客様も多く来場してくれました。

 

朝から時計が止まったり、変更したかった時計はひとりでに直っていたりと、タイムスリップしたような1日のスタートでしたが、ある方から、何気なく「今日のオープンホーム、時間を間違えず、開催できたの?」という言葉をもらい、「そうか! 今日はデイライト・セービング終了日だった!」のだと初めて気付き、時計・時間がおかしいという疑問は解消されたのでした。

 

友人に話すと「何年この国に住んでいるの!」と笑われてしまいましたが、「気づかないくらい忙しかった…」と弁解させてください。

 

不動産売買は、オークションから「期日付き販売」へ

 

「そんなに忙しいなら、契約がどんどん成立して好調なんですね!」と思われるかもしれませんが、それも違うのです。

 

不動産販売の方法はいくつかありますが、そのなかでも「定価付け販売」や「交渉販売」であれば、どちらもある程度のオファーがあり、数回の交渉で売買契約が成立します。

 

定価付け販売は、市場に出す際に価格が決まってしまうため、高値で売りたい売主の希望にそぐわず、あまり好まれないほか、高値をつけすぎてしまうと、購入希望者が選択肢から外してしまう恐れもあります。

 

また、交渉販売は、いつオファーが来るかわからないため、売却時期が読めない、というデメリットがありますし、条件の悪いオファーが来ても、それを受け入れるか、まだ待つのかを考えなくてはいけません。

 

そのため、売主からは「オークション販売」が好まれますし、オークションによる販売であれば、1回で契約成立の有無がわかります。

 

ところが昨今の不況の影響で、不動産市場は買い手市場となってしまい、オークションによる販売は、契約の成立率が低くなってしまいました。

 

それに対応する苦肉の策として「期日付き販売(=Dead Line Sale)」での販売の件数が増えているのです。

 

期日付き販売は、その名の通り、販売をする期限を決め、その日までの期間にオファーをしてもらう、という販売方法です。

 

「入札(=Tender)」にも似ているのですが、入札の場合、購入希望者はオファーに対して手付金を支払わなければならないほか、売主は期限日までオファーの内容を確認できません。一方の期日付き販売は、手付金は必要なく、オファーが入り次第、その内容を確認することができます。

 

どちらの場合も、売主は提示金額の一番高いオファーを提示した購入希望者と契約する必要はなく、希望に近い条件を提示した購入希望者と契約することもできますし、契約をしない、ということも選択できます。

 

このように昨今では、期日があるため売買までの見通しが立ちやすく、よい条件で決まる可能性の高い、期日付き販売が売主に好まれる傾向にあるのですが、購入希望者の立場に立ってみると、期日までの限られた時間内に契約条件をまとめて、交渉をおこない、オファーの準備をしなければならない、ということになります。

 

交渉は、基本的に購入希望者の仕事のない時間にすることになります。そうなると、だいたいが夕方から夜の時間ですし、複数の購入希望者がでてくると、似たような日程での面談を希望されるため、一晩に2件を掛け持ちすることもありますし、夕飯を食べ損ねることもあるなど、「仕事量の増加=契約の増加」とは、一概にはいえないのです。

 

このように、面談を必要とする件数が増えているかと思えば、面談なしにメールだけで交渉が完結し、サインをする箇所なども心得ているなど、オファー慣れしている人もいらっしゃいます。

 

初めて家を買うため、面談や契約書へのサインも慎重になる人もいれば、不動産売買の流れを心得ていて、メールだけでサインをしてくる人もいる…。こういった行動・言動をみていると、この購入希望者がこれまで何軒オファーしてきた人なのかを察することができますし、そこから契約が成立する可能性があるかがわかるようになってきます。

 

対面で会おうが、メールで完結しようが、何回もオファーするがなかなか成立しない人、本気で購入を考えておらず「買えれば買う」というスタンスの人、複数の家を比べて「この家を絶対買いたい!」と思っている人…。そんな人の心は売主にも伝わるもので、決して、「提示価格が高いから、この人と契約交渉しよう!」とはならないのです。

 

あまり乗り気でない購入希望者の場合、キャンセルされる恐れもあるため、一組一組の行動・言動に注意し、人となりを判断したうえで、契約を進めていきます。

 

まさにいま、この原稿を書く前も、売主へのオファー内容の報告メールを書き、価格交渉をしていたところでした。

 

それぞれの希望に沿った売買ができるよう、頑張りたいところです。

 

土地付き・新築に揺れ動くファーストホームバイヤー

 

オークランドの平均不動産価格は、少し低下したといえども、100万NZドル越える状態が続いています。とはいえ学区がいい地域は、これまで100万NZドル以下では買えない状況でしたが、価格低下によって、なんとか90万NZドル台での売買も増えてきました。

 

「土地付きの中古物件か、新築のタウンハウスか…」この2つのタイプの物件に、我々は常に悩まされています。

 

お子さんがいる家族は、やはり土地付き一戸建てを好み、新築のタウンハウスは希望に合いません。しかし、わかっているとはいえ、いざ購入段階になると建物検査で中古物件の古さが気になり、購入を躊躇するか、価格交渉が始まるのです。

 

同じ通りに建設された新築のタウンハウスの土地は、120㎡。小さな土地に建てられた2階建ては、隣家とは壁1枚でつながっています。

 

一方の一戸建ての敷地は約500㎡。家自体の面積はタウンハウスと同等で120~140㎡の規模のことが多くなっています。

 

一戸建てはあきらめているタウンハウス購入希望者の場合は、地区選びで苦労します。

 

この予算ならこの地区の物件は買える。でもこの地区よりもっと便利な別の地区がいい。でもそうなると、地区の物件は5万NZドル~10万NZドル近く差が出る…。などと、数少ない「タウンハウスでいい」という買い手を見つけても、今度は地区選びで交渉が苦労し、人間は欲深いものだと嘆く日々です。

 

もちろん、購入希望者の方達の気持ちはわかります。しかし、希望だけでなく現実をみなければいけないので、購入希望者を説得するフェーズに入ります。

 

飛行機にたとえると、席が広い、サービスも豊かなビジネスクラスに乗りたい。でも、予算はない。交渉したとしても、ビジネスクラスの費用を払わないと乗れないものは乗れません。それと同じなのです。

 

また、一戸建に住みたい。でも、予算がない。じゃあ、家を買うのはやめよう…と諦めるのではなく、ビジネスクラスに乗れないのならエコノミーで我慢するように、いま買える物件をいま買っておくことも大切です。賃貸物件に住んで他人の住宅ローン返済の手助けをするのではなく、自分の資産のため、資金を投入しましょう。

 

理解がある人は、欲張らずにあいだをとって、土地付きのユニット(4~5軒が繋がった平屋建て長屋)の購入へと踏み切ります。どうしても予算がない、地域性も希望をかなえたい。という場合、土地付きユニットの購入は非常にいい選択だといえます。

 

希望を1度に叶えようとするのではなく、二段階、三段階にわけて不動産購入を考えていくことも必要です。

 

お子さんの学区のことや通勤の影響もありますが、車社会のニュージーランド。5分~10分通勤時間が長くなったとしても、お父さん、お母さんは、頑張って通勤しよう! と思えばいいのです。

 

約8年前、オークランド市内から南方面に車で約55kmの距離にある、牧草地だったポケノという街が住宅開発され、当時は50万NZドル内で一戸建てが購入できました。オークランド市内中心へは車で約1時間、ラッシュの時間帯は下手すると2時間近くかかるようなロケーションの街でしたが、みんな広い一戸建ての新築の家を求め、住み始めました。

 

近年では近隣の住宅開発も進み、1つの街として成長しています。住人はオークランド市内中心で毎日通勤する人ばかりではなく、在宅勤務との併用する人、すぐ近くのマヌカウシティーに勤める人達も住みはじめ、かつては遠いと感じていたこの街も、いまそんな感覚はありません。

 

特別枠永住権を取得して住宅購入権利を持つ人、マイホームを購入したい!と活気ついている人…。我々不動産業者にとっては、10分のオークションで購入者が決まる時代ではなくなったいま、時間はかかっても、購入希望者の方1人ひとりとお話しし、みなさんがマイホームを得て喜ぶ姿を思い浮かべ、我々もときには泣き、そして笑いながら進んでいきます。

Author Profile

一色 良子
一色 良子Goo Property NZ Ltd. 代表取締役社長
元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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