【連載165回目】NZ、永住権の取得条件緩和がもたらす不動産投資のチャンス
2021年10月8日
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コロナ禍のニュージーランドでは、永住権の取得条件を大幅に緩和する政策が打ち出され、大きな話題となっています。今後はさらなる住宅需要の高まりで、不動産業界はさらに活況になると予想されます。
永住権を希望する外国人移民に届いた「朗報」
ニュージーランドでは、永住権を希望する外国人移民にビッグニュースがリリースされました。今回は、その具体的な内容を解説したいと思います。
2021年9月29日の時点でNZに住んでいる人のうち、
●3年以上、就労ビザで勤務している人
●時給27ドル以上給与を得ていた人
●NZ政府として足りない業種での勤務者
これらの条件のいずれか該当する人は、来年3月1日より、永住権の申請が可能となります。申請の締め切りは、来年7月末までとなっています。政府は、1年がかりで認可を出していく意向を示しています。
記事掲載時点では未発表の情報もあるため、具体的な手続きについてすべてが明らかにはなっていませんが、10月末までに詳細が発表される予定です。
明確なのは、上記の条件に該当する人たちは永住権を取得できるチャンスがあり、候補者は家族を含め、約16万5,000人いるということです。
上記は私たち不動産業界にとっても大変な朗報です。NZでマイホームを希望する人々の増加が予想され、住宅販売数の増加が見込まれるからです。
多くの希望者が救われる一方、経営者は厳しい立場に?
今回の発表は、これまで条件に見合わなかった方の多くを救済するものだといえます。従来求められていた条件を満たすために、あらゆる努力を重ねてきた移民希望の外国人の方々にとって、大きく門戸が開かれたといえます。永住権を希望する日本人の若者にとっても、大変なチャンスとなるはずです。
筆者はこの発表を受け、数日の間対応に追われました。これまでの政策により永住権をあきらめて日本に戻った方や、日本への帰国を決めていたシニアの方にこのニュースを伝え、激励しました。
日本ではビジネスマンとして事務系のキャリアを積んでいた方が、永住権を求めたNZで皿洗いからスタートし、まったく畑違いの飲食店勤務もこなしてきたという例は少なくありません。年齢が若く職種経験が乏しい人々も、歯を食いしばって3年以上技術を学び、現在は立派な技術者となっている方もいます。
これまで永住権の獲得には、学歴、職歴、資産等々多くの条件が求められてきました。非常に険しかった道が一転、本当に夢のような政策発表です。規定の資金を用意し、必死で投資家ビザを申請していた資産家の方にとっては皮肉な政策ともいえますが、それはさておき、永住権の取得さえできればニュージーランドでの新生活が送れるわけですから、その点は納得・理解してもらえればと思います。
もし読者の方々の知り合いで、過去3年間以上ニュージーランドに居住していたものの、永住権の取得をあきらめて最近帰国した方がいる場合は、新しい条件を満たしていないか、専門家への相談を勧めてください。
これまでの永住権申請には「ポイント制」が導入されていました。年齢・学歴・職歴・現時点での給与額・英語力の基準がポイントで評価されるのです。条件を満たせなかったのは、下記のような方が多かったのではないかと思います。
●年齢が高いため、思うようにポイントが獲得できない
●ワークビザはあるが、給与額が足りない
●そもそも英語力のポイントが足りず、基準を満たせない
しかし今回は、先述した基準のいずれかをクリアしていれば、申請のチャンスがあるのです。
一方、経営者側にとっては朗報とばかりはいえません。
もちろん、雇用している人材が永住権を取得して定着すれば、事業の安定にもつながりますし、さらなるいい人材の確保も期待できます。しかし、就労者の転職が容易になるほか、能力や資金能力をもつ人が独立してライバル化することも考えられます。
オークランドとワイカト地域の一部は「レベル3」継続
日本は緊急事態宣言が解除され、飲食店のアルコールの提供時間が延長されたというニュースが届きましたが、筆者が暮らしているオークランドでは、まだ飲食店の営業は戻っていません。オークランドとワイカト地域の一部以外はレベル2なので、営業はまだ条件付きです。
ワイカト地方で感染者が発覚したときには、急遽、一部の地域限定で警戒レベルが「2」から「3」へと引き上げられました。当日のお昼に決定され、当日の夜中に発令さたので、自宅と勤務先の間に境界線がある人の場合は、翌日から通勤できない、あるいは出張先から戻れないといった事態も発生しました。
オークランドでは、10月6日水曜日から「レベル2」への引き下げを期待していましたが、感染者の数が10名台から20名~40名台へと日々前後していたため「引き続きレベル3を維持する」と発表されました。ただし、外で2家族10名までならピクニックなども可能とするなど、少し条件は緩んでいます。1週間ごとに状況を見ながら、商店の営業や、飲食店・美容室の営業開始も認める方向とし、周囲の状況をよく確認しつつ、警戒レベルを引き下げる方向へとシフトしています。
ファーストホームバイヤー、高額物件を躊躇なく契約
現在、不動産業界は、1日2組の案内のみ物件内覧が可能です。私たちセールスマンは、内覧後、消毒清掃を行うという重責を背負っています。空き家で売られている物件はまだ気が楽なのですが、誰かが住んでいる家の内覧は、家主から、断られることもあります。
細心の注意を払いながらの消毒作業が必要で、10月に入ってからの、クリスマス前の繁忙期でのこの状況は、正直、非常にこたえています。しかし、相変わらず不動産業界は活況で、顧客たちの購買力は高いままです。オンラインのオークションでも、あるいはそうでなくても、新規開発物件等で売り手と買い手双方の条件が合えば、速攻で契約交換をされる方も珍しくなく、本当に驚きです。
多くの物件価格は90万NZドル前後、日本円で約7,000万円です。それを30代、40代のファーストホームバイヤーが、躊躇せずに契約していきます。そのような顧客を見るにつけ「本当に不思議な国だ…」と思わずにいられません。
予算は100万NZドル~最大130万NZドルある。しかし、希望する地域は150万NZドル以上…。このギャップを埋めるため、私たちは苦戦をしています。数年前までは、100万NZドルあれば、素敵な家が買えたのです。しかし、この数年で様変わりしてしまい、日本円で1億円の予算があったとしても、希望の家が買えないという状況です。
もし、NZに不動産物件をお持ちの読者の方が売却を希望されているなら、いまも売り時ではありますが、2022年後半から2023年にかけてマーケットに出すのがお得だと思います。なにか課題のある家、たとえば、内装が古く予算をかけて工事する必要がある等、欠陥がある家の場合はなおさらです。
永住権保持者の数が増加する時期になれば、売り物件数が不足します。値を下げなければ売れないと思われていた「訳アリ」の家でも「自分で修理するから売ってほしい」という希望が出ることは、十分考えられるでしょう。
現在も、人口と住宅供給にアンバランスが生じているため、同様のことがいえますが、来年から2023年は、さらにその傾向が強まるということです。
家もない、永住権もない…そんな方は、中古物件の購入は無理でも、商業用物件、新築物件で外国人枠が取れているアパートメントを中心にした集合住宅であれば、いまでも購入可能です。ただし金額は、50万~60万NZドルでは難しく、最低でも、90万NZドルからになると思われますので、検討してみてください。
コロナ禍でも国民の安全を追求し、あらゆる政策を打ち出すNZ政府。自然豊かなNZの不動産投資をきっかけに、安定的な資産運営ができるチャンスも広がります。そして、永住権取得も、叶わぬ夢ではないのです。
Author Profile
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元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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