すでにサマータイムが開始されたニュージーランドですが、不動産業界は年末商戦に向けてラストスパート中です。今後は移民受け入れ強化や投資家への優遇措置の実施により、さらに不動産需要は高まると思われますが、一方で、かつてのようなゆったりした環境は減少しています。現地のベテランバイヤーが解説します。※本記事は、2023年10月20日現在の情報に基づいて執筆されています。
ニュージーランドの不動産業界、ビジネスは年末へ向けて加速中
南半球のニュージーランドでは、すでにサマータイムが始まっています。桜の花のシーズンも過ぎ、スクールホリディも終わり、ラグビーワールドカップでは、オールブラックスの活躍に国民が湧きました。一方で、政府交代という歴史的一幕もあり、この9月10月は慌たださのなか、あっという間に過ぎ去ろうとしています。
人々が次に関心を向けているのは、クリスマスホリデーの計画のこと。私たちが身を置く不動産業界は、セールスマネージャーが営業部員たちに「年内の営業を頑張れ!」「よい休暇が過ごせるよう、ラストスパート!」と、発破をかけています。
新人のセールスマンも入ってくるので、筆者も彼らの活躍ぶりを横目で見ながら「初心に戻ることも大事よね」と思いつつ、たまに先輩面してアドバイスしたりします。とはいえこのIT時代、新システムをマスターできるかどうかによって、仕事の作業効率も成果も変わります。
若い世代はさっさとマスターしていきますが、中年世代にはやはり難しいようで、なかには「機械はもう、いい…」と音を上げ、手作業の仕事に戻っていく人もいます。どちらがいいのかは微妙ですが、年齢的に「手作業派」に寄っている筆者も、「成功のカギは、時代の流れについていくことではなかろうか?」と再認識する今日この頃です。
住宅不足が起こる可能性、緑地が減少する可能性
さて、ニュージーランドの新政権の政策、とくに我々が身を置く不動産業界の事情に注目しているのですが、今日の時点では、まだ執筆できるまでの情報とはなっていないため、これについては次回以降に譲りたいと思います。
ただ、現状申し上げられることを一部ピックアップすると、
●移民受け入れ強化:これにより、住宅不足が起こる可能性があります。
●外国人による不動産購入に道:金額制限がある、税金の支払いが発生するといった注意点がありますが、条件を満たす方は購入可能です。ただ、金額が高くハードルが高いことから、一般向けの改善ではありません。
●投資家への優遇措置の実施:以前からこの政策により住宅不足が懸念されてきたオークランドですが、どうやら住宅不足の解決策として、ファームランドの居住地化を強化する模様です。ますますオークランドの緑地が消えていくことになります。
このようになっています。
のんびりとした緑豊かな環境がニュージーランドの売りでしたが、時代の流れに伴い、社会全体の動きが加速しつつあります。人口増加によるインフレ対策が進まない状況下、国として発展してほしい気持ちはありますが、生活環境は従来よりも苛酷になることが予想され、その点は複雑です。まあ、全体的に考えると、人口や住宅がもう少し増えれば、国も活性化していいのでしょうが…。
[図表]ニュージーランドの年間物件平均価格変動(2023年9月時点)
マイホーム購入の実現・実行が厳しいなか、政府は賃貸住宅の建築数を増やし、収入の格差による「住まいの格差」をなくす方針だとの話も聞こえてきます。
地域の開発は喜ばしいが、住環境の悪化に複雑な思いも
定期的売り物件のオープンホームがある週末、かけもちで物件を移動。2年前からタウンハウスプロジェクトに参加していますが、売却も完了し、もうすぐ物件の引き渡し日です。
プラン売りで販売していたころを懐かしく思い出しますが、それもほんのひとときのこと。物件の在庫をラストスパートで売却できるよう、週末内覧のためにオークランドの高速道路を走り回ります。
そんななか、通勤途中の道路沿いを見て「あれ? 更地になっている!」とびっくり。13年前に売却した家が取り壊されているではありませんか。聞けば、ゆったりした土地を分割して3戸の家を建てる計画があるそうです。いまはこのような土地が多くみられ、あっというまに更地になり、基礎工事が始まり、道路通行もところどころ遮られています。
都会のオークランドでは、このように土地分割が行われています。かつてスタンダードだった、広い庭に広いリビングの家は減少し、コンパクトな建物が立ち並び、たくさんの人々がそこに暮らしています。
この点が、開発が進む国のうれしさ、楽しさのなかにある課題です。発展を喜ばしく思う一方で、住環境への課題を見るにつけ、寂しさや残念さが入り混じります。
緑豊富なファームランドへの新興住宅地改造計画もあることから、二束三文の土地の価格上昇を信じ、土地探しに余念のない人もいます。
いまでは、インターネットを駆使して「お手頃価格」の土地家屋を探して購入し、3年〜5年ほど寝かせてからキャピタルゲインを取るという投資スキームも一般化してきました。
不動産業界に身を置く者として、所有する住宅価格が上昇し、みなさんの資産が増えることを願っています。まだマイホームを持っていない方は、ぜひがんばって家を購入してはいかがでしょうか。一歩踏み出す勇気が、今後の資産形成を左右する分岐点になるといえるでしょう。
Author Profile
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元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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