【連載156回目】なぜ…NZ、コロナ禍でも「不動産業界だけ活況」な3つの理由
2020年12月15日
連載コラム 一色 良子GooNZ GooProperty nzに住みたい インカムゲイン オークション オークランド キャピタルゲイン ニュージーランド ローン ワイカト 外国人 投資
ニュージーランドもコロナの影響で、大きな収益源である観光や留学のマーケットが縮小し、経済に深刻な打撃を受けています。しかし、不動産業界には大変な勢いがあり、仕事を求める人々の流入はもちろん、住宅の売買も例年以上の過熱ぶりです。詳しい事情を見ていきましょう。
コロナ禍でNZ経済停滞も、不動産業界は「例外」
早いものでとうとう12月に入り、今年も1ヵ月を切ってしまいました。3月には、新型コロナウイルスの蔓延によるロックダウンという、想像したこともない状況を経験し、観光業・留学産業を収益の大きな柱としている国として、被った損害は計り知れません。失業も増えるばかりで、各国との往来の制限が続いているいまも、経済復活の目途は立っていないというのが現状です。
しかしそのような状況にあっても、不動産業界には大変な勢いがあります。例年10月~12月にかけては不動産業の繁忙期です。我々も週末の「オープンホーム」を行いながら、新規の問い合わせや役所の手続き、営業広告の手配等をこなし、夜は夜で、「オークションナイト」を開催します。つまり、日夜勤務中です。おかげで、不動産業界に限っては「失業」という言葉はありません。むしろ、別の業界で失職してしまった方が続々と不動産業界に流入しています。「リクルートナイト」も盛況です。
実際のオープンホームの様子(筆者撮影)
失業された方のなかには、不動産販売だけではなく、それに付随する建物検査員の資格を取るなどして「家」に関する業種へ転業され、成功を掴んだ方も少なくありません。本当にたくましく、バイタリティにあふれています。
なぜ「例年以上に不動産の売買が盛ん」なのか?
しかし、なぜコロナ禍であえぐニュージーランドにおいて、不動産業界だけが活況なのでしょうか。その理由を下記にまとめてみたいと思います。
●銀行定期預金の金利が低下
預金金利が高いことでは有名な国。20年前は、12%という金利を誇っていましたが、徐々に下がり、コロナ勃発の初期までは、5%前後あったのが、急降下し、現在は、0.85%という預金金利になってしまいました。あまり現金を預金する国民性ではないのですが、流石にこれは、ショックは大きく、100万ドル単位の預金者は金利で生計を立てられていましたが、満たなくなったので、不動産賃貸運営へと移行されるようになりました。現在オークランドの賃貸純利益は、3%~3.5%得られます。
●住宅ローン金利が低下
このところは5.5%前後、そして4.5%と下がってきたのですが、現在は一気に2.5%前後で動いています。ファーストホームバイヤーを主に、借りやすい金利になったため、賃貸物件の居住から思い切ってマイホーム取得を考えるようになった層が増えました。そういった人々が住宅ローンの査定取得に殺到しています。
●移住していたNZ人の帰国ラッシュ
NZ政府のコロナ政策成功を受け、とくに欧米へ移住していたNZ人が安全な暮らしを求めて帰国する動きが起こっています。つまり帰国ラッシュです。その際、所有物件を持っていない人々は家探しから始めます。2週間隔離でホテル滞在を余儀なくされている人たちも、自由になれば住宅購入を急ぎますから、クリスマスを前にして一層のラッシュが起きています。
今年の年末年始のホリディーシーズンは、我々不動産業者は休んでいられません。自分も含め、従業員総出で仕事に追われることになるでしょう。そもそも海外旅行には行けませんから、やはり働くしかないでしょう。国内旅行は、クウィーンズタウンを中心に人気が出ています。恐らく、キャンプや釣りを各地で楽しみ別荘で過ごす方も多いことでしょう。
我々は、アジア人を中心に不動産を見学する方が多いと予測しています。日本と違いお正月行事がない国なので、もしかすると、新年早々からのオープンホームもありえるかもしれません。
オークランドは、前年比12.5%と平均値が引き続き100万ドルを超えています。ワイカト地方も、70万ドルに近い数字になりつつあります。
12月最初の週末もオークションが各地で行われ、100万ドルを超える物件が売却成立しています。物件を逃してしまった買い手は、即座に次のターゲットへと移動。例年なら12月20日にはクリスマス休暇へ入っているのですが、今年は年内最後のオークションが開催されます。
今年も1年間読んで下さって、ありがとうございました。コロナ感染率が高くなっている時期、引き続き体調に気を付け良い新年を迎えられますことを願っております。
来年は、皆様がニュージーランドに自由にお越しいただけることを、そしてさまざまな魅力的な不動産をこの地で見ていただけることを願いつつ、南半球の情勢を発信していきたいと思います。
Author Profile
-
元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
連載コラム 記事一覧 >
最新の投稿
- 連載コラム2024.12.13【連載202回目】来年は、売り手市場か!? 人口増加で宅地造成が加速するNZオークランド。年末状況および来年度予測は?【現地バイヤーが詳しく解説】
- 連載コラム2024.11.08【連載201回目】ニュージーランドの不動産業界は「繁忙期」に突入!少しでも安く買いたがる「バーゲンハンター」と売り手との交渉模様はいかに?【現地バイヤーが解説】
- 連載コラム2024.10.15【連載200回目】日本人には理解しがたい?クリスマスの足音が聞こえるこの時期、ニュージーランドの人々が探す「ハウスシッター」とは?【現地バイヤーが解説】
- 連載コラム2024.09.13【連載199回目】日本の感覚ではまだ金利は高いかもしれないけれど…ニュージーランド不動産、住宅金利5%台突入で春が来た!【現地バイヤーが解説】