現地不動産屋が教えるニュージーランド移住&投資ガイド
Currency Rate1NZDJPY 91.08 USD 0.589 2024年04月20日 05:39 AM  更新

NZで新たに導入された「住宅ローン貸付規制」

2016年11月18日

連載コラム 一色 良子

セミナー ローン 住宅 投資

10月1日より「住宅ローン貸付規制」が新たに導入されたニュージーランド。この規制によって、住宅購入者、投資家はどのような影響を受けるのでしょうか。データをもとに見ていきましょう。

 

規制によって、オークランドの住宅価格はわずかに下落

interest.co.nz社の9月の住宅ローン返済能力に関するレポートによれば、住宅投資物件に対する新たなLTV住宅ローン貸付規制により、オークランド住宅価格がわずかに下げました。しかし他の地域ではその規制の影響を受けることなく、住宅価格は強く伸び続けています。

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10月1日に正式に準備銀行により、この新たな住宅ローン貸付規制が導入されましたが、この2カ月ほど前には既に大半の大手銀行によって導入されていました。

この規制により、8月には最高値の69万5,600NZドルを付けた下位25%の価格帯物件が、9月には68万2,100NZドルまで下がったため、オークランドの初回住宅購入者らは一息ついています。

下位25%価格帯は、消費者および投資家にとってのプライス・ポイント(=魅力的な価格帯)であり、初回住宅購入者および投資家らの購買活動が最も活発なマーケット・セグメントを成しています。

オークランドの住宅ローン返済能力に関するレポートは、下位25%帯の価格のわずかな下落と、2年間固定住宅ローン利率のわずかな切り下げが重なったことにより、週当たりの住宅ローン利子の支払いがオークランドで初めて住宅を購入した一般的な夫婦の場合で16ドル減少し、705.60NZドルになるだろうと予想しています。

仮にそうであったとしても、共働きで25歳~29歳の平均収入を得ている夫婦がオークランドで住宅を購入した場合、手取りの44.5%を支払いに充てることになるでしょう。

[図表1]共働きの若い夫婦が支払う週当たりの住宅ローン利子

63-2

 

不動産投資家が目をつけた「地方の物件」が高騰

住宅ローンの支払いは手取り収入の40%までが支払い可能と考えられています。つまり、オークランド物件は初回住宅購入者にとっては未だ高嶺の花であることには変わりはありませんが、下位25%の価格帯物件の購入ですら手取りの45.6%を支払いに充てる必要のあった8月に比べれば、わずかに手が届きやすくなったといえます。

9月にローン支払い能力に改善がみられたのはサウスランドのみであり、下位25%の物件価格は8月の15万7,900NZドルから15万3,700NZドルに下落し、2月に付けた最高値の16万5,300NZドルを大幅に下回っています。

しかし9月には下位25%の価格帯の物件はその他のすべての地域で上昇し、ノースランド、ワイカト、ベイ・オブ・プレインティ、ホークスベイ、タラナキ、ウェリントン、ネルソン、マルボロ、カンタベリー、セントラル・オタゴ・レイクス、オタゴで最高値が更新されています。

これは、これら地域における初回住宅購入者のローン支払い能力の低下を意味しますが、下位25%の価格物件のローン支払いが一般的な初回住宅購入者の手取り月収の40%以下である間は、全体的には未だ支払い可能な水準にあるといえます。

下位25%の物件価格が最も強く伸びたのはウェリントンで、8月の36万1,800NZドルから9月には39万2,500NZドルに上昇しました。

これはローン支払い能力に大きく影響します。一般的な初回住宅購入者による下位25%の価格帯物件の住宅ローンの支払い額は、手取り月収の22.8%にまで上昇するだろうと予測されています(※8月時点で20.79%)。

住宅ローン返済能力に関する報告書が示す傾向は、interest.co.nz社の過去数週間のオークション販売に関する報告書が示すパターンと合致しており、オークランドの投資アパート物件の販売が以前に比べ難しくなっていることを示しています。

購入物件価格に対し40%の預託金が購入要件であることから、投資家たちがオークランドの投資対象物件の購入に苦戦しており、代わりに地方の安価な物件購入に投資家たちが流れ、その結果地方の住宅価格の高騰を招いています。

多くの投資家が住宅物件から得られる家賃収入よりもキャピタルゲイン求めており、オークランドで手軽に得られるキャピタルゲインが減少、あるいは見込めないと感じれば、オークランド市場を避けるようになるでしょう。

投資家たちとの安価な物件を巡る競争がやや軽減されることから、初回住宅購入者にとってこれは良い知らせといえるでしょう。

しかしながら一カ月だけの販売データから傾向を掴むことはできず、これは住宅市場における夏の商戦のまだほんの始まりに過ぎません。

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今回のオークランドの下位25%の価格帯物件にみるわずかな価格下落が、はたして今後の下降、または停滞の始まりを暗示するものなのか、あるいは再度の上昇を示す兆候なのかはまだわかりません。

傾向を掴むには少なくとも2カ月の販売データが必要です。引き続き、住宅価格の動向に注視していきたいと思います。

[図表2]初回住宅購入者の取得能力

63-3

interest.co.nzより

Author Profile

一色 良子
一色 良子Goo Property NZ Ltd. 代表取締役社長
元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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