【連載198回目】〈NZ不動産〉大都市オークランド、人口増加で不動産価格上昇中だが…まだお買い得物件がある地方都市の名前【現地バイヤーが解説】
2024年8月9日
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不動産価格の上昇が続くオークランド。なかなか手が出しにくい状況が続いていますが、地方都市にはまだお買い得物件を探せるエリアがありました。
※本記事は、2024年8月5日現在の情報に基づいて執筆されています。
オークランドの不動産価格、平均100万NZドル越えに
ニュージーランド最大の都市で、観光都市・国際都市のオークランドの不動産価値は高く、平均100万NZドル越えとなっています。しかし、100万NZドルはあくまでも平均値であり、海が少しでも見えれば価値は上がり、セントラル地区、ノース地区では150万NZドルが平均です。西方面では、100万NZドルだと土地付き1戸建て物件が買えます。
筆者が居住しているオークランドでは、近年、70万~90万NZドル内の価格帯でありながら、部屋数が3部屋を保てる長屋のタウンハウスが多く開発されており、初めてマイホームを買う若い世代に人気です。
一方、オークランドから南へ車で2~3時間に位置するワイカト地方では、一戸建て3部屋物件の平均が70万NZドル台で推移しており、なかには40万NZドル台の物件もあります。具体的には、約800m2の土地に家が2戸建つイメージで、投資運営する上では賃貸利率もよく、売却するなら1戸70万NZドル前半といったところです。
本来なら90万NZドル台で売りたいところですが、金利上昇中の昨今、その金額ではなかなか買い手がつかない(買い手の手が出ない)状況にあります。苦肉の策として70万NZドル台に値下げし、ようやく契約オファーが出ても、今度は60万NZドル台へ値下げ交渉を持ちかけられてしまうのです。
日本人オーナーの物件、ガッカリのあとのうれしい展開
ある日本人のオーナーの売却物件は、上記のような厳しい状況にありながら、円安傾向がプラスに働いて購入希望者の値下げ交渉が許容できたことで、一度は契約成立の流れになりました。しかし、買い手の資金繰りがうまくいかず、契約解除となってしまいました。
延長依頼も受け、待っていたのに解約か…と落ち込みましたが、そんな思いもつかの間、1週間もたたないうちに、最初の契約解除を聞きつけた別のセールスマンがオファーを持ちかけ、なんと最終的には3者からオファーが! マルティプルオファーというのですが、それぞれ競い合ってベストオファーを出し、3者の契約内容を吟味できることとなりました。結果、3者とも解除になった契約より価格が上です。なんと運のよいことでしょう。
3者の具体的な契約条件の内容ですが、下記のようになっています。
①…提示金額がいちばん安いが、条項はなし。
②…提示金額はいちばん高額で期待通りだが、条項が複数出されている。
③…価格は3者の中間だが、資金繰りに問題なし。条項は2つついている。
通常は、①のように無条件で買ってくれる方を選ぶのが得策です。しかし、あまりにも②③の方がよい金額を提示するため、せっかく無条件でのオファーではありますが、候補としてはいちばん最後です。
吟味の結果、契約解除となってしまった最初の交渉相手より5万NZドル高い金額を提示した③の交渉相手に心が動いたものの、やはり資金繰りに問題ない相手のほうが確実であるとのことで、家主様は②のオファーを選択することになりました。
オファー1つなら悩む余地なく話が進むのですが、3つも出ると決断は難しくなります。この物件に関しては、さらに4番目の買い手候補も出るかもしれず、いまもまだ目が離せない状況です。
ワイカト地方の不動産、オークランドよりもかなりお買い得
同時に、60万~70万NZドル台でワイカト地方の物件契約交渉が進んでいるのですが、あまりにも、オークランドと土地の価値が異なることに驚きを隠せません。
オークランドで60万~70万NZドル台で購入できる物件は、1~2ベットルームのアパートメントか、長屋のタウンハウスです。残念ながら、学区がよく、環境のよい地域では無理で、条件を少し落とさなければなりません。
一方、ワイカト地方では、3LDKの戸建てで、庭もあり、ゆったりとしたスペースがあります。オークランドでいうなら、150万~200万NZドル規模の物件です。
オークランドに住む投資家がワイカト地方に目を向ければ、予算の半額から3分の1で投資ができます。利益も少ないですが、無理してローンを組み、金利を払って賃貸運営するよりも、手持ちの資金だけで不動産投資ができ、安定した収入を得られ、将来の値上がり幅=キャピタルゲインも得られるのは魅力です。オークランドほどのスピード感はありませんが、ゆっくり着実に成果をあげられる選択肢だと思います。
老後、コンパクトな家に住み替えようと思っている方、オークランドというエリアにこだわりがない方には、よい物件選択だといえるでしょう。
住み慣れた街、知り合いの多い街から離れ、資金繰りに余裕のあるリタイア生活を送りたい方、あるいは、これから家庭を築く若い方にとっても、よい選択肢になると思います。とくにIT関係の仕事に就き、市内中心地への通勤がない、ホームオフィス勤務の方にはもってこいの環境です。
商店街が増築されれば、それだけ住民も住みやすくなります。家の販売も大事ですが、コマーシャル物件の販売促進も並行することで、私たち不動産業者も街つくりに貢献できたなら…と、今回の取引を通じて考えた数週間でした。
ますますの人口増加が想定されるニュージーランドで、地方の街を開拓することは、とても意義があると思っています。
今後も、ニュージーランドの地方都市に目を向け、移住、開発投資にまつわるさまざまな情報を発信していきます。
Author Profile

- Goo Property NZ Ltd. 代表取締役社長
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元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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