新型コロナウイルスによる世界的な経済悪化の影響を受け、値が下がるかと思われたニュージーランド不動産ですが、むしろ市場は好調です。コロナ禍は市場を活発化させる一要因となっています。※本記事は、オークランド在住で不動産会社を経営する著者が、現地でしか掴めない不動産事情をレポートします。
「日常生活」を取り戻しつつあるニュージーランド
現在のニュージーランドのコロナウィルス警戒レベルはレベル2、この記事を読んでいただく頃には、レベル1になっているかもしれません。
ニュージーランド航空では8月末まで欠航が決まり、現在、日本へ移動できるルートはシドニー経由とロス経由のみとなっています。香港、シンガポールへのフライトの道もありますが、現時点ではトランジットは不可能という情報が流れているため、ニュージーランド在住の日本人は、年末年始のホリディーを除き、冬のニュージーランドを脱出することや、日本の夏休みを利用して行き来することがむずかしくなってしまいました。
警戒レベルの引き下げに伴い、10名以内までの集会から100名まで可能となり、冠婚葬祭がある程度行えるようになったため、人々はほぼ普通の日常生活に戻りつつあります。
弊社もZoomを利用したオンライン会議から、オフィスに赴き現実の場で会議を開催できるようになり、不動産についての情報交換も直接対面して話し合えるようになりました。
ビジネストークの話題は、「死亡・離婚・破産」
ロックダウン中、我々は家にこもりつつもオンライン上で毎日のように顔を合わせ、ゴシップ話を交えつつビジネストークを進めていました。
ゴシップ話としてよく話題に上がったのは「3D」です。Death(死亡)・Divorce(離婚)・Dead(破産)の頭文字をとったもので、これらは不動産業界にも深く関わり、不謹慎ながら、仕事を生み出す要素となっています。
まず一つ目のD、Death(死亡)についてです。コロナウィルスで亡くなった方はそこまで多くはないものの、やはりゼロではありません。家人が亡くなったために売却に出される家もあるでしょう。
次のD、Divorce(離婚)についてです。ロックダウンで家にこもれば、当然、一日中家族と顔を合わせることになり、その間、やはり会話を重ねるわけです。いくら家庭優先の生活を基本とするニュージーランド人であっても、これほど長い時間、家庭で夫婦が顔を合わせたり、子どもの育児について討論したりすることはありませんでした。このステイホームによってベビーブームが起きる可能性がある一方、関係を見直し、離婚を選ぶ夫婦も少なくないでしょう。別れにより売却される家もあるわけです。
最後のD、Dead(破産)についてです。消費の減少などによって会社が倒産したり、解雇によって会社の規模が縮小したり、投資物件を手放したりなどにより、物件の売買が想定されます。
ニュージーランド人の多くは、資産を運用するにあたり不動産投資を活用します。複数の物件を所有している場合も珍しくありません。所有物件の一部を手放すことにより一時的に現金を得て、会社経営立て直す…といった企業も増えてきています。
このように物件の売却が盛んに行われているなか、一般向けにオープンホームを開始してからは忙しい日々が続いています。冬という気候的要因も相まって、娯楽があまりないために、ショッピングモールでウィンドショッピングを楽しむかのような感覚で、多くのお客様がいらっしゃるためです。
ロックダウンが解除されたとはいえ、相変わらず警戒態勢の下にあります。人と人の距離をあける、消毒をする、といった感染対策を怠るわけにはいきません。我々セールスコンサルタントは、いつもの倍以上の覚悟と心構えでオープンホームへ挑まなくてはならないのです。
世界的な経済低調下における好調ぶりが「価値」を証明
世界的な経済悪化で、ニュージーランド不動産にも陰りが出て値が下がることを期待した方もいらっしゃったかもしれません。しかし実際の5月のデータは、前年と比較しても平均して約10%のアップがみられました。
前回の記事『5週間ロックダウンしたニュージーランド…封鎖緩和で市況は?』では、リモートワークの普及により自宅でネット検索をする時間が増え、不動産についての問い合わせが増加したことや、メールやZoom面談などのオンライン上で商談が成立し、条件付き契約書交換したことなどを紹介しました。数字がニュージーランド不動産の好調ぶりを物語っています。
下記の図表2を例に挙げると、オークランドも平均価格NZ$961,686 前年比で9.9%の上昇がみられます。また、セントラルノースランド地区、タウポ湖周辺などの中心の地域は20%以上も上昇しました。リタイヤメント層による移動の影響が著しく出ていると考えられます。
いつも「ニュージーランド不動産は歴史的実績で階段上に値上がりしていく」ということをお話していますが、コロナウィルスによる世界的な経済悪化のさなかでも、人々は不動産を売買し、対前年比で10%上昇という素晴らしい結果をただき出しているのです。
Author Profile
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元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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