【連載177回目】NZ不動産市場…9月の物件価格、1月から約7%もダウン。購入希望者にはチャンス到来か
2022年10月18日
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上昇を続けてきたニュージーランドの不動産価格ですが、2022年9月の平均価格は、1月に比較して大きく下落しました。投資家や不動産業者にとっては頭の痛い問題ですが、住宅購入を検討していた人たちにとってはチャンスでもあります。現地のベテランエージェントが解説します。※本記事は、2022年10月5日現在の情報に基づいて執筆されています。
ニュージーランドの不動産市場、9月はクールダウン!?
ニュージーランド全国での不動産の9月の平均価格は、今年1月と比較して7.2%ダウンという数字が発表され、メディアは少し苦しいムードを漂わせています。
オークランドでは、先月(8月)比で1.3%ダウンして平均約116万NZドル。ワイカト地方も、3%ダウンの約84.2万NZドルとなっています。
小刻みな値下がりであるため、大きな影響はないのですが、人々が競い合って購入するムードが落ち着いてきている状況です。
とはいえ筆者の場合、ありがたいことに指名で電話をいただくことも多くあります。
繁忙期のいまは、
「新規物件が出たのよ、〇〇NZドル程度を期待しているわ。買い手がいたらいつでも案内するので、連絡ちょうだいね!」
「契約オファーが出ていたけど、ローンがおりず契約解除になったの。あなたのリストのオープンホームに来る人で、希望の家が見つからなかった人には、私のリストも紹介してね」
と、さまざまなオファーが舞い込んできています。
「思うように価格が伸びない…」心配するオーナーたち
春も近づき、忙しい時期ではあるのですが「思うように価格が伸びない」と心配するオーナー様は少なくなく、担当セールスマンも心なしか弱気です。
ですが、筆者はこれがチャンスだと思っています。
価格は1.3%下がったものの、金利は6%~7%に上がりました。コロナ禍の特別レートとして、この数年は2%台のお得な金利でローンを組めていましたが、急に5%、高いものでは7%まで金利が上がっています。
しかし、筆者が家を買った時代は、金利が10%から12%でした。筆者自身、長年10%の金利を支払っていましたが、ようやく落ち着いて8%へと引き下げられたときは、とても嬉しかったものです。そんな時代を知る者としては、「5~6%でマイホームを諦めるのか!」といいたくなってしまいます。
もちろん、昔の家の価格はいまの3分の1程度ですから、そもそも元本が異なります。とくに若い世代にとって、金利が0.5%でも上がれば苦しくなることは十分理解しています。
しかし、購入を躊躇して賃貸を借り、オーナーが組んだローンのために家賃を払って返済のお手伝いをするのでは、このニュージーランドでの人生、おもしろくありません。しかも賃貸の場合、オーナーさんから解約の申し出があれば、90日後には出ていかねばなりません。年齢を重ねるほど、家がないのはこたえます。
なんとか資金を工面し、マイホームを購入していただきたいと、筆者は常にお話ししています。
3ベッドルームの家が買えないのなら、1ベッドルームの家でもいいのです。いざとなればリビングにソファベッドを置いて、家族みんなで寝ればいいのですから!
移住者の皆さん、想定外の「狭すぎる家」に葛藤
これまでも何度かお伝えしてきたとおり、特別枠で永住権を得た人たちが、毎週オープンホームにやってきて、家探しをしています。
金利が上がり、物件は敷地も部屋も狭く、ニュージーランドらしい緑豊かな広い庭もなし…。この現実を目の当たりにした人は、みなさん葛藤している様子です。
とくにアジア人は、アパート(マンション)暮らしに慣れている方々が多く、欧米人でも、ロンドンやニューヨークをはじめとした大都市出身の方は集合住宅暮らしが多いと思います。
そんな人たちが、この南半球のオセアニア、ニュージーランドでの暮らしになにを求めているのか…。それは「広い庭の、大きな平屋一戸建て」での憧れの生活です。
しかし近年の主流は、タウンハウスと呼ばれる、2~3階建てで2~4ベットルームの細長い住宅。庭も猫の額ほどしかありません。いってしまえば、日本の建売住宅の戸建てとよく似ています。
ニュージーランドに来てまでこんな狭い家に住むのか…と、ガックリする方もいらっしゃるでしょうが、実際問題として、平均価格116万NZドルのオークランドでは、なかなか広い土地の物件は買えません。
では、広い物件を手にするにはどうすればいいのでしょうか? 田舎に行くしかありません。しかし、働き盛りはシティー中心から出るわけにいきません。
間をとって、ワイカト地方とオークランドの中間地点や、北ならばノースランドとオークランドの中間地点で暮らそうか? そうすれば少しは安いし、昨今であればテレワークで通勤が減り自宅勤務ができる…。このような悩みは30代、40~50歳の中年層によくみられるものです。
自宅の近所は学区もいいので、土地が高い。区画ギリギリの戸数でタウンハウスを建築したため家の間隔は狭く、車ひとつ出そうにも、隣家の車が出入りする時間と重なっては大変です。なにより、窓を開けるとすぐ向かいの家のベランダが広がる…。こんな条件の家でも、日本円で1億円を超えるのです。
筆者からすれば、少し不便でもいいから、すぐには隣が見えない戸建てがいい…と思ってしまいます。しかし、そんな狭い家でも、完成すればきちんと売れて、誰かが生活を開始しています。
せめて半額くらいなら、通勤・学区のことを考えてここで暮らそうか…という気持ちにもなりますが、通勤などのしがらみがなければ、1億円も出したうえで、隣のベランダが鼻先にあるなど、正直なところ勘弁です。
「一生の家」と意気込まず、節目ごとの柔軟な対応を
このように、オークランドの住宅が小刻みに区画されていくことが本当に残念でなりません。
しかし同時に、開発会社側・投資家側の「1戸でも多く建設して利益を上げたい」という気持ちもよくわかるのです。せめて建物のデザインを工夫して、入居者のみなさんには少しでも快適な都会生活を過ごしてほしい、という思いもあります。
なにが正解なのか、本当に迷うところです。
ただ、業界のプロとしてひとつアドバイスするのであれば「一生の家を探す」という感覚は捨てることです。
いまの生活レベルに必要なもの、買えるものを買う。時間が経過して、ライフスタイルや重視する条件が変われば、引っ越しをして、家も買い替える。これも楽しい人生の1ページだと思います。
言うのは簡単ですが、実行するには勇気がいります。しかし、「住む家」と「投資物件」の両方を持っていれば、老後の安定も見込めるので、そんなライフプランも夢ではありません。
余裕のある方は、値下がりによってお手頃な価格で物件が買えるいまのタイミングを活用し、自分の将来を託せる物件を探すというのも賢い選択肢ではないでしょうか。
資金がギリギリの方は、まずは1ベッドルームでも家を買い、オークランドが駄目なら隣町で買い、それも難しければ地方への移動も視野にいれてみてください。新たな土地で、これまでになかった幸せや楽しみが見つかるかもしれません。
住宅のプライスダウンはいいチャンスです。週末のオープンホーム巡りでしっかり家を吟味し、検討してみてください。サマータイム開始で、夜のオープンホームも始まっています。
売る立場からすれば喜ばしい事態ではないでしょうが、中古でもきれいに整え、誰が見ても「住みたい!」と思う物件になっていれば、オープンホームの開催で人気が出て、競り合いによって高値が付きます。
新築物件であれば、内装の仕上げをいま一度チェックしてみましょう。ペンキのシミはついていませんか? 床が傾いたりしていませんか? 買い手は細かいところも見ています。スイッチカバーが平行ではない、窓の開け閉め金具が固い…などなど。
レンタル家具を入れて綺麗に見せても、雑な釘打ち1本が家の価値を落とします。しっかりと整備し、家の価値を磨きましょう!
Author Profile
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元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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