
ニュージーランドでは今後、かつてない速さで人口増加が進むと予想されています。今回は、ニュージーランド各地域の「人口増加」の最新動向について、具体的に見ていきましょう。
1970年代中期以来、最も速いペースで進む人口増加
データ分析会社は、ニュージーランドでは主な自国中央都市の商業地区の外からの人口流入によって、かつてない早さでの人口増加が予想されると発表しました。
先日にリリースされた「リージョナル・ホットスポット(Regional Hotspots)2016」のレポートにあるインフォメトリックス(計量情報学)では、ホブソンビルが2023年までの10年間に254%の人口増加という未曽有の経験をすると予測しています。
そしてクライストチャーチの南西部の人口増加率は105%、そしてパパモアの人口増加率は74%に達しました。
これが意味することは、ニュージーランドの人口がこの1年間に2.1%以上増加しており、これは1970年代中期以来最も早い増加速度であり、多くの場合、こうした地域は都市部の成長と、市や町の人口が見合うようにしようとする自治体が開発対象となっているため、急速に人口が増加している、ということです。
インフォメトリックスでは、人口増加がみられる主な地域として以下を挙げています。
[図表]ニュージーランド内の人口増加地域
地震の影響から、人口が減少している地域もあるが…
<カイコウラ>
インフォメトリックスの主任予報官であるガレス・キーマン氏は、カイコウラの人口が今後18カ月間の間に18%減少するとしています。この地域では、2016年11月14日未明に起きた地震の影響で、現在も余震が続いています。
大規模な輸送およびインフラへのダメージを挙げ、必要な復興作業の半分が完了するのに2年以上はかかるだろうとキーマン氏は述べています。
ただ、クライストチャーチの復興作業が終わりに近づいているため、オークランドとは対照的に、多くの業者が次はカイコウラを目指すことになるでしょう。 そしてカイコウラで行われる多くのインフラ集中工事は、オークランドでの住宅建築作業とは作業内容が異なるため、業者を巡って両地域が競合となることはありません。
<オークランド>
キーマン氏は、自身のホブソンビルについての予測を解説する中で、次のように述べています。
「人口増加は比較的緩やかですが、同地域での新たな住宅供給が拡大するにつれ、人口増加は加速していくでしょう。約8,000戸の住宅建築がホブソンビル地域の住宅特区で計画されており、内7,400戸がホブソンビル・ポイント内に建築されます」
「オークランド都心部については、富裕層を狙った開発が計画されているウォーターフロント(海岸地区)、特にウィンヤード・クオーターにおいて人口増加が予測できます」
「郊外の集合住宅建設を伴う形での都市部の開発に多くの注目が集まっていますが、CBD(中心業務地区)の開発規模と今後10年間に予測される都心部の人口増とを比較すればまだ供給は頼りないといえます」
「過去10年間の最初の5年間に都心部でアパートメント開発が大々的に行われましたが、オークランド都心部の人口は2001年国勢調査時の24,100人から2013年国勢調査時の49,400人と、2倍に膨らんでいます」
「2030年に予定されている第2のハーバー・ブリッジがオレワとアルバニーを結び、地域の魅力が一層増すこととなり、海岸周辺物件の高価格体質は、オークランド北部で増え続ける人口がもたらす可処分所得および購買力が、オークランド全体よりも高いことを意味しています」
<ワイカト/ベイ・オブ・プレンティ>
キーマン氏は、人々がオークランドから周辺地域に流出することで起きる「ハロー効果」があると述べています。
「北ハミルトンは、TheBaseショッピングモールやハイウェイの開発に加え、オークランドに近接している点などの理由から開発業者および物件バイヤーに注目されており、地域の若年層は、裕福な者ほど、今後10年間にビジネスの発展と開発が大きく進むだろうと考えています」
「また、ベイ・オブ・プレンティについて、これまで定年後を過ごす場所であったタウランガが、より広く発展した都市へと変貌している。また、パパモアの成長が南タウランガの成長を超えると予想しており、これは昨年完成したタウランガ・イースタン・リンク、およびビーチに近接したパパモアの立地が要因です」
<ウェリントン>
キーマン氏は、ウェリントン都市部の人口について、以下のように述べています。
「2011年のクライストチャーチ地震以来、ウェリントンのオフィス市場にはまた別の変化があり、高級で耐震性が備わった安全なビルに強い需要がある一方で、そうでない低級のビルではテナント離れが進んでいます」
「また、各政府機関による物件強化策と、修復または性能向上が済んだ建物に移ったことで、やや低級の余剰物件は2016年にさらに増加しました」
「通常、こうしたオフィス物件からオーナーが得られる収益はアパートメント経営による収益を上回ります。その結果、今後5年間にアパートメント経営から、テナントの耐震性強度要件に適ったビルへの転向が予想されます」
「ウェリントン都心部の人口は2016年6月までに6.1%上昇しましていますが、これはアパートメント物件のリニューアルの波が既に押し寄せていることを示しています」
<カンタベリー>
キーマン氏は、2003年から2013年の国勢調査で33%減少した都心部の人口は、今後5年から10年間に増加が加速することが予想されると述べています。
「都心部では収益性のあまりない商業オフィスはアパートメントに変わり、居住用および商業用ビルの比率が変化するでしょう。中央政府と大企業が都市に回帰しています。都市部の賃料の高騰から以前の商業目的の賃貸は鈍化するでしょう」
「2011年のクライストチャーチ地震以来、人口が横ばいであったこと、そしてロールストン、ウィグラム、プレブルトン、リンカーン、ハルスウェル周辺の住宅開発も人口増加の要因です」
<オタゴ>
キーマン氏は、オタゴについて以下のように述べました。
「レポートで挙げているホットスポットの中でも、オタゴ都心部の人口密度は群を抜いて低くあります。クイーンズタウンの人口増加地域は、ジャックス・ポイントの700か所の住宅地とハンリーズ・ファームに計画されている2000か所の住宅地のある東部と南部に密集しています」
「しかし、クイーンズタウンの高い住宅価格が、今後も人々をアロータウン、ワナカ、クロムウェルへと追いやるでしょう」
最新レポートによる人口動向が、不動産価格にどのように影響をするのか、今後も注目したいと思います。
Author Profile

- Goo Property NZ Ltd. 代表取締役社長
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1982年、大阪女学院短期大学英語科卒業。カリフォルニア大学デイビス校留学。帰国後、旅行会社のツアーコンダクターに従事。1987年、ニュージーランドツアーの添乗を機に、移住希望を持つ。
1995年1月の阪神・淡路大震災を経験し、1996年に移住を実現。 自己の居住用物件さえあれば、落ち着いて生活ができると感じ、ワンルームマンション購入を実行。その経験を生かし、不動産業界に参入。当時インターネット環境が整いつつある中、日本語ウェブサイトを開設し、留学・観光・不動産投資についてのコンサルティングを始める。
現在、ニュージーランドの大手不動産売買仲介会社であるHarcourts New Lynn(ハーコウツ・ニューリン)支店にてセールスコンサルタントとして活動しながら、日本人のための投資コンサルタント会社Goo Property NZの代表として活躍中。
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