【連載178回目】住宅価格高騰中のニュージーランド…日本の不動産価格に「なぜそんなに安いのか」と驚愕
2022年11月11日
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コロナ禍にあるニュージーランドですが、11月には2年ぶりの「ジャパンデー」が開催され、あらゆる日本の文化やビジネスが紹介されました。なかでも現地の人を驚かせたのは日本の不動産価格です。広い住宅が一般的だったニュージーランドも、いまでは不動産価格が高騰。状況は目まぐるしく変化しています。現地のベテランエージェントが解説します。※本記事は、2022年11月6日現在の情報に基づいて執筆されています。
2年ぶりの「ジャパンデー」開催、盛況のうちに終わる
2022年11月6日の日曜日は晴天のなか、2年ぶりのジャパンデーが無事に開催されました。例年通りの来場客でにぎわった会場では、日本の文化や芸術、食や日系企業の紹介がおこなわれました。
和太鼓の演奏や、和服姿のMC
今回は、オークランドの西に位置するヘンダーソン地区のトラストアリーナでの開催でした。会場の横には、女子ラグビーワールドカップが開催されたフィールドがあります。
これまではオークランド中心部のセントラルで開催されており、今回はいつもの場所から離れたことで来場者数が懸念されていましたが、主要な高速道路からのアクセスがよく、また、日曜日で道路が空いていたこともあり、現地に住む日本ファンの皆さんを中心に、多くの方が来場してくれました。
ステージ上では和太鼓や琴の演奏があり、体験・販売スペースでは日本のアニメを紹介するコーナーや、日本への観光案内や縁日体験、生け花の展示や茶道体験のブースのほかにも、NZでワイナリーを運営されている方々による試飲会など、多くの出店がありました。
生け花の展示
ニュージーランドでは、コロナの感染者も出てはいますが、マスクをしている人は少数です。来場された方はそれぞれにお祭りを楽しみ、大いに盛り上がりました。
不動産業界も初めて出店、日本の物件紹介にチャレンジ
ジャパンデーには長年参加していますが、実は今回、私たち不動産業界も初めて出店し、日本の不動産情報紹介にチャレンジしました。
物件案内をすべて英訳するのは難しく、時間もなかったため、見取り図などは日本語のまま。詳細情報はさすがに日本語では理解してもらえないため、そこのみ英語に訳しての展示となりました。
このような掲示方法をしていたところ、漢字が読める中華系の来場者は、混みあっている英語表記のエリアを避け、日本語表記のほうに集まってしきりに内容を読みこんでいて、非常に印象深い光景として心に残りました。
紹介した物件のなかには、25万NZドル、日本円にして約2000万円台の愛知県の6DK中古物件がありました。オークランドでは、ワンルームマンションがなんとか買える値段です。
ニュージーランド人の来場者は、英語表記の詳細や図面を見て「これは安い! 僕たちでも買えるのか!?」と驚く方もいました。
このように反響は上々で、多くの方に興味を持ってもらうことができました。これから具体的な商談へと進むことになりますが、結果はどうなることでしょう? いまからとても楽しみです。
土地価格上昇にともない、狭小化が進むNZの一般住宅
毎回のように「オークランドはタウンハウスの建築ラッシュ」とお伝えしていると思います。
昔は、1000㎡の土地に1軒の家が一般的で、どの家も広い庭付きでした。ところが、1990年代後半からアパートメントが立ち並ぶようになり、土地の高騰も影響して1戸あたりの平均が500㎡ほどの区分売りも盛んになりました。時代が下るにつれ、1戸建ての場合の土地は約350㎡、集合住宅のタウンハウスになると、土地は平均して150㎡程度になってしまいました。
土地が150㎡程度となると、床面積は100㎡ほどになり、広いものでも160㎡ほどです。かつては平屋が主流でしたが、土地の狭小化に伴い、住宅も2階、3階建てへと縦に伸びてきました。
ところで、このタウンハウスですが、建っている地域によって、価格が大きく異なります。
★3ベッドルーム、2バスルーム、1ガレージ 950,000 NZD~(ウェスト地区)
★2ベッドルーム、1バスルーム、1カーポート 1,200,000 NZD(イースト地区)
4ベッドルーム、3バスルーム、2ガレージ 1,900,000 NZD(セントラル地区)
ほんの3つですが、地域と価格帯の異なる物件の例を挙げてみました。
上記のウェスト地区の物件は3ベッドルームですが、ウェスト地区の場合、2ベッドルームの物件は80万NZドル台で買うことができます。しかし、これがセントラル地区になると100万NZドルを越え、学区がいいとさらに高騰して200万NZドルへとあと一歩、というところまで値段が上がります。
ファーストホームバイヤーたちの苦悩
営業していると、ファーストホームバイヤーでこのような物件に手が届く方はほとんどいないように感じます。
やっと銀行の住宅ローンの認可が下りたとしても、「希望物件の最低価格の95万NZドルが出せない。92万NZドルまでなら出せる。価格交渉をできないものか」と懇願してくるファーストホームバイヤーは少なくありません。
しかし、売り手のほうもまたシビアで、「そこまでは下げられない。本来であれば100万NZドルに近い数字で売りたいが、いまマーケットが冷え込んでいるから、値下げして95万NZドルでもいい、と妥協しているんだ。92万NZドルなんて安すぎる!」というような会話が多く交わされています。
私たち不動産仲介人としても、このような両者をくっつけるのに必死です。
この2~3万ドルの追加は、ファーストホームバイヤーにとって厳しいものとなります。開発会社は「3万ドル追加するくらいどうということはない、いまこの値段で買っておけば、将来きっと値上がりするので、いい条件なのですよ!」と簡単に言ってのけますが、若い世代にとっては「目先の100ドル」が非常に大きい…。
慎重な検討の結果、妥協して予算内のタウンハウスを買う、というのがよくあるパターンなのです。
タウンハウスを買うにしても、最初は「ガレージがないと嫌だ。部屋数は3ベッド、バスルームも2個は必要、それから角部屋…」などと、当初は多くの希望条件がありますが、最終的には真ん中に立つ、カーポートしかついていない90万NZドル以内のタウンハウスに落ち着くことも少なくありません。
100万NZドル越えの予算がある方は、狭いタウンハウスではなく、中古の一戸建てを買うことができます。しかし、ファーストホームバイヤーが新築を買う際には、特別枠でのローンが組めます。そのメリットを最大限に生かす物件選びをしようと、皆必死なのです。
変化を遂げたNZの生活スタイルに、一抹の寂しさ
今日のオークランドでは、いたるところにタウンハウスを見かけます。
ニュージーランドの人達の生活ぶりの変化に、過去の実情を知る筆者は心配になることもありますが、実際問題、オークランドで1000㎡の土地の3LDKの家を買える人は、もはや超富裕層しかいないのです。
広い家での暮らしを求め、都市部のオークランドから地方へ移住する人も増えています。
家と同様、広い庭を求めるニュージーランド人は少なくありません。タウンハウスには小庭があるので、多少はガーディニングも楽しめますが、アパートの高層階の場合は、単なる箱型住居のため、これもまた、ニュージーランド人の生活様式に変化をもたらしています。逆に、箱型住宅に慣れているアジア系には、庭の手入れをおこなわずにすむことや、見晴らしがいいことから、アパートに根強い人気があります。
ニュージーランドらしいライフスタイルとは、一体なんなのだろう…。現在の状況を見るにつけ、そう考えずにはいられません。
Author Profile

- Goo Property NZ Ltd. 代表取締役社長
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1982年、大阪女学院短期大学英語科卒業。カリフォルニア大学デイビス校留学。帰国後、旅行会社のツアーコンダクターに従事。1987年、ニュージーランドツアーの添乗を機に、移住希望を持つ。
1995年1月の阪神・淡路大震災を経験し、1996年に移住を実現。 自己の居住用物件さえあれば、落ち着いて生活ができると感じ、ワンルームマンション購入を実行。その経験を生かし、不動産業界に参入。当時インターネット環境が整いつつある中、日本語ウェブサイトを開設し、留学・観光・不動産投資についてのコンサルティングを始める。
現在、ニュージーランドの大手不動産売買仲介会社であるHarcourts New Lynn(ハーコウツ・ニューリン)支店にてセールスコンサルタントとして活動しながら、日本人のための投資コンサルタント会社Goo Property NZの代表として活躍中。
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