物件に修復が必要な場合、または売却する際に行う「リノベーション」ですが、タイミング等を見誤ると、余計な負担を背負うことになります。今回は、ニュージーランドで所有する物件のリノベーションを行う前に、確認しておきたい事項を見ていきましょう。
リノベーションにかける費用は「物件価値の10%まで」
もし所有する物件に修復が必要な場合、あるいはリノベーションして売りに出そうと考えている場合、最初に考えなければならないことがいくつかあります。
たとえよく計画が練られた、費用対効果の高いリノベーションが付加価値をもたらすとしても、過剰投資というリスクを常に伴っています。
それゆえに買い手にとって付加価値となり、アピールポイントとなるリノベーションの種類についてよく検討する必要があります。
売りを検討する時が、リノベーション時ではないでしょうか?
所有者自身が使用するためのリノベーションと、幅広く買い手を魅了するためのリノベーションとは分けて考える必要があります。
すべては投資への見返り(ROI)となります。
基本的には、リノベーションへの投資額以上の付加価値や、販売価格を得たいと考えることでしょう。
ここでは、もし最大限の販売価格を得ようとお考えの場合に「お奨めできない」リノベーション例についてご紹介します。
●利幅の確認
もし所有物件に修復の必要がなく、物件価値に自信が持てるのであれば、あえてリノベーションを行う必要はないかもしれません。
特に、もし(支出額を)計算した後に、それ程までに販売価格を引き上げる自信がない場合は、投資への見返りが決して保証されたものではないということを思い出してください。
リノベーションによって利益を得る一般的な方法は、物件価値の10%までに抑えた投資を行うということです。そこで最初に行うべきことは、プロの査定を受け、所有物件の今現在の価値を知るということです。
次に予算を立てますが、不測の追加支出への余裕も確保します。この10%ルールに従うならば、例えば50万NZドルの価値の物件であれば、リノベーションにかける予算は5万NZドルになります。これ以上の投資は過剰投資となる危険性があります。
●売り急ぐ必要があるか?
大半のリノベーションには、その計画から予算立て、そして完成までに多くの時間を要します。そのため、売り急いでいる場合にはリノベーションは行えないないでしょう。また、リノベーションが当初の予算を上回ることや、予想されていた以上の工事日数がかかることがよくありますので、そうしたことも予め考えに入れておく必要があります。
どの層をターゲットにするのかを明確にしておく
●誰のためのリノベーションか?
キッチンやお風呂場のグレードアップなどは大半の買い手にアピールできるリノベーションといえますが、それ以外のリノベーションは売り手の私的なところとなり、売り手自身のニーズや趣味、スタイルに合わせられているため、買い手へのアピールポイントとはなりません。
またこれにはグラニー・フラット(老人用住宅)の増設や、寝室のメディアルームやライブラリといった特定の使用目的を持った部屋への改造、室内への壁の設置による部屋の分割といった拡張工事も含まれます。
●誰に売るのか?
これはリサーチがカギとなります。所有物件のある近隣の世帯層(直訳:人口統計)はどのようなものでしょうか? 大半が独身世帯またはカップル世帯でしょうか? あるいはリタイア世帯、またはファミリー世帯でしょうか?
近隣の状況を知ることで、どういったリノベーションが適切で、また不適切なのかを知ることができます。
たとえば、現地でファミリー物件に人気があるのであれば、スタイリッシュさを追求し、危険な階段や、飾り立てたガラス素材のものを使用する前によく考える必要があります。
もし対象となる買い手が投資家である場合、買い手自身が既に独自のプランを持ち、物件購入後に買い手によって手が加えられることが多く、売り手によるリノベーションは付加価値とはならないためリノベーションは最小限に留めます。
●分からないことは聞く
リノベーションを計画する際は、不動産セールスコンサルタントに、所有物件の条件、対象となり得る売り先(買い手)、売りに出されている類似物件の条件、お奨めのリノベーションについてためらうことなく意見を求めてください。
もしかしたら大々的なリノベーションの必要性はないとの回答が得られ、多くの時間とお金を節約できるかもしれません。
リベノーションも投資の一つです。その際は、よく検討する必要があります。
Author Profile
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元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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