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【連載第120回】ニュージーランド不動産投資の「リスク」とその軽減策

2018年1月4日

連載コラム 一色 良子

キャピタルゲイン ニュージーランド 投資 海外不動産 移住 節税 資金調達

価格上昇を続けるニュージーランド不動産といえども、投資リスクは常に付きまといます。そこで今回は、ニュージーランド不動産投資のリスクとその軽減策について、プリンストン大学教授の著書を例に考察します。


 

バブルが続くNZ不動産・・・資金調達法の改善が必要に!?

 

伝統的な不動産抵当ローンに代わる「リスク分散」の必要性は、大不況から得られる重要な教訓です。

 

これは、プリンストン大学経済学教授で、書籍『House of Debt』の共同執筆者であるAtif Mian氏が、先週中央銀行に訪問し、出した結論です。この本では、アメリカの家計負債の累積が世界的な金融危機となり、ひいてはその後の景気後退を深化させ、長引かせる役割を担っていると分析しています。

 

経済的大惨事は、同時に家計負担を大きく上昇させます。実際その相互関係は非常に強く、マクロ経済学では最も経験則に近い物であると言っても過言ではありません。Mian氏と共同執筆のAmir Sufi氏も、本でこのように記しています。

 

2000年から2007年の間、アメリカの家計の負債は倍の14兆米ドルとなり、家計負債比率は140%から210%に上昇しました。ニュージーランドでは、その率は現在168%ですが、アメリカと違って、持ち家に住む人の住宅ローンの利子の支払いは、税控除されません。

 

アメリカの住宅市場が暴落し始め、最終的に5.5兆米ドルもの家計を圧迫し、アメリカへの直接的な損害、そして最終的には世界的な経済が増幅されたと彼らは主張しています。

 

住宅ローンは、2者間の自発的かつ当事者の間の契約であるにもかかわらず、下振れリスクに大きな非対称性がみられます。担保にした住宅の価値が下がる場合、借り手のエクイティが損害を被り、そのエクイティが全部なくなるまで、貸し手は損害に悩まされることがありません。公平を期すため、同じレバレッジは上昇する市場で、住宅所有者の利益を増幅させます。

 

借り手は、貯蓄者よりも多くの収入を消費する傾向があるので、彼らの出費を抑える必要がある時、消費と経済活動に対する波及効果は、下振れリスクがより対称的である場合よりも大きくなります。

 

そして、彼らが自らの借金と抵当権行使を支援できなくなったとき――担保権執行が行われる場合――アメリカに住む、400万人以上家族がそうなりました。抵当権販売の続発は、地域の住宅価値をさらに下げ、他の負債がある場合、更なるプレッシャーをかける要因となります。

 

これまでのローンは、貸し手が自分の金は安全である事を説得し、より高い価格とより高い価格を提示する楽観主義者に貸与するよう導くことで、バブルの発生を容易にするとMian氏とSufi氏は語ります。

 

家計の資金調達方法を根本的に変えなければ、このレバレッジ損失の悪循環は断ち切れません。誰かが住宅購買の資金を調達するとき、署名する契約書は、下振れのリスクをいくらか共有することを許さなければなりません。負債より、エクイティに依る必要があります。

 

プリンストン大教授が提案する「共有責任住宅ローン」

 

住宅価格が上昇すると、貸し手と借り手の両方が利益を得ます。同様に、住宅価格が暴落すると、どちらも負担を分担することになります。

 

そこでMian氏とSufi氏は、“共有責任住宅ローン”を提案しています。これはお馴染みの住宅ローンと違い、借り手にダウンサイド保護を提供しています。その代わり、借り手が通常時に売られた抵当財産のキャピタルゲインの約5%を、貸し手に渡す必要があります。

 

例えば、その住宅の値段は50万NZドルで、購買者のお金で10万NZドルと銀行融資40万NZドルで買われたとします。合意された地域の住宅価格が上昇すれば、借り手の支払いは正常に機能します(ニュージーランドでは、ニュージーランド人が住宅を購入する際には2割の頭金が必要です。その頭金の比率は徐々に多くなりました)。

 

しかし、いくつかの指数に反映された住宅価格が、ローンが貸しつけられた時の水準を下回った場合、借り手の負担額は、価格が元の水準に回復するまで比例して減少します。借り手のエクイティはドルベースで下落しますが、支出や経済全体への影響が緩和されます。これにより抵当権の売却はずっと少なくなるでしょう。

 

明らかに貸し手は、その付加的リスクを背負うための補償を受ける必要があります。Mian氏とSufi氏は、住宅価格インフレの歴史的平均値に基づいて適切なリスクの貯留を仮定し計算したところ、販売が達成した時に貰えるキャピタルゲインの5%は、その付加的リスクに対して十分な代償になると語りました。

 

このリスク共有モデルは、住宅サイクルと関連しているリスクの振幅を減少します。それに、少なくとも人々からリスクを軽減するでしょう。Mian氏とSufi氏がアメリカのデータを調査したところ、状况が根本的に異なるとは考えられないが、彼らのレバレッジは家計と逆相関していることが分かりました。

 

要するに、貧しい人の負債は、富裕層の資産です。貧困層に資産を貸し出すことは悪いことではありませんが、貧困層に資金を提供する富裕層は、景気後退が起こると不平等が深刻化すると彼らは語ります。

 

住宅価格が30%下落した際には、モラル・ハザードにもかかわらず、納税者から救い出されたのは借り手ではなく銀行でした。

 

純粋主義者は、借り主を選ぶ事は債権者の責任である事を論議するでしょう。借り主が返済できないなら、債権者は損失を負担すべきです。ただこれには問題があり、この場合の“債権者”は、自分の骨を折って得た収入を銀行に委託した預金者を含めています。

 

トラブルに見舞われた銀行に対しての公開銀行決済である中央銀行の“ベイルイン”の場合、預金がカットされる可能性は不愉快な驚きとなりがちです。

 

Mian氏とSufi氏のリスク分担アプローチは、自己資本を高め、負債を少なくし、銀行の資金援助方法への変化も含めています。バーゼルルールへの変更は、住宅抵当貸付へのリスクウェイトを低くし、銀行が貸出の部分に対してより少ない資本を保有することを可能にするものです。

 

ニュージーランドではキャピタルゲインが毎年起こっていますので、こういったキャピタルゲインからの返済が十分可能ですね。

 

いずれにせよ、こういった大不況はいつ起こるか分かりません。その前に、各国の重要な投資対象である不動産には対策が求められます。

 

 

Author Profile

一色 良子
一色 良子Goo Property NZ Ltd. 代表取締役社長
元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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