現地不動産屋が教えるニュージーランド移住&投資ガイド
Currency Rate1NZDJPY 84.39 USD 0.591 2025年04月30日 21:47 PM  更新

【連載205回目】行方のわからない「NZ不動産オーナー」を探して…現地弁護士事務所からかかってきた、驚きの電話内容とは?海外に資産を保有する〈リスク〉と〈注意点〉

2025年3月14日

連載コラム 一色 良子

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ニュージーランドで不動産ビジネスに従事する著者のもとにかかってきた、法律事務所からの電話。それは、筆者の過去の顧客に伝えなければならない大切な情報でした。今回は、NZ不動産の保有に伴う注意点を、不動産売買コンサルタントの目線で解説します。

※本記事では、オークランド在住で不動産会社を経営する著者が、現地でしか掴めない不動産事情をレポートします。


 

弁護士事務所から、過去の日本人顧客宛てにかかってきた電話

 

ある日、筆者の自宅に見慣れない番号から着信がありました。

 

電話を取ると「〇〇さんですか?」と聞かれましたが、筆者の名前ではありませんでした。「違います」と伝えて切ろうとしたところ、電話の主は食い下がり「では、〇〇さんをご存じないですか?」と、畳みかけて聞いてきました。

 

よく聞き取れずに何度か聞き返すと、どうやら日本人の名前のようで、以前のお客様のお名前に似ています。そこでスペルを確認すると、確かに10年以上前に担当させてもらった方のものでした。その方はすでに日本へ帰国しており、また、コロナ禍以降連絡を取り合っていませんでしたが、幸いLINEのつながりがあります。

 

電話の相手は、筆者がNZに移住して初めてビジネスをサポートしてもらった弁護士の秘書の方のようです。

 

電話の内容は、弁護士の先生が急逝されたため「遺言書」の保管を依頼されたお客様に、担当弁護士事務所が代わることを伝えたい、というものでした。

 

お客様は、その弁護士に遺言書の保管を依頼していたのですが、日本に戻ってしまい連絡が取れないので、NZでの連絡先として登録されていた筆者のもとに連絡がきた、という経緯のようでした。

 

NZの不動産を買った顧客に、遺言書作成を進めるワケ

 

筆者は、物件を購入された方には必ず、遺言書の作成をお勧めしています。「そんな大げさな…」「私、まだ若いですよ!」などといって抵抗感を示し、作成しない方も多いのですが、万が一の事態が起きて相続が発生したとき、遺言書のあるなしで、手続きの大変さはまったく違ってきます。

 

これまでの経験から、遺言書があれば、長く見積もっても3ヵ月以内には相続手続きのめどがつきます。事前に準備しておけばシンプルな手続きですみ、短期間で対処できるのです。

 

しかし、遺言書がない場合はものすごく大変です。日本の戸籍から家族・親族を調べて相続人を探し、また、NZと日本の両方で、愛人や隠し子がいないかも調査します。その結果、家族が予想もしなかった事実が判明してトラブルに…というケースもありました。

 

日本人の夫婦の相続なら、日本とNZの法律を考えるだけでいいのですが、もし国際結婚の夫婦なら、配偶者の出身国の法律等も影響し、手続きはさらに複雑化します。

 

今回の例のように、遺言書の作成・保管を依頼していた担当弁護士が亡くなった場合は、別の弁護士が引き継いで保管する、という流れが一般的です。もちろん、作成者本人が自分でほかの弁護士へ依頼し、保管する弁護士を変更することも可能です。

 

しかし、依頼者が弁護士に連絡先の変更を伝えていなかったり、依頼者の死亡が弁護士に伝わっていなかったりすれば、手続きしようにも連絡が取れないので行えません。大切な財産をきちんと受け渡すためにも、事前に相続人へ担当弁護士の連絡先を伝えておくことが必要です。

 

とはいえ、NZでの不動産購入から10年、20年と時間が経過し、生活基盤や主要な財産がすでに日本にある場合、NZで作成した遺言書のことなど頭からスッポリ抜け落ちているのかもしれません。なにより、遺言書の内容自体が、時間の経過に伴って生じた相続人や産分割の方針の変化に対応できていない可能性もあります。

 

遺言書を作成した方は、資産内容や相続人に変化が生じたら、速やかに弁護士に伝えて遺言書を更新するか、あるいはいっそのこと、資産をすべて日本へ移して日本の法律だけで完結できるようにするなど、トラブルの予防策をとることをお勧めします。

 

とくに高齢の方の場合、NZに居住していた当時はスムーズだった英語での会話や読み書きも、帰国して時間が経過すれば、以前のようには行えず、コミュニケーションが困難になりがちです。それ以前に、パソコンやスマホのスキルが不十分で、遺言書の更新どころか、手続きへの着手すらできないという方も珍しくないのです。

 

とはいえ、少なくとも日本で遺言書を作成し、そこでNZの資産について言及していれば、時間はかかるもののNZの相続手続きを進めることは可能です。国際相続にくわしい弁護士や税理士とよく相談したうえで、対策していただければと思います。ただ、日本から9,000km近く離れたNZの状況を日本にいながら把握するのは容易ではなく、言葉の壁の問題もあることから、どうしても時間がかかります。

 

このような問題を防ぐには、やはり、NZの法律に基づいた遺言書の準備や、財産管理の委任者を登録しておくといった手続きが重要だといえます。

 

「意思能力なし」「遺言書なし」となれば、家族の負担は…

 

高齢になればなるほど、突発的な病気や認知症の症状の出現・進行で、意思能力を失う可能性が高くなります。そうなれば、自身の資産管理・相続対策の判断ができず、配偶者をはじめとする家族が大変な思いをすることになります。

 

本人の意思能力がなく、かつ、遺言書作成・財産管理委任契約等もなされていない場合、家族で話し合いをすることになります。

 

※法テラス「判断能力は十分ですが、高齢で身体が不自由です。財産管理を誰かにお願いできますか。」参照

 

筆者のこれまでの経験からは、配偶者の方が財産管理の委託者となるケースが多いのですが、高齢の場合は子どもを立てるなど、ご家族によって意向はさまざまです。

 

ただ、費用も時間もかかる煩雑な事務手続きが必要ですので、国際結婚の夫婦や高齢者に限らず、日本人同士の夫婦、ミドル世代、独身者でも、周到な準備が大切です。そうでないと、万一の際に残されたご家族に大きな負担をかけることになります。

 

人生、いつ不測の事態が起こるかわかりません。財産を保有している以上、「まだいいや」という考えは禁物なのです。

 

もし心配ごとがある方、トラブルが発生していて対処法に悩んでいる方は、速やかに弁護士、税理士といった専門家に相談しましょう。日本人が日本で相続手続きをするのも大変なのですから、海外の不動産となればそれ以上です。大切な資産を次世代へスムーズに渡せるよう、早め早めの周到な準備と対策で臨んでください。

 

秋の気配が色濃くなってきた、南半球のニュージーランド

 

3月に入り、南半球のニュージーランドでは秋の気配です。今朝の気温は13度で、これまで太陽の照る暑い日々を過ごしていたところ、急に半袖では涼しくなり、タイル張りのキッチンの床もひんやり。思わず床暖房をオンにしました。

 

3月から5月にお休みがとれる方は、気候のよいニュージーランドを巡るラストチャンスの季節です!

 

Author Profile

一色 良子
一色 良子Goo Property NZ Ltd. 代表取締役社長
元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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