【連載189回目】【NZ不動産】本当に苦しい時代がやってきた…ファーストホームバイヤーも、止まらぬ価格上昇に悲鳴。打開策はあるのか
2023年11月17日
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ニュージーランドでは住宅価格の上昇が止まりません。ファーストホームバイヤーが苦戦する一方で、親の力を借りて購入する若年層もいるなど、状況は複雑です。重要なのは、最初から完璧を目指していては、手に入るものも入らないというところ。実情を見ていきます。※本記事は、2023年11月10日現在の情報に基づいて執筆されています。
オークランドの住宅頭金、2045年には「100万NZドル」に!?
新聞を読んでいたところ、驚くような見出しが目に飛び込んできました。
「2045年のオークランドの住宅の頭金は100万NZドルになる」
ニュージーランドで物件を購入する場合、住宅価格の20%を頭金とし、残りの金額分のローンを組むというケースが大半です。
現在のオークランドの平均住宅価格は100万NZドルを少し超えたところなのですが、その記事には「平均価格は125万NZドル」と書かれており、記事の通り物件の平均価格が125万NZドルだとすれば、頭金として25万NZドルの現金が必要になります。
25万NZドルを用意すること自体簡単ではありませんが、およそ20年後にはそれが4倍の100万NZドルの支払いになる、という予想には、不動産業界が長い筆者も驚きを隠せませんでした。
しかし、平均住宅価格が200万NZドルまで上がり、その上で頭金の割合が20%から50%に上がることで、200万NZドルの50%の100万NZドルの頭金が必要になるのか、それとも、頭金の割合は20%のまま、約20年で5倍まで平均不動産価格が高騰し、500万NZドル級の価格帯になり、その20%である100万NZドルの頭金が必要になるのか、という点については、記事からはわからないままでした。
とはいえ、2000年の時代と現在を比較してみると、物件価格は約4倍の価格帯になっているため、実現してもおかしくない数値です。
では、今後物価がどうなるのか、人々の収入はいくら上がっているのだろうか…? と、ふと考えています。
「子どもの将来のため…」親が不動産購入を主導
最近、担当する売り物件のオープンホームに「この人は本当に家を買えるのだろうか?」「冷やかしで来てもらっては困る」と思ってしまうほどの若い方が来られることがあります。
オープンホームの数日後、「平日にもう1度物件を見たい」との電話が2件あり、それぞれスケジュールを組んだところ、最初のアポイントでやって来たのは、てっきり冷やかしだと思った若い方だったのです。
お父様と一緒にお見えになり、その5分後にはお母様も合流しました。息子さんの熱心なプレゼンを交えた見学を終え、その後は親子3人で熱心に話し合われていました。
家族の会話は英語でなかったため、話の内容はわかりませんでしたが、雰囲気から察するに、お父様がこの家はダメだ、といっていた様子。結局、オファーはかからず、思わず肩を落としてしまいました。
次に来られたのは、ファッショナブルな服装のお母様と息子さんでした。
こちらのふたりは英語で話していたため、会話に耳を傾けていると、どうやらお母様の方が熱心に物件を見学し、息子さんにすすめているようでした。息子さんの様子を気にかけていると、無事にオファーをいただき、正式に契約が成立しました。
どちらの親子も、息子さんの将来のために家を購入し、独立した息子さんがルームメイトを入れて暮らすための家探しでした。賃貸物件に住むより投資と実益を兼ねた物件を購入する、NZ独特の不動産購入事情を実感したケースでした。
購入者の希望に合わなければ、営業マンの努力も水の泡に
このような不動産購入では、お子さんが必死になってさまざまなオープンホームを見学し、よい家があったからと両親に伝えるパターンと、逆に、親のほうが情報収集してお子さんに伝えるパターンが見受けられます。
後者のなかでも、お子さんの方は受け身でありながらも一緒に探す人もいれば、買ってくれるのであればどこでもいいというお子さんもいるため、私たちセールスマンは「親と子のどちら側につくべきか?」という判断を迫られることになります。
もちろん、スポンサーであるご両親のほうに物件アピールをし、気に入ってもらうことも必要なのですが、実際に住むお子さんが「ノー」といえば、すべてが覆されることになるため、見極めがむずかしいところがあります。とくにこの時期はクリスマス前に新居に住みたい、あるいは、年度までに新しい物件を探している親子の不動産購入のピークでもあるため、お客様の言動に神経を張り巡らせて、物件紹介にあたっています。
独身の方が物件を購入した場合、パートナーになる人はもう家を選択できず、その家で新生活が始まるのか? それとも独身時代の利便性のよい物件として購入し、家庭を築く時は、また、パートナーの意向も聞いた家を探すのか?
それぞれの人が持つ、希望条件というものは、家を売買する際の興味深いポイントです。
我々がどれだけ家をご紹介し、案内しても、購入者の考え、希望条件を満たしていないと、契約に結び付くことはありません。
こんなに素敵で、価格もお得、絶対買いどき、お得な家ですよ!…と、どれだけアピールしても、購入者の希望に合わなければ、我々の力説やおすすめは、エネルギーの無駄、徒労に終わってしまうのです。
ファーストホームバイヤーには厳しい時代
新築タウンハウスが完成し、10月末から入居が始まっています。
投資用として購入されていた方の再売り物件や、数戸の売れ残りがあったことから、このプロジェクトのオープンホームには力を入れています。
オープンホームは主に、投資家やファーストホームバイヤーが集まります。しかし、住宅ローン金利が上昇しているため、どうしても月々の返済額が高くなってしまいます。オファーしたいという希望が出ても「収入証明が足りない」「共稼ぎでないと、とてもではないが無理」などの理由で、なかなか契約までたどり着きません。本当に苦しい時代がやってきました。
しかし、それでもいまは底値なので、無理をしてでも契約・購入したほうが、長期的には非常にお得なのです。
現金がなければ仕方ありませんが、資金を持っている方の場合、エリアが合わない、部屋が狭い…などの理由で物件をえり好みし、時間をかけて物色していると、一気に値上がりする可能性もあります。
確かに家は高い買い物ですから、気に入らないものを買いたくない気持ちはよくわかります。しかし、最初からマイホームの購入を目標とするのではなく、まずは段階を踏み「買える物件」を購入して資産価値を高め、そこから得られた利益で、ステップアップした物件購入につなげていきましょう。
先月のオークランドの物件価格ですが、ノースショアは好調で、唯一の価格上昇となっています。セントラルは横ばい、西もほぼ横ばい傾向です。オークランドの南、ワイカト地方では価格が下落傾向ですが、平均単価は75万NZドル台。肌感覚では5万~10万NZドルものギャップがあり、注意を払わなかったほんの1年間に、こんなにも価格が上昇したのかと驚いてしまいました。
資金に余裕があり、ローンを組める余力がある方は、とりあえず購入へと進んでみましょう。チャンスを掴むためにも3年保持し、利益を得るためのシナリオをぜひ考えていただければと思います。
Author Profile
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元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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