ニュージーランドのウェリントン市は、賃貸住宅の品質を保証するため、任意のレンタルWOF(=賃貸適合認可制度)を立ち上げました。レンタルWOFとは、具体的にどのような制度なのでしょうか? 今回は、その概要を説明します。
家主に「自身の賃貸物件宣伝の機会」を与える
ウェリントン市は、最低限の住宅要件を保証するため、任意のレンタルWOF(=賃貸適合認可制度)を立ち上げました。
「私たちはウェリントンの賃貸物件の基準を引き上げ、より良い居住施設を人々に供給したいのです。
すべてのウェリントン市民が、暖かくて、湿り気のない住宅に住まう権利があります」とウェリントン市市長のジャスティン・レスター氏はいいます。
レンタルWOFの導入はニュージーランド初です。
ウェリントン市はオタゴ大学の公衆衛生の専門家と共に、家主が自身の賃貸物件が最低限の基準に適合しているか確認できる質問リストを作成しました。
市長はまた、「私たちは大学とパートナーを組み、居住者および家主が自身の住宅が専門家によって設定された最低限の衛生基準を満たしているかを確認できるアプリケーションを立ち上げ、プロによる徹底した検査による基準適合証明を家主たちが求められるようにします」とも述べています。
WOFの真の目的は、賃貸住宅の品質向上のみならず、家主たちに自身の賃貸物件が温かく、安全で、快適であることを宣伝する機会を与えることにあります。
レンタルWOFに合格するために必要なものとは?
家主または家主の許可を得ている居住者は、8月28日よりレンタルWOF検査をウェリントン市役所のウェブサイトから予約できるようになります。
家主たちは、自身の賃貸物件の差別化を図る上で適合認可が得られるよう、自身のプロパティ・マネージャーの助力を得たいと考えるでしょう。
ウェリントン市は建築検査官たちとパートナーを組み、建築検査官による1時間程で完了する査定が実施されるようなります。
同査定では住宅の合否が決定されます。
そしてレポートがEmailにて物件所有者またはプロパティ・マネージャーに通知されます。
もしこの検査で不合格となった場合には、基準に適合する為の改善を行い、無料の再査定を予約するまでに6カ月間の猶予があります。
また、WOFは3年間有効です。
費用は250NZドルです。
もしこの検査で不合格となった場合には、(適合化のための)修繕を行い、無料の再査定を受けるまでに6カ月の猶予があります。
ウェリントン市が実施するWOFによる質問は、家主が賃貸物件のチェック基準として、あるいは物件の改善を図る上で使用することができます。
レンタルWOFにはどのような質問あるのか、見ていきましょう(全29問)。
1.正常に動作する、安全なコンロおよびオーブンがあるか?(はい/いいえ)
2.食事を用意するための場所および食品の保管場所は適切か?(はい/いいえ)
3.お湯および冷水の飲用水が適切に供給されているか?(はい/いいえ)
4.お湯の(設定)温度は55度(±5度)か?(はい/いいえ)
5.トイレは正しく機能し、便座、タンク、水洗便所容器に亀裂や破損がないか?(はい/いいえ)
6.浴槽またはシャワーは適切に設置されているか、また正しく機能しているか?(はい/いいえ)
7.危険な薬物等を保管するカップボードまたは戸棚は子供の手の届かない位置にあるか?(はい/いいえ)
8.適切かつ安全で効果的な暖房があるか?(はい/いいえ)
9.浴室、キッチン、およびすべての寝室に換気口があるか?(はい/いいえ)
10.目視可能なレベルでカビが生えていないか?例えば、当該個所の総面積はA4サイズの用紙以下か?(はい/いいえ)
11.コンセント差込口、電気のスイッチ、配線に問題はないか?また、正しく機能しているか?(はい/いいえ)
12.適切な屋内照明が取り付けられているか?(はい/いいえ)
13.適切かつ作動中の煙検知器が取り付けられているか?(はい/いいえ)
14.窓に適切な掛け金が取り付けられているか?(はい/いいえ)
15.高い位置の窓には落下防止のためのセキュリティ・ステー(固定のための支え)が取り付けられているか?(はい/いいえ)
16.寝室およびリビングにカーテンまたはブラインドが取り付けられているか?(はい/いいえ)
17.ガラス戸に安全のための視認性ストリップが貼られているか(はい/いいえ)
18.WOF基準に適合する天上断熱材が使用されているか?(はい/いいえ)
19.WOF基準に適合する床断熱材が使用されているか?(はい/いいえ)
20.基礎部分に防湿層は設けられているか?(はい/いいえ)
21.家の壁や天井に雨漏りの痕跡、または湿気による水分染色はないか?(はい/いいえ)
22.家の修繕状態は妥当か?(はい/いいえ)
23.雨水および廃水は適切に排水されているか?(はい/いいえ)
24.縁の下に滞水はないか?(はい/いいえ)
25.玄関口を適切に照らす外灯はあるか?(はい/いいえ)
26.家の構造は安全か?(はい/いいえ)
27.屋内の階段および屋外の階段すべて、そしてバルコニーまたはデッキに現在の建築基準法に適合した手すりが付けられているか?(はい/いいえ)
28.住所が誰からもわかるように張り出されており、認識できるか?(はい/いいえ)
29.ドアにセキュリティ・ロックはあるか?(はい/いいえ)
WOFの認定を得た物件は、安全で快適ということが一目でわかるため、賃貸運営のリターンをより大きなものにする事でしょう。
Author Profile
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1982年、大阪女学院短期大学英語科卒業。カリフォルニア大学デイビス校留学。帰国後、旅行会社のツアーコンダクターに従事。1987年、ニュージーランドツアーの添乗を機に、移住希望を持つ。
1995年1月の阪神・淡路大震災を経験し、1996年に移住を実現。 自己の居住用物件さえあれば、落ち着いて生活ができると感じ、ワンルームマンション購入を実行。その経験を生かし、不動産業界に参入。当時インターネット環境が整いつつある中、日本語ウェブサイトを開設し、留学・観光・不動産投資についてのコンサルティングを始める。
現在、ニュージーランドの大手不動産売買仲介会社であるHarcourts New Lynn(ハーコウツ・ニューリン)支店にてセールスコンサルタントとして活動しながら、日本人のための投資コンサルタント会社Goo Property NZの代表として活躍中。
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