現地不動産屋が教えるニュージーランド移住&投資ガイド
Currency Rate1NZDJPY 88.67 USD 0.577 2024年12月14日 12:08 PM  更新

かつてのニュージーランドの一般住宅は、広々とした庭に平屋の建物、何種類ものフルーツの木を植え、季節の実りを楽しめる…というスタイルが定番でした。しかし現在では、住宅の面積は縮小する一方です。不動産エージェントとして現地で活躍する筆者が、ニュージーランドの住宅事情の変遷と今後の展望を解説します。※本記事は、2022年6月3日現在の情報に基づいて執筆されています。

 

オープンハウスに植わっていた、何種類もの果物の木

 

30年ほど前までは、ニュージーランドの家は1000m2の土地に3LDKほどの平屋の一戸建てが1軒建っている…というような、庶民的なお家でも広い庭があるのが一般的でした。それが25年ほど前にはその半分の500m2に2階建てのお家が1軒、というスタイルが増えてきて、近年になると、150m2の土地に長屋のタウンハウスが建つ時代となりました。

 

先日、そんな昔ながらの広いお庭あるお家のオープンホームを開催していると、ついこの前まで緑だった玄関先のマンダリンの木が、オレンジ色に染まっていることに気が付きました。そのほかにも、このお家にはフェイジョアや梅もあり、ニュージーランドの実りの豊かさを実感しました。

 

玄関先の植木に、マンダリンオレンジが豊かに実る

 

このような昔ながらのニュージーランドの家の庭には、レモン、マンダリンオレンジ、グレープフルーツ、桃、フェイジョア、アボカド、オリーブなどが植わっていることが多いのです。

 

収穫などの手間があり、時間の余裕がなければなかなか楽しむこともできませんが、時間はあるものの、食料品の入手が困難だったロックダウンの最中は、このような実のなる木々は重宝しました。筆者も、ステイホーム期間中は自宅の庭のレモンを収穫し、レモンティにして楽しみました。

 

オープンハウスの玄関先のマンダリンオレンジも、あまりにきれいなオレンジ色に魅せられ、2つほどもらって家に持ち帰りました。

 

最近はビタミンCを摂れていないな…と思いつつ、手入れもされていないようだし、さぞかし酸っぱいだろうと覚悟して食べたところ、とても甘いことに驚きました。肥料もなく、雨と太陽だけで実ったまさにオーガニックのオレンジです。よそ様のお庭で実ったフルーツをいただくのは、本当に久しぶりのことでした。

 

いま、スーパーではニュージーランド産のオーガニックオレンジが大量に売られています。一方で、少し前からアメリカ産のオレンジは見かけなくなりました。また、レモンがない時期も続きました。輸入品が減ったのもコロナや戦争の影響なのでしょうか。

 

手に取った2つのオレンジから、「自給自足」について考えてこんでしまいました。

 

拡張される住宅地域、緑豊かな広い庭は過去のものに?

 

下の写真は、あるアパートの最上階からの景色です。右手奥には新しいタウンハウスが立ち並び、写真中央部の広い土地ではアパート、タウンハウスの開発が控えています。

 

アパートの屋上からの景色。新たなタウンハウスの開発が進む。

このように、元倉庫地や、公園だった土地がどんどん宅地となり、オークランドの住宅地域は拡張しています。

 

このような宅地は、適度に植木を植え、緑地形成はされるものの、上記のような果物の木を植えられるような広い庭付きの家には程遠いといわざるを得ません。

 

オークランドに住む人々の生活様式、環境が変わってきています。

 

確かに庭が広いと大変です。芝刈り、草むしり、庭木の剪定、景観の維持…。そのための費用もかかります。そのため最近では、手間を省くための芝生を人工芝に替えたり、石やチップを敷き詰めるか、デッキやタイル張りにしたりと、草木を植えない人が増えています。

 

個人的には、それでいいのだろうか? という思いでいっぱいです。かつてはどのお家にも当たり前のようにあった広いお庭も、徐々に面積が狭くなり、近年建てられたタウンハウスでは、小庭があればまだまし、というほどになってしまいました。

 

大きな植木はもう、街から消えていってしまうのでしょうか? それとも広いお庭が残る昔ながらの住宅地で、豊富に維持されていくのでしょうか? 20年後、30年後、そして50年後の住宅街はどうなっていくのでしょうか…?

 

将来は住宅不足に…手の届く範囲での購入を推奨

 

新興住宅街にも必ず公園は作られ、子ども達の遊び場、ラグビーやクリケットができるフィールドがあります。そのため、緑豊富な街並みは崩れないと思いますが、庭事情からわかるとおり、個人の住居は様変わりしています。

 

若年層は、雇用が豊富な市街地中心に勤務しているため、勤務先へアクセスのいい都市部の狭いアパートや、タウンハウスに住む子育て世代もいます。

 

中年層になると、都市部勤務でないホームオフィスの人達は郊外へと移動し、少しでも広い家へと移っていきます。

 

リタイヤメント層は、そこからサイズダウンを試み、アパートメントか、小庭のあるタウンハウスへと移り住むのです。

 

核家族化や勤務形態の変化、ライフスタイルの変化…。植木や住宅の変化から、いろいろ考えさせられる今日この頃です。

 

このような事情をもとに、投資家の方には価格的にも購入しやすい、新築のタウンハウスへの投資をおすすめしています。

 

投資家の住宅提供がなくなってしまうと、住宅不足の昨今、賃貸物件が減少してしまい、若年層の住居確保が難しくなってしまいます。投資物件を若い世代への貸し出すことで、両者が潤うことになります。投資でもあり、また、社会貢献にもつながるのです。とくに賃貸物件の少ない地方都市がおすすめです。

 

これまでのような、親世代が複数の投資物件を持ち、それを子どもに提供していく時代は徐々になくなっていきそうな気配です。

 

一戸を購入するものやっとの時代。この先30年、50年後を想像すると、若い世代、中年層関係なく、住居を持っていない方は、いまからでも買える物件を手にして、安定した居住空間を得てほしいと思います。老後の安泰のために…と、多くのお客様にお伝えし続けている状況です。

 

今回は、植木に注目しつつ、ニュージーランドの住居の変遷を取り上げました。

 

 

Author Profile

一色 良子
一色 良子Goo Property NZ Ltd. 代表取締役社長
元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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