【連載169回目】好立地の住宅価格「1億円前後」でも…買い手が続々のワケ
2022年2月16日
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新型コロナのオミクロン株の流行により、まだ行動が制限されているニュージーランドですが、段階的な入国規制の緩和が発表されるなど、明るい兆しも見えてきました。不動産市場は、新年から活発な動きを見せ、今年も幸先がよさそうです。不動産エージェントとして活躍する筆者が、現地でしか掴めない不動産事情をレポートします。※本記事は、2022年2月4日現在の情報に基づいて執筆されています。
ロックダウンは免れても…オミクロン株の影響は大
オミクロン株の出現により、ニュージーランドでも毎日の感染者が100人を越えるようになりました。50人を下回る日もありますが、ついに200人を超えた日もあり、社会は平常に動いているようで、国民はもがき続けています。
現在のニュージーランドでは信号機の色を使って注意度を表現しており、1月末から国内全体に赤信号が出されています。ロックダウンは免れていますが、お店の営業には条件がつけられています。特に飲食店などは、店内での飲食を中止してテイクアウトのみで営業する店や、客席の使用率を50%以下にする店、なかには、休業をする店も出ています。
年が明け、昨年よりも状況が改善するだろうと期待していただけに、市民の落胆は大きいと思います。政府からのコメントはワクチン接種の向上を期待するものばかりで、大々的な補助金や支援金などの話題はありません。
入国規制を段階的緩和へ、期待に沸く事業者たち
そんななかで2月3日、入国規制を段階的に緩和する方針が発表されました。
これには5つの段階が設けられており、
【第1段階】
オーストラリアからのニュージーランド人の入国許可(2月27日~)
【第2段階】
その他の国からのニュージーランド人、また、永住権保持者、重要な産業で働く労働者、ワーキングホリデービザ保持者など、条件が揃っている外国人の入国許可(3月13日~)
【第3段階】
現段階で有効なビザをもつ、最大5000名の学生の入国許可(4月12日~)
この段階までは、1週間から10日程度、自宅での隔離が求められていますが、政府が指定するホテルでの隔離は不要となります。
【第4段階】
オーストラリアからの観光客も含めたすべての渡航者、ビザが免除されている国からの渡航者を隔離なしで入国許可(7月までに実施)
【第5段階】
すべての国からの渡航者の入国許可(10月~)
ということで、3年近い時を経て、久しぶりにニュージーランドが開港されることになります!
もちろんこれらの基準は、今後のコロナの感染状況によって変更される可能性もあります。
しかし、留学生やワーキングホリデー、観光客の復活など、観光業・飲食業などにとっては、待望の発表となりました。輸出入業者など、貿易に携わる事業者にとっても期待がかかります。もちろん、留学生たち向けの物件を扱う不動産業も同じです。
とはいえ、入国に際しての隔離は自宅隔離であり、政府による隔離でなくてもいいのか、入国者を信じての運営は可能なのか…といった点には不安が残ります。もしもの際には市中感染へと進まないよう、3回目ワクチン接種を強化して感染を防ぐこと、自己管理することが、国民に求められているのだと思います。
医療面で不安を抱える日本人の永住者も少なくありません。とくに年齢の高い方は言葉の壁もありますし、公立病院では無料で治療が受けられるものの、順番待ちは避けられません。そのため、万一のことが起こる前に日本に帰国する方は少なくありません。
ビジネスでニュージーランドに住んでいた方も、コロナが仕事に影響を及ぼし、一時的に帰国する、あるいは完全撤退する、という選択をする方が増えてきています。
不動産業界は、コロナの影響もなく快調なスタート
不動産業界では、接客業は条件付きではありますが、工事は無事に進んでいます。
筆者のところでも、条件は付くものの、オープンホームをキャンセルすることなく開催しています。ただし、人が多く集まる一般公開のオークションは、中止にせざるを得ません。そんなときは、Zoomやビデオ通話でオークションを開催しています。
オンラインの活用により、業務への大きな影響はなく、家を買いたい方も売りたい方も、断念することなく売買が続いています。
新築のタウンハウスも完成間際です。あと数ヵ月、今年の半ばには完成という時期に差し掛かり、購入希望者も本気でオファーを出してきます。
ネット広告を出すと、その日どころか、その瞬間から「即決でオファーをしたい」といった問い合わせの電話やメールが来て、2日で売買が成立します。条件付きではありますが、ローンが組めれば正式に売買成立です。
仮にその方がキャンセルになっても、2番手、3番手がキャンセル待ちをしているような状況です。
とくにファーストホームバイヤーの勢いは収まりません。賃貸物件ではなく、ローンを組んで自分の家に住むために、30代、40代の方が頑張っています。
平均価格も100万NZドルを越えるようになり、オークランド中心地、条件のよい住宅地での物件価格は120万~150万NZドル(9500万~1億2000万円)規模になりました。
そこまでの金額が出せない人達は、100万NZドル以下の80万~90万NZドル(6000万~7000万円)台のタウンハウスを購入するため、タウンハウス市況もなかなかに盛況です。時折70万NZドル(5500万円)台の物件が出た場合には、問い合わせが殺到します。
最近、日本で放送されている、海外の不動産を紹介するテレビ番組を見る機会がありました。ニュージーランドでも不動産相場が高騰しているように感じていましたが、これでもまだお得な価格なのだと実感しました。
国内需要が行き詰まり、銀行ローンの上昇もあって、今年は価格が下がるのでは…というコメントも聞くのですが、そんなことはないと、世界のレベルを見て確信しました。
不動産売買「オークション形式」のメリットを再確認
オークション主催者も新年早々、ウェブセミナーでトレーニングをしてくれました。
その際、「銀行の融資が厳しい、金利が上昇…などのいいわけを聞くのはよせ」と、強い言葉で言われました。
「それはセールスマンのいいわけだ!」
…と。
時間がかかっても結果は出る。銀行は条件がそろえば融資する。しかし、どこかで融資が厳しくなってきた…という噂が立つと、1人、そしてもう1人…と、同じいいわけをいってくるのだそうです。
そのようなとき「僕は今日8軒中、6軒売ってきた。売買は成立しているのだ!」と、いうのだそうです。
セミナー中、講師のオークション主催者はこんなこともいっていました。
「明日は、10軒オークションがあるのだ!」
オークションを専門にしているとはいえ、1日8軒、10軒といったオークションをこなすのは、かなり疲れることです。
移動だけでも時間との戦いですし、ましてや、一戸一戸の状況を頭に入れ、1人ひとり異なる買い手たちの挙手の状況を見極め、ときには売り手と一緒に買い手を説得するセールストークも必要となれば、単なるエンターテーナーでは務まらない仕事です。
「不動産売却するなら、オークションが手堅い方法だ!」
洗脳されそうな強い言葉ですが、実際、オーナーの立場からすればこれ以上いい方法はありません。売れるかどうかその日のうちに決まりますし、なにより価格を競り合うため、ベストな値段がつくのです。
買い手は想定よりも高い買い物になる可能性もありますが、多くの選択肢からいい家を決めるきっかけになる、という側面もあります。
また、多少高い買い物だとしても、いま買えたのなら「1ヵ月後よりも安く買えた」ことに違いありません。
オークションは、売り手と買い手の両者にとって、スッキリと収まる不動産売買の方法だということを、改めて実感した次第です。
Author Profile

- Goo Property NZ Ltd. 代表取締役社長
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元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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