広大な農場を有するニュージーランドですが、最近、この農場を利用した「新たなビジネス」が話題になっています。今回は、NZの農場で生まれている「新たなビジネスチャンス」について具体的に紹介します。
農場主は、風力発電基地等への転用で収益獲得
農場の所有者たちは、ウィンドファーム(風力発電基地)やグランピング(オートキャンプ場)といった新たなビジネスチャンスのおかげで、さまざまな形で自身の農場から収益を得ることができるようになりました。
こうした革新的な収入源の登場により、ニュージーランド中の農場主たちが土地を基盤とする収益や酪農による収益への依存率を下げることができるようになりました。
増加傾向にあるアオテアロアへの観光客が、農場主たちがたとえば観光のような酪農以外の分野でビジネスチャンスを得ているのを目にします。
シンプルなファーム・カフェから、地下洞窟ツアー、ロッククライミング、ビジター用の宿泊施設まで、農場主たちが土地を使って収益を得出したその方法には様々あります。
「グランピング(オートキャンプ場)として知られるハイエンドなキャンピングスペースのように、農場のインフラにあまり手を加えなくて済む宿泊施設や、Airbnb.comのような宿泊サイトが増えている背景には、新たなベンチャー参入への敷居が低くなっていることが挙げられます。
道路の整備など、政府も後押しする「風力発電投資」
しかし農場内において酪農以外での収益を得る方法は、他にも風力発電基地という方法があります。
ニュージーランドには現在稼働中または建設中を含め、19のウインドファームが存在し、全体で690メガワットの発電力を有します。
ニュージーランドの年間発電量の約5%を供給し、さらに2,500メガワットの発電が許可されています。
ニュージーランドの風力発電委員会のチーフ・エグゼクティブであるグレンヴィル・ガスキル氏は、ニュージーランドはパリ協定の下、自国目標を達成せねばならないため、「脱CO2」に向けた努力が今後奨励されることになるだろうと述べています。
ウインドファームが設置可能な地域の土地所有者は、多くの恩恵を得ることができます。
彼らの土地へと続く道路や敷地内の通路の建設など、非常に多くの投資を得ることができるのです。
タービン(風力発電機)の小型化のおかげで彼らは土地の大部分を使い続けることができ、当然のことながらタービンの設置代として発電業者から土地の所有者に定期的に土地のリース代が支払われます。
ハミッシュ・オーモンド、ジュリー・オーモンド夫妻は、ハミルトンの西に位置するテ・ウク(Te Uku)に農場を持っています。
彼らの土地に設置されたタービンは、メリディアン社が運営する28機のタービンが設置されたウィンドファームの一部分を担っています。
夫妻は既にウィンドファームが設置された1,300ヘクタールの店舗敷地を購入し、その土地に設置された2.5機のタービンに対する収益を得ています。
ある不動産エージェントは、ウィンドファームはまだ一般的ではないものの、より多くの人々が持続可能エネルギーから得られる恩恵に気付き始めていることから、今後人気が高まるだろうと述べています。
「わたしは不動産エージェントとして13年間働いていますが、いわゆる「オン・ファーム(酪農に従事)でありながら、ノン・ファーム(酪農以外)による収益を得る」という形が今後一層理想的ととらえられるようになるでしょう。
より多くの人々が今後ツーリズムにチャンスを見出し、代替エネルギー・ビジネスがこれまで以上に認知され、あるいはさらなる収益源が求められるようになることでしょう」
こうしたオン・ファームでありながらノン・ファームによる収益を得ている人々が増え、新たな土地活用のビジネスが生まれています。
それらの土地を売却するときには、新しい付加価値を付けてキャピタルゲインを得ることができるのです。
Author Profile
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1982年、大阪女学院短期大学英語科卒業。カリフォルニア大学デイビス校留学。帰国後、旅行会社のツアーコンダクターに従事。1987年、ニュージーランドツアーの添乗を機に、移住希望を持つ。
1995年1月の阪神・淡路大震災を経験し、1996年に移住を実現。 自己の居住用物件さえあれば、落ち着いて生活ができると感じ、ワンルームマンション購入を実行。その経験を生かし、不動産業界に参入。当時インターネット環境が整いつつある中、日本語ウェブサイトを開設し、留学・観光・不動産投資についてのコンサルティングを始める。
現在、ニュージーランドの大手不動産売買仲介会社であるHarcourts New Lynn(ハーコウツ・ニューリン)支店にてセールスコンサルタントとして活動しながら、日本人のための投資コンサルタント会社Goo Property NZの代表として活躍中。
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