オークランドでは9月になると、住宅や生活用品を紹介する「ホームショー」が開催されます。このイベントはニュージーランドの人々に大人気で、近年ではプール機能つきのジャグジーや、複数の機能を備えた高性能なベッドも出展されており、企業側の熱心なPRと客側の関心の高さに、ニュージーランド経済の勢いを感じます。本記事では、活況を呈する人気イベントから、現地でのビジネスチャンスを探ります。
健康志向が強く、ジムやプール付きのアパートが人気
今年もついに「ホームショー」のシーズンがやってきました。毎年9月初旬に開催され、一般人はもとより、建築関係、住宅に関する業者も出入りするオークランダーに最も人気のある見本市です。
アパート開発業者も、建築材料の新商品の視察に来ています。ニュージーランド人は、趣味と実益を兼ねた、家に関するものに非常に興味を持っています。新築を建てる、改装工事をする・・・相変わらず、システムキッチン、バスルームの新デザインに人気があります。
ですが、なんといっても今年の注目品は、
●ジェット気流に乗って泳げるプール風ジャグジー
●電動式リクライニングベットと高反発マットレス、枕
この2点です。
ニュージーランドも健康志向の人が多く、かなりの割合でジムに通っています。そのため、シティーのアパートメントにジムやプールの設備が含まれていることは、購入決定の重要な要素のひとつなのです。
ジャグジーがあるだけでもかなりものですが、プール機能と合体となった機種は、ニュージーランド人の憧れの品となっています。また、今年の新機種は、ウォーキングマシーンも含まれたもので、泳いでもよし、ウォーキングしてもよし、なのです。
【写真1】NZの住宅で人気のプール風ジャグジー
【写真2】ウォーキング可能なジャグジーも
【写真3】ジャグジーの内部構造の一例
独自商品から生活風習とニーズを知り、ビジネスに活用
続いて、健康志向が強い高齢者のみならず、中年世代が注目するのは、電動式リクライニングベットと、高反発マットレス、そして枕です。
ニュージーランドも高齢化社会を迎えつつあり、統計によると、2020年後半には若者人口と高齢者人口が逆転するという予測が出ています。2000年より前は、一戸建ての土地は平均で1000平方メートル程度あり、庭だけでなく、寝室の広さも保っていました。
しかし近年、とくにオークランドの土地の高騰により、今まで1軒分だった土地を二分割して2軒建て、平屋が多かった住宅も2階建てがメジャーになってきました。また、市役所の認可を得ることができれば、3階建てのタウンハウスを4軒建てることも可能になり、寝室の面積もコンパクトになる傾向が出てきました。もっとも、平均的な主寝室サイズであれば、さすがにクイーンサイズのベッドの搬入が十分可能ですし、キングサイズが大丈夫な家ももちろんあります。
高反発のマットレスは日本でも流行しているので、ご存知の方も多いでしょう。ニュージーランドは、ベッドで朝食を・・・というおしゃれな習慣がある国ですから、高反発マットレス+電動式リクライニング式ベッドの組み合わせは、贅沢品という認識はあるものの、がんばって購入していく世帯も増えているのです。さらに豪華なベッドになると、足先のほうにテレビスクリーン、耳元に音響スピーカー付きというものもあり、ゆったりと体をくつろげながら、メディアを楽しめる構造となっています。
【写真4】リクライニング機能つき高反発マットレスのベッド
【図表5】高性能なベッドは人気が高く、商談に訪れる人も多数
ニュージーランドは経済成長をしている国のひとつですが、こういった家庭内物品において、景気のよさを実感します。数ある商品のなか、この2つは各展示場で複数のメーカーが展示しており、各社の宣伝も非常に熱が入っています。
今回の見本市は、数年前から見ると出展企業も増加し、特に興味深いものとなりました。
中国や韓国メーカーによるシャワートイレは、毎年のように出展されています。日本メーカーのカーポートルーフも出ています。アウトドア生活が好きなお国柄ですから、アウトドア用家具やキャンピングカー、ポータブルトイレ&シャワー等もあり、ニュージーランドならではの商品から、その国の人々の生活風習を学ぶことができるのです。ここに読者の皆さんのビジネスチャンスがあるのではないかと考え、南半球より情報を発信・提供しております。
住宅の販売価格の上昇により実感する景気拡大
2019年8月の住宅の販売価格ですが、オークランドは対前わずか0.3%ダウン。一方のワイカト地方は1.7%アップとなりました。ついに60万ドル台へと突入です。カンタベリー地方も、2.8%アップ。そして、注目されるオタゴセントラル地方が5.8%アップで、なんと100万ドル超えしている状況です。
こちらは寒い冬も終わり、カレンダー上ではすでに春です。街路樹にはピンクの花が咲き、陽も長くなりつつあります。そして不動産業界は、これから繁忙期へと進みます。
Author Profile
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元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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