【連載197回目】【ニュージーランド不動産】深刻な少子化の一方「移民受け入れ」で人口急増、住宅不足&住宅価格高騰中…今後の投資チャンスが見込める「納得の領域」とは?
2024年7月12日
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日本同様、深刻な少子化が問題となっているニュージーランドですが、移民政策によって人口は増加し続け、それに伴い、住宅不足が加速しています。国の政策や人口動態を背景に、不動産における投資メリットのある領域を考察します。
※本記事は、2024年7月8日現在の情報に基づいて執筆されています。
一般住宅の「売却検討中」が読み取れる、NZならではのサイン
ニュージーランドも日本と同様、少子化の進展が深刻な問題となっています。しかしその一方、政府による移民受け入れ政策により人口は増加しています。その影響でオークランドで住宅不足が発生していることは、これまでの記事でもたびたび触れてきたとおりです。
土地はいくらでもあるものの、不足気味の建設業者はフル回転。改装や新築建設が盛んで、筆者の自宅周辺でも新増設の住宅建設が進み、毎日工事の音が響いています。
オークランドでは毎年6月に年1回、粗大ごみの回収が行われます。市が指定した日に、家の前の通りの芝生に回収してもらいたい粗大ごみを置くと、無料で回収してくれる制度です。
なかには、捨てられた粗大ごみのなかから掘り出し物を見つけて中古品として再売りするような人もいます。そういった人は、車であたりを周り、使えるものは可能な限り回収していきます。そのようなことから、この時期は室内の不用品の整理をする時期になります。
ニュージーランドは物を大切にする国民性で、不要だからといって捨ててしまうのではなく、ガレージセールや寄付によって「再利用」を試みる人が多くいます。不要なものも誰かの役に立ち、社会が回っているのです。
庭先に出される物品の数が多かったり、さらにゴミ回収を依頼している家は「家の本格的な整理=家の売却を検討中」というケースも多くあります。そのため、我々不動産エージェントも、通りに出た粗大ごみを観察し、家のオーナー様にアプローチするタイミングを見計らう目的で、通りをドライブしているということも、ままあるのです。
高齢化が進むNZ…「リタイアメント・ビレッジ」の建設が増加
ニュージーランドも核家族化が進んでいます。もともと生活サイクルにも個人主義が浸透しており、子どもたちも学校の卒業と同時に家を離れるケースがほとんどです。親も子も独立した世帯、という意識が強いため、親のほうが、子どもを置いて他国に移住する…という決断をする家族もいます。
老いた親の面倒を見る、という家族ももちろんいますが、お互いが独立して暮らすケースが多いため、近年は「リタイアメント・ビレッジ」の建設が盛んになり、70歳以上の老人のケアに注目が集まっています。
リタイアメント・ビレッジという言葉に明確な定義はありませんが「高齢者が快適な老後を暮らすために必要な施設を揃えた村のような場所」といった意味合いで使われます。
最近も、大型アパートの建築現場を見て、てっきり普通のアパートメントだと思っていたところ、リタイアメント・ビレッジだと知って驚きました。
リタイアメント・ビレッジの館内に入ると、カフェ、レストラン、バー、図書館、プール&ジムなどなど、リゾートホテル並みの施設となっています。映画館も運動場も完備され、ここで優雅なリタイア生活を送っているお年寄りの多いこと…!
日本では温泉付きマンション型の老人ホームが人気のようですが、ニュージーランドは、大型アパートメントのリタイアメント・ビレッジが多く、敷地内に家庭菜園がある、ボーリングやパターゴルフなどを楽しめるスポーツフィールドがある、池や噴水がある、などが人気の条件なようです。
シルバーサービス関連に、新たなビジネスチャンスありか
約15年前、お客様から「高齢の親のことが気になるので、リタイアメント・アパートメントを探したい」と問い合わせがあり、一緒に見学に行ったことがあります。そのときはまだアジア系の人口が少なかったため、言葉の問題で受け入れはできない、と断られてしまいました。
しかし、さすが国際化都市・オークランドです。いまでは、誰でも…とまではいいませんが、国籍で線引きされることなく、国際色も豊かになり、各国の行事も行われ、移民国家として、うまく調和しています。
私自身も昔は、「カフェ&レストラン完備だから自由にご飯を食べに行けるし、ケアホーム部門では食事が提供されるけれど、和食も出ないし、正直、老後に住むのはちょっとなあ…」と考えていました。しかし近年では、寿司ブームの影響でお寿司が出たり、なかには、和食もどきを提供していたりするところもあるようです。和食メニューがなくても、フードデリバリーサービスが充実するようになったため、食の面での不安は除かれつつあります。
このような、リタイヤメント施設への投資プログラムなど、リタイヤメント層をターゲットにしたビジネスがニュージーランドにでも盛んになってきています。
貿易国、酪農国、観光業、留学斡旋…とニュージーランドをターゲットにしたビジネスは多々ありますが、シルバーサービスのような、日本の得意分野で、ニュージーランドにはないものを取り入れる形のビジネスにチャンスがあると感じています。
一方、ニュージーランドの形式を日本に導入し、日本のリタイヤメント層がさらに楽しく過ごせるようなビジネスも、可能性を多く秘めていると思います。
住宅関連の直接的投資もあれば、それに付随する形での投資もあり、不動産売買のスキームも関連して、今までとは異なる分野の投資に注目している今日この頃です。
Author Profile

- Goo Property NZ Ltd. 代表取締役社長
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元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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