
南半球に位置するニュージーランドはこれから本格的な夏を迎えます。しかし、コロナ禍において毎週月曜日に首相の記者会見を聞き、行動を決定するパターンはいまも続行中です。経済も大きく変化しましたが、不動産業界はどうでしょうか。
ステイホーム続行中も、人々の気持ちはクリスマスへ…
ニュージーランドのオークランドでは、以前よりサマータイムも始まり、桜の花も咲いて春を感じる日々でしたが、ここ数日桜は散り、雨の日も増えました。まだ気温が低いときもあるなど、とても夏とはいえない今日のこの頃です。
そして未だに続く「ステイホーム」。レベル3となり、商店、美容室、美術館なども閉店し、飲食店はお持ち帰りのみ営業というなかで、8日の週からは「レベル3ステップ2」と称し、商店や美術館などの営業が開始され、25名以内であれば、屋外に限っては集まりが許可される予定です。
このレベルが予定通り行われるのでしょうか。毎日の感染者は100名越えです。果たして予定通り移行するのでしょうか…?
そんななか、人々の話題は「クリスマスをどうするか?」に移っています。すでにもう年末年始のことを考えているのです。
別荘があるオークランドから北へ2~4時間の距離のノースランド。こちらも、感染者が急激に増え、レベル2から3へと移行し、県外移動禁止となっています。
ロックダウンにより、別荘でゆっくりしようかと思っていたファミリーも、オークランドへの移動が急にできなくなるという状況となり、出張で出かけていた筆者の知人は、急なレベル移行でオークランドの自宅に戻れなくなってしまいました。
通信販売やIT関連は好調、小売りや飲食は厳しい状況に
商店が営業してないことから、みんなが頭を悩ませているのは、国内外の親しい人たちへ贈るクリスマスプレゼントについてです。郵便事情も悪いため、海外送付はいつもより早めにすませておくよう、テレビ等のニュースでも奨励しています。
そのような状況を受け、通信販売は好調です。一日中「ステイホーム」ですから、ネットの閲覧率は高く、生活必需品からクリスマスプレゼントまで、通信販売でゲットしています。違うかたちでのマーケット開拓となったといえるでしょう。店が開けずネット販売に移行したことで、写真の質やウェブデザインのセンスも問われるようになったため、Eコマース関連、ウェブデザイン関連のIT企業は恩恵を受けているところも多いと思われます。
医療関係、食料関係(農家・スーパーマーケットなど)、光熱関係、建築関係、法律弁護士、会計士、我々不動産関係の業種は、「ステイホーム」の状況にあっても、なんとかネットを通じて営業ができています。
いちばんダメージが大きいのは、小売店、飲食店、美容関係、ツーリズムです。これらは業務が行えませんから、利益が大幅に下がって苦労されていることでしょう。
「感染者が1人出ただけでロックダウン?」
「インフルエンザとどう違うの?」
「このままでは経済が回らない!」
そんな声を背景に、ワクチン接種率90%台を目指してステイホームを緩和し、経済を回す意向もあるようですが、実際はもう2ヵ月以上、毎週月曜日の午後に行われる首相の記者会見を聞き、指示に沿って生活や仕事を調整する日々が続いています。
もともと「まとめ買い」傾向がある国民性なので、食糧確保等はそれほど苦痛ではないものの、やはりステイホームで家族がそろう時間が増えれば、朝・昼・晩の3食の用意も大変です。お子さんがいれば、ウェブによる授業でパソコンも必要になります。当然、お子さんの人数だけパソコン等の機材も必要になりますし、なにより低学年の場合はサポートが必要ですから、親御さんは大変です。
お子さんの授業に仕事用のパソコンを使うわけにいかず、慌てて買い求めるなど、最初のころは皆さんかなり右往左往していました。経済的に大変な家庭にはパソコン支給のサポートをするなど、学校も工夫をこらし、なるべく支障のないかたちで子どもたちに教育を続けられるよう奮闘しているのです。
不動産業界は影響なし、物件価格も右肩上がりに
まさに不動産業界が繁忙のいま、ステイホームの状況は痛いといえば痛いのですが、幸い物件の内覧は可能ですので、なんとか営業もできています。オークションもウェブで行う端から、どんどん成約しています。
この状況下、ファーストホームバイヤーたちも、内覧の感触はおおむね良好です。資料を確認のうえ、弁護士に相談するような問題がなく資金調達が可能なら、少々のことは目をつぶって購入へと至ります。
率直な話、あまりにも慎重に考えている人は、この時期なかなか購入できません。しかし、いま買えないということは、購入のチャンスを逃すこととほぼイコールです。いまある程度の資金があっても、今後価格上昇する可能性は高く、同じ予算で同レベルの物件が買えなくなることが想定されるからです。
不動産会社としても、お客様の希望内容のほか、ご職業(通勤状況)やお子さんの有無といった個人情報をヒヤリングし、なるべくご希望に合わせるかたちで「これだ!」と思う物件をご紹介していますが、物件調査をして間もない方や、調査するのが初めての方にとっては、決断しにくい状況です。
もちろん我々も、調査せずに物件をお勧めしているわけではなく、資料を確認のうえ、長年の経験をもとに現場をよく見定めています。もし仮に修理が発生しても、そもそも中古物件です。いずれ大なり小なり修理箇所は出てきます。
そのことから、「致命傷的な事項がない限り、買いに走ったほうがお得!」と認識し、それを踏まえたうえでお勧めしていますが、細かい点が気になって購入する勇気が出ない方もいます。もっとも、あとから「あなたの意見を聞いておけばよかった…」といわれることも多いのですが、時すでに遅し、といった状況です。
中古が不安な人たちは「新築なら建物構造も問題がない。仮に問題があっても、保証がついているのでよし」と考えます。したがって、新築のタウンハウスの売り上げは好調です。
もちろん、一戸建てを求める家族も多いのですが、20代、30代の若い世代なら、予算は100万NZドル以下となり、そうなると、選べるのは2LDKの長屋風ユニットか、郊外の市内中心地から車で1時間かかる地域の3LDKになります。
この条件でいいという方は一戸建てにチャレンジしますが、通勤時間や学区にこだわる方は、タウンハウスの購入を検討します。プラン売りですので、内覧はありません。図面と各種資料の確認はしますが、完成時期が明確でないため、時期にこだわる方は躊躇します。そこをなんとか賃貸物件で粘っていただき、新築物件のマイホームを購入いただけるようご案内…もとい説得している現状があります。
今後もNZ不動産は安泰、価格上昇のチャンスも多数
来年のニュージーランドの不動産マーケットはどうなるのでしょうか?
マイナス要因を口にする方もいらっしゃいますが、10月に執筆した記事『NZ、永住権の取得条件緩和がもたらす不動産投資のチャンス』でも触れたとおり、永住権取得特別枠の認可が下りたことで、もしコロナが回復して開港すれば、NZへ戻るKIWIたちの数も増えると思います。その人口も見据え、先数年は引き続き安泰で、大幅な価格のダウンはないと私は見ています。
はてさて、経済学者ではないですので予測などできませんが、需要と供給のバランスから見ても、オークランドではとくに物件数が足りませんので、まだまだ家の販売は盛んでしょう。外国人がここで暮らせるようになれば、賃貸マーケットは安泰となります。もし開港時期がまだ数年先となれば、市内中心地のアパートメントの賃貸マーケットが苦しくなりますから、その点の陰りは隠せませんが、一方では、シティのアパートを安く手に入れられるチャンスとして、買いに走る方も出ています。国民の多くは不動産売買で資産形成を行っているため、売買が盛んな実態は今後も続くと見ています。
Author Profile

- Goo Property NZ Ltd. 代表取締役社長
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1982年、大阪女学院短期大学英語科卒業。カリフォルニア大学デイビス校留学。帰国後、旅行会社のツアーコンダクターに従事。1987年、ニュージーランドツアーの添乗を機に、移住希望を持つ。
1995年1月の阪神・淡路大震災を経験し、1996年に移住を実現。 自己の居住用物件さえあれば、落ち着いて生活ができると感じ、ワンルームマンション購入を実行。その経験を生かし、不動産業界に参入。当時インターネット環境が整いつつある中、日本語ウェブサイトを開設し、留学・観光・不動産投資についてのコンサルティングを始める。
現在、ニュージーランドの大手不動産売買仲介会社であるHarcourts New Lynn(ハーコウツ・ニューリン)支店にてセールスコンサルタントとして活動しながら、日本人のための投資コンサルタント会社Goo Property NZの代表として活躍中。
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