現地不動産屋が教えるニュージーランド移住&投資ガイド
Currency Rate1NZDJPY 92.63 USD 0.595 2024年04月25日 16:19 PM  更新

【連載第136回】室温は最低18度に…NZの「健康的な住宅整備」にまつわる法律

2019年4月15日

連載コラム 一色 良子

 

ニュージーランド政府が定めた「健康的な住宅整備」にまつわる法律では、賃貸物件は2019年7月1日を期限に、断熱や乾燥といった一定の基準をクリアした、快適な住環境の実現を求めています。賃貸物件オーナーや不動産管理会社はその基準を満たすため、今まさに対応に追われているところです。では、その具体的な環境基準とはどのようなものでしょうか。今回はその概要を見ていきましょう。


将来的な医療費削減を視野に入れた「住環境の整備」

 

ニュージーランドは医療費が無料であり、手術・入院時の部屋代などの基本的な費用も国の負担となっています。同時に政府は、医療費の削減を目的とした、不健康な住環境の改善に取り組むため、国民に健康的な賃貸物件を提供するための法律も整備しています。今年の7月1日は、この住環境整備にともなう各種設備の設置期限となっており、家主はもちろんのこと、筆者の会社のような不動産の管理運営を委託されている会社も、そのスケジュールに間に合うよう、最終調整の段階へと進んでいます。

 

では具体的に、賃貸物件に求められている設備にはどのようなものがあるのでしょうか。

 

①暖房設備の徹底

寒い日でも室温が最低18度を保てるよう、暖房設備の設置が必要です。暖炉がある家も多いのですが、その場合は煙突清掃の徹底が求められます。暖炉がない家は、電気の暖房機の設備設定を行います。最近はニュージーランドも温暖化現象傾向で夏が暑くなってきたこともあり、冷暖房完備の機材設置が流行しつつあります。

②屋根裏、床下への断熱材の設置

屋根裏や床下に断熱素材を設置する必要があります。主流は、下記写真にあるような綿に似た素材で、専門業者に委託して設置します。3LDK平均的な一戸建ての家の場合、約3500NZドル規模の予算が必要です。

[写真]断熱材
屋根裏に設置された断熱材の様子。このような綿状の素材が主流となっている

③換気の徹底

換気設備を設置する必要があります。とくにキッチンやバスルームといった、水を使う場所での換気設備強化が求められます。

④隙間の改善

建物に発生している隙間への対処が必要です。建物によっては、窓やドアといった室内の箇所に隙間があるものもあり、その場合、いくら断熱材を入れて暖房機を設置しても、外気が隙間から流れ込んでしまいます。それを防ぐために、窓やドアの開閉部分などに改善修理を徹底します。

 

以上が、法令で定められた賃貸物件の改善義務で、政府はこれらを徹底させ、強制的に7月1日までに設備改善を求めるものとなりました。入居者が心地よく暮らせれば、同じ家に定着することになり、引越しに伴う建築物の損傷も最低限となり、最終的には、収入確保が安定的になる・・・といった好循環の保持の狙いもあります。

 

基本的には、法令で定まる前から設備が整った物件への投資をされている例が多いので、今になって慌てて設備強化するということはあまりないと思いますが、暖房機の買い替えや、バスルームの換気扇設置強化が必要となるケースもあるでしょう。大半は、断熱材設置の強化が多いと想定されます。

 

オークランドの不動産の価格推移に注目

 

オークランドの不動産価格の平均値は、対前0.6%ダウンとなり、ついに85万ドルという数値へと下がってきていますが、これはあくまでも平均ですので、まだまだ100万ドル近い数字の家が主流であり、新築物件は100万ドル越えという状況にあります。

[図表]2019年2月の国内販売実績状況

とはいえ、不動産価格が下がってきている流れのなか、購入のチャンスがある時期だともいえます。ワイカト地方は、平均53万ドル、対前5.4%上昇。30万ドル、40万ドル台で買えていた家が、40万、50万ドルとそれぞれ上昇中で、ワイカト地方の中心地、ハミルトンでは、3年前、55万ドル出せば買えていた平均的な3LDK物件は、70万ドル台の声が聞こえています。

 

ニュージーランドの不動産投資を考えている方は、引き続き価格の推移に注目です。

 

Author Profile

一色 良子
一色 良子Goo Property NZ Ltd. 代表取締役社長
元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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