ニュージーランドにおける遺言書の話
日本の若い人で遺言書を作る方は少ないのではないでしょうか?
年配の方でも特に残す財産はないとご自身で考える人は遺言書を作成されないかもしれません。一方ニュージーランドでは若い人でも結婚したとか、家を購入したとかの転機に遺言書を作成する人は結構います。この理由として考えられるのは遺言書がない場合には必ず結構複雑な手続きを裁判所で行う必要がありますことと簡単な遺言書でしたら弁護士費用も日本のそれに比べてあまりかからず、すぐに出来るからです。ここで言います簡単とは夫の遺言書の場合、すべてを妻に残す、もしくは妻と子供で等分するといった内容です。ただし自分で勝手に遺言書を書くのではなく、弁護士事務所で作成してもらうのが一般的です。これには後で述べます形式が整っていないと法的に有効な遺言書として認められないことがあるためです。遺言書はこれが施行されるとき、すなわち遺言者が亡くなったときに一定の書類と共に高等裁判所に送られ、そこに指名されている遺言書執行人を認定してもらう作業が必ず必要となってきます。
ニュージーランドにおける遺言書とその形式
私が遺言書作成のお手伝いをした日本人のクライアントの方で財産はすべてニュージーランドにあり、日本には何も残っていないという方はまれでした。ほとんどの人が日本にも何らかの財産をもたれていましたので、私のアドバイスはニュージーランドで作る遺言書はニュージーランドにある財産に関してだけとし、日本にある財産に関してはやはり日本での遺言書を別に作っておかれるのがよいでしょう、です。
遺言書の中身といいますと、誰(受益者)にどれだけ残すかということがまず初めに来ます。もちろんこれは遺言書の重要な部分ですが、ニュージーランドにおける遺言書では誰にこの遺言書に書かれてあることを実行して欲しいかという法的権利を実行する執行人の指名も不可欠な要素となっています。
執行人は遺言者に代わって法律文書に署名することができ、遺言者の意思に沿って財産を受益者に配分するのが法律的に任された仕事です。配偶者や成人の子供が執行人となるのが一般的ですが、友人でもかまいません。複数人でもよいので自分の弁護士や会計士を含める人もいます。
晩年に遺言書を作られる方でない場合はいろんな意味でご自身の状況が変わることが考えられます。例えば子供が出来る、結婚する、もしくは離婚するなどです。こういう状況の変化に耐えうる遺言書を事前に作っておくことは事実上不可能ですので、ニュージーランドでは状況が変わったときに遺言書を書き換えるのが一般的な対応の仕方です。大きな変更でなければそれほど費用がかからないこともこの対応がなされている理由かもしれません。
遺言書が有効な法律文書なるためには成人二人による署名証人が必要となります。しかしながら受益者自身は署名の証人にはなれません。誤って受益者が署名証人になっている場合は遺言書そのものが法的に無効となる可能性がありますので、専門家のもとで作られる事をお勧めいたします。
遺言書が無い場合
では遺言書を残さずに亡くなった場合はどうなるでしょうか?この場合は高等裁判所に遺産管理人(遺言書における執行人にあたる)の申請(Letters of Administration)をしなければなりません。この管理人が裁判所によって認定されないと、本人名義の預金を動かす事ができません。またこの遺産管理人の申請者がニュージーランド国外(日本など)に住んでいるときは本国の弁護士からの宣誓書が要求されます。
このように手続きが遺言書のある場合に比べて複雑になりますので、間違いなく言えますことは遺言書を作るよりずっと高かくなるということです。