【連載160回目】NZ不動産、天井しらずの活況!コロナを吹き飛ばす勢いのワケ
2021年5月14日
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ニュージーランドでは、政府による新型コロナウイルスの感染対策が奏功し、ほぼ通常通りの生活が戻ってきました。不動産業界も活況で、回復が遅れ気味の観光業等からの人材流入も目立っています。
対策が奏功し、日常を取り戻せたニュージーランド
世界に新型コロナウイルスの蔓延から、あっという間の1年ですが、ここニュージーランドでは、国民の安全と経済の両立手探りで追求するなか、ありがたいことに現時点ではいずれも不安なく、ほぼ以前と同等の生活に戻っています。
とはいえ、業種によってはまだ苦しい状況に置かれ、一部には大変な生活を送る人もいますが、自然豊かで穏やかな環境が幸いし、精神的に追い込まれることなく過ごせています。
政府の鶴の一声でロックダウンされた瞬間、街からは人影が消え、店は閉まり、エッセンシャルワーカーの方々はさらなる業務に追われました。24時間勤務をこなす、真摯で献身的な医療関係者には脱帽です。
日本は緊急事態宣言下、第四波が来ているといわれていますが、映像を見る限りでは大勢の人の流れがあります。リモートワークや時間差出勤といった工夫はされているものの、繁華街での人通りをはじめ、道での飲酒等の光景を見るにつけ、心配の日々です。
現在では普通にレストラン・パブで飲食し、ラグビー観戦もできるようになり、通常生活ができているこのニュージーランドの実例を見て、どうか参考にしていただきたいと南半球で願う今日このごろです。
(※オークランドの風景/PIXTA)
業界の回復の遅れから、不動産業へ転身する人も増加中
観光業のほうは全面的に廃業に近い状況にあると思われます。国内旅行を主にしている部門は少しずつ回復しつつも、海外がらみの部門は観光はもちろん、留学関係者もまだまだ苦しい状況にあります。
商業用物件に投資している、店舗・オフィス賃貸業のオーナーも苦しい時期です。ここから脱するには、世界の流れが変わることを期待するしかありません。収入を失い、新たな職探しが必要な人もいます。
私が移住してきた1990年代後半から、2000年代初期にかけて、ニュージーランドでは不動産建設ラッシュブームがあり、多くの不動産売買コンサルタントが出現しました。率直なところ、だれが売っても家が売れるといった状態でした。
しかし、リーマンショックや、国内での欠陥住宅問題が勃発した2005年~2010年ごろには大勢の業界人が辞めていき、一旦平行線を保ちましたが、また昨年より、不動産業界に就職する人が増加し、リクルート関係者は忙しくしています。
なかでも、エアフライトアテンダントやホテル業界から、プロパティマネージャー(賃貸物件管理者)、ビルディングインスペクター(建物調査士)、不動産セールスコンサルタントへの転職者が目立ちます。
まったく業種は異なりますが、いずれも接客のプロであり、顧客への誠意ある対応が得意ですから、住宅等の知識などを身に付けたあとは、すぐに第一線で活躍しています。
飲食店オーナーも、ウーバー利用の宅配、テイクアウトのメニューの充実など工夫をこらし、限られた条件で営業をしていますが、かつてはアルバイトとして頼りにしていた、ワーキングホリデーに来ている人たちや留学生たちがいなくなってしまったため、人材不足で困っている店舗も少なくありません。
それゆえ飲食店は、一見すると普通に営業しているように思われますが、実情は客席数を減らし、仕入れも減らしてギリギリの運営です。店を閉めるべきかどうかの判断は悩ましく、少しでも営業して収入確保を目指すという判断だけでなく、顧客のために食の提供を続けるという判断をしている店主も多くいます。なかでもオークランド市内中心の店舗は学生・観光客相手の営業だったため、苦戦を強いられています。
残念ながら、市内中心地はゴーストタウン化しており、状況の深刻さを感じさせます。商店、フードコート、有名フランチャイズ店等、みんな閉鎖しています。
先日、やっとのことで、久しぶりにワイカト地方へ行ってきました。政府が急にロックダウンを決断すれば、即座にオークランドとの通行が禁止されてしまうため、怖くてオークランドの外へと出られなかったのです。
幸い、ワイカト地方は変わりなく、街の中心地にもさほど大きな変化は見られませんでしたが、観光客相手のお店は閑散としており、一部には閉店しているところもありました。
一方、住宅街にある郊外の大型店舗では、ほとんど影響がないのではと思うほどの人の波があります。財布の紐は固いとは思いますが、ジュエリーショップなども相変わらず大勢買い物客でにぎわっており、見た目には活況のようです。飲食店も普通に営業しており、混んでいます。
このような、中心地と郊外のギャップには驚きます。
かつては10%あった銀行金利も、いまや0.8%前後に
ついに、NZの銀行定期預金の金利も1%を切り、0.8%前後となりました。金利で生活費を得ていた資産家は、やっていけない状況です。次の収入源を求め、不動産投資へと全面シフトをする人が増えています。本来的には、資産運営の中心として不動産投資をする人が多かったのですが、住宅の高騰が続き、買うには至らなかった人たちは、銀行預金金利が高かったこともあり、預貯金としていたのです。
しかし、金利が10%もあったのは過去の話です。その後8%になり、5%になり、3%なり今は、1%以下。この20年でジェットコースターのように下降してしまいました。
もともと移住者の増加による住宅不足のため、勢いがある不動産業界ですが、2018年10月以降、外国人の中古物件購入に規制がかかり、一時期マーケットが冷え込んだかに思われました。しかし、現地や海外に住むNZ人たちの投資は変わらず盛んであり、不動産業界は依然としてホットなままです。
昨年からはコロナの一件で、海外からの帰国者も増えました。やはり商業の街、経済の中枢のオークランドゆえ、住宅は高騰しつつも、マーケットの動きは早く、地方から参入する不動産投資者が増えている様子が見て取れます。
筆者のところにも不動産業者からの問い合わせメールが頻繁にあり、オークランド以外では、ウェリントン、クライストチャージ、ロトルアからの相談があります。その一方で、逆にオークランドを出て、地方へ移住した業者からも問い合わせがあったりします。どこに住んでもパソコンひとつで業務が成り立つ仕事だからこそなのでしょう。
億単位でオークランドの家を売って地方へ行けば、広い家を半額で手に入れることも可能ですから、家族の希望が合致すれば、必ずしもオークランドに住む必要はないのです。いままでは、オークランドの中心から離れた郊外に家を買い、お得に暮らすのがひとつのトレンドでしたが、さらに思い切って県外へ行くという傾向も目立ってきているようです。
住宅の国内平均額が83万NZドル(約6500万円)となり、オークランドの中心部は、平均150万NZドル(1億2000万円)です。ちょっといいなと思える家は、100万ドル(約8000万円)する時代となり、ファーストホームバイヤーには、なかなか手が届かない状況にあります。
それでも、夫婦共稼ぎで銀行低金利を利用して購入できる物件を上手に探し出し、不動産投資を実現する若い世代も目立っています。不動産コンサルタントをうまく利用して情報を仕入れ、お得な物件探しする方々の期待に沿えるよう、筆者たちも日々アンテナを張っているのです。
NZから、故郷・日本のいち早い回復を願って…
以上が、コロナ禍の1年を経た現在のニュージーランドの状況です。
ニュージーランド人及び在住者は、人との接触を控えて冠婚葬祭も全面禁止、親子であっても同居していない家族との面談は一切避けるなど、家々をシャボン玉にたとえ「バブルを破壊しないよう」一戸一戸の家族で行動・不必要な外出は避けて、過ごしてきました。
その効果があって、いまは普通に生活できています。ここオークランドは、移住者が多い街なので、世界中の人が暮らしています。それぞれの母国の状態を心配し、飛んでいけないもどかしさを皆持ちながら、生活している実態があります。
幸い、隣国のオーストラリアと南太平洋との開港が開始され、徐々にではありますが、人の流れが進んでいます。いち早い日本への開港も期待しています。
本記事の本筋とは離れてしまいますが、日本のニュースを見ておりますと、街に人があふれている様子に、心配が募ります。国外とのやり取りができなければ経済が回らないのは自明でありますが、通常の生活が戻せるよう、一旦リセットといいましょうか、いろいろ課題を抱えながらなのは承知ですが、まずは止めては…と思っています。
自然災害が起これば、否応なく流れは止まります。それと同様に考え、一旦動きを止め、一週間でも自宅にこもって感染を抑制してはいかがでしょうか。ネット環境を生かしたビジネスの方法もあるかと思います。簡単でないのは十分承知ですが、うまく人の流れを止め、感染者数を抑え、いち早い日常の復活を目指していただきたい。
日々、ニュースで日本の状況を知るにつけ、感染者数や死亡者数の数値が淡々と読み上げられるなか、そこに愛する家族や大切な友人、ましてや自分自身が含まれるとしたら…。どうかこれまで通り、安全に暮らせる日本であってほしいと思います。
筆者たちが暮らしているニュージーランドのオークランドの普通の生活を、早く日本の皆様にも取り戻してほしいという願いを込め、今月はペンを取りました。速やかなコロナの収束を願っています。
Author Profile
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元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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