不動産投資において、物件のデューデリジェンス(物件査定)は必須です。しかし、具体的にどのような手順で行えばいいのか、分からない人も多いと思います。そこで今回は、NZ物件のデューデリジェンス(物件査定)の進め方を見ていきます。
物件調査を行えば行うほど、購入後のリスクは減少
不動産投資家には、物件を査定し、自身の期待に沿うものであるか否か、条件にあった結果が得られるか否かを見極める知識が必要です。
こうしたスキルの習得には大変な時間を要し、物件に応じて様々な角度からの調査が必要となります。またそれと同様に、すべての物件で行うべき専門的な調査もあります。
もし魅力的な物件が見つかり、条件に合致する場合には、できるだけ早く契約を結ぶことをお奨めします。
その物件の販売がテンダーまたはオークションによる場合には値段交渉は難しいですが、それでも条件が合致する場合は、できる限り早く契約を結びましょう。
そうすることで、物件をいわば自身のコントロール下に置き、コンディショナル・ピリオド(※契約後に買主が物件調査などの条件をオファーに盛り込むことのできる期間)中のデューデリジェンスが完了するまで、あるいは同期間が終了するまでの間は、その物件が他の誰かにオファーされることはなくなります。
可能であれば、売買契約の条件に一般的なデューデリジェンス条項を付け加えることをお勧めします。
これにより契約が非常に自由度の高いものになり、いかなる理由によっても他者からの購入を取り止めることができるようになります。
調査を行うほどに、購入後のリスクが減少しますので、契約段階に入り次第、物件調査を開始します。
自分で行う場合、まずは自治体の公的記録を閲覧
①あまりお金をかけずに自分自身で調査を行う。
●自治体の公的記録を閲覧し、すべてにおいて承諾が得られていることを確認する
手始めに自治体が所有している物件に関する共有ファイルを閲覧し、物件を訪れた際に目にしたことと公認記録に記載されている内容とが合致し、すべてが承認を受けており、物件が自身の購入条件に満たしているものであることを確認しましょう。
●賃料評価の入手
物件を賃貸運営とするかどうかを決めることは大切です。物件の購入後に利用したい賃貸マネージメント会社に行きましょう。
●賃貸契約書および賃貸証明書の入手
売主または不動産業者から最新の賃貸契約書の写しを入手し、物件が短期賃貸契約となっているか、あるいは期限付き賃貸契約となっているか確認できます。もし期限付き賃貸であれば、即時入居可能な状態での受け渡しは期待できません。また、期限通りに家賃が支払われているかを確認することもできます。
●賃貸人に話を聞く(賃貸物件の場合)
賃貸人からその物件に住まうことを好んでいるか、または欠如しているものはないかといった情報を得ることができます。
●隣人と会話する
隣人と会話し、物件の購入を検討中であることを伝えることで、物件およびその地域に関する多くの情報を得ることができます。
●物件の所在地域をドライブし、夜間または平日に再度物件を訪れる
その地域および物件をよりよく知るようにしましょう。
●建築士に物件を見てもらう
専門的な建物調査にはおよそ1,000NZドルかかります。もしあなたが自信をもって信頼できる建築士がいるのであれば、彼らに物件をみてもらい潜在的な問題点を挙げてもらうとよいでしょう。勿論、ビルダーズ・レポート(建物調査報告書)を依頼することもできます。早い段階での致命的な問題点の特定が可能になります。
●評価(額)と保険
市の公式HPにて物件の評価額を確認し、保険会社(または仲介人)まで保険の見積りを取り寄せましょう。これによって物件の財務分析が容易になります。
専門家に調査を依頼する場合は、費用の確認を
②専門的に調査を行う
さらに調査に時間をかける場合は、デューデリジェンスにはお金と時間がかかるため、コンディショナル・ピリオドの時間に基づいて算出した経費で、主だった懸案事項の調査から着手しましょう。
●LIM(土地情報摘要書)の入手〜予算400NZドル
LIMは地方自治体から入手でき、土地や未取得となっている建築許可について多くの情報を得ることができます。また、これには市の公文書保管所で物件の追加調査を行うことで得られる情報も含まれています。LIMの入手には10稼働日ほどを要します。
●PIM(プロジェクト情報摘要書)の入手〜予算400NZドル
PIMは地方自治体から入手でき、建築許可が必要なすべての建設作業に関する情報が記載されていますが、入手までに20稼働日を要します。
●弁護士による権原の有無の調査および売買契約書の確認–完全な購入取引を行う〜予算1,000NZドル
物件の権限が、地役権、手続き差し止め請求、および債務の点において問題がないか確認しましょう。そして土地が自由保有権付き(フリーホールド)の土地なのか、借地保有権付き(リースホールド)の土地なのかも確認しましょう。また、市費が追加投入されるロードリザーブ(道路建設予定地/および関連施設などを建てることを目的とした土地)の有無を確認しましょう。
●建物検査〜予算1,000NZドル
建物検査を行うことで、水密性数値を含む物件の詳細な検査結果のレポートを得ることができます。実施会社によっては問題点の修繕費用の見積もりも提供してくれます。どのような物件であれ、何かしら必ず問題が見つかると考えましょう。
●エンジニア・レポート(建築技士によるレポート)〜予算1,500NZドル
物件が安全性に疑いのある土地にある、または傾斜地にある、あるいは2階建て以上の場合、エンジニア・レポートを取得して建物の基礎および主だった構造物(バルコニーやデッキ)が現在の建築要件を満たしているか確認しましょう。もし要件を満たしていない場合、是正費用は果たしていかほどになるでしょうか。
●地質調査レポート〜予算1,000NZドル
物件が安全性の疑わしい土地に建てられている場合、地質調査レポートを依頼して、物件の地下および周囲の土地の適合性の確認を行うことを検討しましょう。
●建設作業すべての見積りを取る
リノベーションを計画する場合は、追加作業すべての予算を組み、算定結果が期待通りとなるようにしましょう。また、計画には建設作業の開始と終了のタイミングも含めましょう。
●メタンフェタミン「P」検査(=通称「P」という薬物の検査)〜予算400NZドル
「P」薬物検査を実施し、物件が薬物に汚染されていないことを確認にしましょう。
●物件査定〜予算700NZドル
査定を行うことにより、購入希望の物件に対し必要以上に支払うことはなくなります。契約中の物件の用途について決して不動産鑑定士(=査定の専門家)に教えてはなりません。また、不動産鑑定士と話すことで、その会話の中からリノベーション完了後の物件価値、または新たな賃料をいかほどにできるかなどのヒントを得ることができる場合があります。
上記のリストは完全なものではありませんが、リスクの軽減と物件が自身の満足のできる物件かを確認する上で十分役立つでしょう。
想定外の問題が見つかった場合や、想定以上にその修繕費がかさむ場合には、その分の割り引き、あるいは見つかった問題点の是正措置を求めて売主と交渉することができます。
もし交渉に失敗しても契約を取り止め、次の取引相手へと進むことができます。
そしてその時に、デューデリジェンスにはお金をかけただけの価値があり、そのおかげで多額の損失を被らずに済んだことを知ることとなるでしょう。
売買契約を締結するのであれば、物件が入手できた際に行いたいことすべてのチェック項目を作成しましょう。
<まとめ>
デューデリジェンスは多忙を極めるため、開始する前にどれだけの時間を要するかを知っておくことが重要になります。
また、物件によってはその他のチェックを行う必要もあるでしょう。
Author Profile
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元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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