高騰し続けるオークランド住宅価格。政府は高騰への対策として、新たに「LVR規制」を導入、住宅価格の伸びは一時的に沈静化しました。この状態はいつまで続くのでしょうか? 予測していきます。
「LVR規制」が住宅価格高騰のストッパーにならない…
オークランド住宅の価格下落は続かないと、ニュージーランドのプロパティ・インスティテュート(不動産研究所)は述べています。
大都市における年間の住宅価格の伸びはこの数カ月間は下落しています。QV住宅価格インデックスによれば、その落ち込みは、8月に16%、10月には14%、12月には12%をそれぞれ割っています。これは過去17カ月間で最低の伸び率でした。
バーフット・アンド・トンプソン社が今週リリースしたデータにおいても、11月と12月の平均販売価格が下落し、両月における販売業績は5年間で最も低いものであったことを示しています。
しかし同組織CEOアシュリー・チャーチ氏は、今の状態は長くは続かないと言います。
同氏は2017年の予想として以下の7つを挙げています。
①長期ローンの更なる金利上昇
一般的には金利が上昇すると考えられており、それは国外での出来事や、国内の銀行が減少傾向にあるニュージーランド人顧客による投資資金を得るためにより多く(の利息)を支払わなければならなくなることがその原因の一端を担っています。
6カ月から2年もののローン金利が変更される可能性は低いですが、より長期なローンについては1%程度の上昇が見込まれます。それは今後2年ないし3年での貸出増加を懸念する銀行が借入者をより短期のローンに誘導するためです。
②住宅価格は上がり続ける
現在沈静化しているオークランド住宅市場は、部分的には昨年10月に住宅投資家に対し課された40%のLVR規制の結果によるものですが、それも長くは続かないでしょう。需要と供給とのギャップが拡大している現状は、近い将来さらなる価格上昇は避けられないことを意味しています。
③投資家はしばし沈黙
この40%というのは高いハードルであり、多額の借入金のある投資家らが再び市場に参入するために必要な資本を確保するまでにはしばらくかかるでしょう。借入金が少ない投資家らは未だに投資を続けていますが、住宅価格の高騰を抑制する厳しい貸付ルールに縛られています。そうしたことから、過去2年間にみた20%超えの年間価格上昇が再び起こることはないでしょう。
④新築住宅数の増加
オークランドでは現時点において4万戸、あるいは今後年間1万戸のペースで住宅が必要とされています。いずれの場合も、2017年中に住宅市場はこの数値目標に向けて何らかのアクションを起こすことになるでしょう。政府および民間セクターによって建設されたアパートメントおよび戸建て住宅は、ここ数年間で初めて実際に必要とされている住宅戸数を超えるでしょう。しかし、供給と需要が確実に合致するにはまだまだ不足しています。
2017年は、さらに高い家賃収入を得ることが可能に!?
⑤オークランドでの賃貸料の上昇が始まる
オークランドの賃借者は納得しないかもしれませんが、過去2、3年間の賃貸料を巡る環境は比較的穏やかなものでした。それは多くの地主が高騰する資産の売り時を逃さぬよう、賃貸による大幅な増収を諦めたためでした。しかし2017年には地主たちは低調な資産価値の上昇よりも、高い家賃収入を取ると考えられます。
⑥当面は返済負担率に関する政策は議題に上らない
昨年後半、準備銀行は住宅ローンの返済負担率の規制について再三言及していますが、今年それに着手することはないでしょう。それを行うには世界経済の動向を見守る必要があるためですが、より具体的には、そうした政策は与党にとっても政策的に受け入れ難いものであるためです。準備銀行が独立的無党派である以上、そうした政治的動きに完全に盲目的でいられるはずがありません。
⑦不動産が選挙での第一課題となる
オークランドの住宅不足を改善に向けて何をし、そしてそれを加速させるための新たな案について、政府から様々な発表があるでしょう。たとえば、初回住宅購入者らの窮状に応えるために、選挙前の予算余剰を誇張し、さらなる寛容な対応を示すでしょう。
プロパティ・インスティテュートのCEOであり、価格査定人およびその他の不動産のプロを代表するアシュリー・チャーチ氏は、オークランドの住宅価格の伸びが過去2年間のピーク時には及ばないとしても、今後も伸びる可能性は高いとしています。
Author Profile
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元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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