現地不動産屋が教えるニュージーランド移住&投資ガイド
Currency Rate1NZDJPY 93.31 USD 0.595 2024年04月26日 20:02 PM  更新

【連載170回目】NZ不動産の最新事情…「市場動向を読み違えて購入延期」で、涙をのむ人続出のワケ

2022年3月18日

連載コラム 一色 良子

GooNZ GooProperty nzに住みたい オークション ファーストホームバイヤー 投資 投資家 新型コロナウイルス 海外不動産 賃貸

新型コロナのオミクロン株流行で、感染者数が急増しているニュージーランドですが、政府の慎重な対策のもと入国規制が緩和され、明るい兆しも見えてきました。不動産市場は活況ですが、市場予測の独特な言い回しに振り回され、買い時を逃す人も増えています。不動産エージェントとして活躍する筆者が、現地でしか掴めない不動産事情をレポートします。※本記事は、2022年3月7日現在の情報に基づいて執筆されています。

南半球のニュージーランド、季節は実り豊かな秋へ

 

この冬、日本は大雪だったと聞きますが、南半球のニュージーランドはまさに盛夏でした。

 

例年なら、ニュージーランドの夏は扇風機で十分なほどの気温です。家のデッキにパラソルを立て、木陰に腰掛ければ涼しい風が…。しかし、湿度が高かった今夏はそんな心地よさもどこへやら。大汗をかきながらのリモートワークです。

 

そしていま、晴れた日中にはセミの声が響き、月明かりの夜にはコオロギの声。速すぎる季節の移ろいに、思わずはっとさせられます。

 

そんな折、販売開始する物件の写真撮影で、オークランドから北西へ約50km、ワインの産地として有名なクメウの先にある、ヘレンスビルという街にいってきました。オークランドの自宅から車で約50分。道が混んでいると1時間かかります。

 

道中、ふと街道沿いを眺めてみると、収穫間近のたわわに実ったぶどう畑が。「暑くてももう秋なのだ」と実感しました。

 

 

ぶどう畑の向こうには雄大な自然が広がり、それを背景に、牧場の子牛の群れがゆったりと通り過ぎていきます。平和で美しく、しかし慣れ親しんだニュージーランドの光景を目の当たりにし、この素晴らしさをだれかに伝え、分かち合いたいと強く思いました。

 

コロナ感染者急増も対応、入国規制等は緩和へ

 

一方、新型コロナウイルスのオミクロン株の猛攻は続いています。

 

検査の方法も簡単になり、大勢の人が気軽に検査を受けるようになった影響か、1ヵ月前は多くとも200人程度だった新規感染者数が、この1週間で、最初は6000人、次の日は倍の1万2000人、その次の日は1万3000人と続き、ついに1日あたりの新規感染者数が2万3000人を超えるなど、感染が拡大しています。

 

しかし、政府は経済を止めることはなく、ロックダウンも行っていません。信号機の色にたとえた警戒レベルも、最も厳しい「赤」が発令されていますが、ワクチン接種率も増えてきているため、商店の営業や集会の規制も、ある程度緩和されています。

 

また、隣国のオーストラリアに滞在していたニュージーランド人のほか、永住権取得者の自由帰国も認められたため、テレビでは、久しぶりの家族との対面に涙する姿がたびたび報道されていました。入国後の隔離も国が指定したホテルではなく、10日間の自宅待機となり、規制が緩くなりつつあります。

 

しかし、観光客の入国はいまだ解禁されていません。政府からは「当初の計画を前倒しして、入国時期を早めることを検討している」との発表がありましたが、経済復興のためにもぜひ期待したいところです。

 

そして、特別永住権枠の申請が3月1日から開始されました。申請者のなかでも就労ビザの期限が近い人を優先に認可を出すようですが、それがいつごろになるのかまでは、はっきりしていません。

 

今後、5000名の留学生や、ワーキングホリデー利用者の受け入れも始まるうえに、政府はウクライナからの難民受け入れも協力する方針を示しているため、特別永住権枠の認可は予定通りに進まない可能性が高く、とくに家族を呼び寄せたい申請者にとっては、心配が尽きない状況となっています。

不動産「セールスコンサルタント」の仕事って?

 

さて、ニュージーランドの不動産の売買状況はどうでしょうか。筆者の体感的には減少を感じませんでしたが、統計上は売買成立数は先月比で10%減、去年比では30%以上減少という数字となって表れています。

 

本来、我々セールスコンサルタントは「いかに売り物件を探し、いかに手持ちの物件の数を増やすか」にかかっており、そのために日々の営業に尽力しています。

 

しかし、筆者個人の仕事としてはまず、日本の投資家の方への営業が欠かせません。現地の仕事においても、ニュージーランド在住の日本人の方をはじめとした、アジア系、海外からの移住者の方々の「家を探す=買い手の方々のサポートをする」といった業務が多かったため、セールスコンサルタント本来の「売り物件の数を増やす」という仕事はあまり行っていないのが実情です。

 

まれに、3ヵ月間お世話してもどうしても売れない家があります。家に問題がある場合もありますが、家主様の売値の希望価格と実際の売値にギャップがあり、「この金額で売れないのなら、また賃貸に戻す」という方も時々いらっしゃいます。

 

そうなると、セールスコンサルタント側への収入がなくなるため、それまでの数ヵ月の仕事がタダ働きとなり、それどころか、ガソリン代、印刷代、その他諸々負担で、むしろマイナスになってしまうのです。

 

そのようなこともあり、資金のある投資家や、買い手側のサポート、つまりバイヤーズエージェントほうが、確実に収入が期待できるのです。買い手の方が気に入る物件さえ見つければ収入となるのですから。もちろん、見つからなければ無給ですが…。

 

そのため、「売買数が減った」「価格がついてこない」といったデータはあまり気にしません。とにかく、いい家を見つけてご案内すれば売買は成立します。家のセールスポイントをうまく案内し、見た目も清潔感を保ち、家の品質を保てば、自然と契約につながるもの。そう信じて、この業界で約25年間仕事を続けています。

 

「不動産価格が下がる=相場より安くなる」ではない!

 

データは確かに大切です。投資や自宅購入にあたっては、そのときどきのホットな経済環境を把握することが、重要な判断材料になります。

 

しかし、「昨年より何%増加した・減少した」「価格は上がるだろう・下がるだろう」という予想ばかり気にしてはいけません。なぜなら、物件ごとに状況が異なるからです。いくら世間で「物件が値上がりしている」といわれていても、家の質や管理が伴っていなければ、高値はつきません。

 

また、経済の悪化や住宅ローン融資が受けにくくなることから、この先、不動産価格が下がるだろうと期待し、購入時期を延ばす方もいますが、この場合の「価格が下がる」は、純粋な値下がりという意味での「価格が下がる」とは、意味合いが異なります。「以前のようにオークションで競い合って高値が出ないため、価格が下がる」という表現が正しいでしょう。

 

たとえば、相場が150万NZドルの家があったとします。その家の価格が、今後130万NZドルに下がるということはほぼ考えられません。市場が活発なときは、この価格が160万、170万NZドルと上がることも多々あります。しかし、景気が低迷しているといわれているときは、本来の相場と同等か、155万NZドル規模に「価格が下がる」のです。そのため、相場である150万NZドルから、145万~140NZ万ドル台まで「価格が下がる」ことは、あまり期待できません。

 

このように、ひとことで「価格が下がる」と言ってしまうと、本来の相場価格よりも値下がりする、と期待してしまう方は少なくありません。

 

購入を延期した買い手の「残念な結末」

 

昨年下期、マイホームの購入を計画されていた方にいろいろ物件な物件をご案内し、オークションにも参加してもらいました。その方はローンの査定も受け、ある程度買える状況にまで達していました。

 

しかし、来年は不動産価格が下がるだろう、というデータを基にした予想を聞き「慌てていま買わなくても、年を越してから探した方がいいのでは?」と元の価格よりも値が下がるほうの「価格が下がる」を期待し、その方は年内の購入を取り止めてしまいました。

 

筆者は「この物件はいい物件です。いまならこの値段で買えますが、もしこれを逃すと同等レベルの物件はもうこの値段では出てこないかも…」と説得し、あの手この手で情報を提供しましたが、軽くスルーされてしまいました。

 

今年に入ってから再度案内すると、「価格が下がる」はその方が考えていた「価格が下がる」ではありませんでした。年末に検討していた物件よりも条件が悪い物件が、検討していた物件よりも高い価格でオークションが成立している現実を見て、ファーストホーム購入は諦め、お金を貯めて出直す…という結果になってしまいました。これは、自分のことのように残念でした。

 

このような結果になってしまった買い手の方は複数いて、現在でもサポートを続けています。さて、どこで決心し、マイホームを購入するのか…。

 

なにも考えず、といえば語弊がありますが、「いま買おう!」とすぐに決断された方、「もう少し待ったら下がるかもしれないけれど、いまのうちに選んで買っておこう」と決心された方は、価格が下がることを待った方よりも、結果的に10万NZドルほど安く物件を購入することができました。

 

バブルがはじける、という現象がこの地では起こっていませんので、ご自身の資金繰りの準備ができたら、すぐに実行に移す、がニュージーランドでの不動産購入のカギとなるでしょう。

Author Profile

一色 良子
一色 良子Goo Property NZ Ltd. 代表取締役社長
元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
連載コラム 記事一覧 >

最近の記事

関連記事

Related Post

ニュージーランド ガイド

New Zealand Guide

ニュージーランド ガイド

New Zealand Guide