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Currency Rate1NZDJPY 91.08 USD 0.589 2024年04月20日 23:20 PM  更新

「6月期のGDP」から見るニュージーランド経済の展望

2016年10月7日

連載コラム 一色 良子

GDP インフレ 投資

成長を続けるニュージーランドですが、6月期のGDPはエコノミストの予想をやや下回るものとなりました。今回は、この問題に対するエコノミストの反応を、より詳しく見ていきましょう。


GDP成長率は伸びたものの、専門家の反応は冷ややか

ニュージーランドの6月期の国民総生産(GDP)は、主に強い建設業と家庭消費に支えられ、3月期より0.9%伸びましたが、2.0%の人口増加率が加味された年間成長率の3.6%という数字は、一人当たりのGDP成長率にして0.7%であり、この結果は、6月期の成長率を1.1%程度とみていたエコノミストたちの予想を、僅かに下回るものでした。

外国人旅行消費の1.7%の落ち込みも影響しています。この一人当たりのGDP成長率は予想と一致するものでしたが、NZドルはこの結果を受け、20ベーシスポイント程下げて72.8米セントをつけました。

この数字は輸出の7.6%の伸びにも支えられており、これについてニュージーランド統計局(Statistics New Zealand)は、この一部が3月期中に行われた在庫減少の立て直しによるものであるとしています。6月期の建設業は5.0%伸び、家庭消費は1.9%の伸びをみせました。また、国内総支出(GDE)は1.2%で、GDPの0.9%を上回りました。

 

[図表1]ニュージーランドの6月期の国民総生産

57-2

 

6月期のGDPは昨年度同期よりも3.6%高く、一人当たりの実質GDPは0.5%伸び、昨年度からは0.7%上昇しました。3月期の0.9%のGDP成長率は、0.7%から上方修正されています。昨年6月からこの6月までの1年間の成長率は2.8%であったのに対し、一人当たりのGDP成長率は0.7%でした。

ニュージーランドの交易条件に基づく、購買力指数を示す一人当たりの実質国民総所得(RGNI)は6月期には0.1%下げたものの、3月期には1.5%に上方修正されています。また、この1年間のRGNIの成長率は0.5%でした。

 

残る低インフレ問題…さらなる金融緩和の可能性も

エコノミストたちは、予想を超えた旅行者の消費落ち込みが一因となり、6月期の結果は予想よりも僅かに下回ったとしながらも、3月期の上方修正によって相殺されるとしています。

ASB銀行のニック・タフリー氏は、以下のように述べました。

「全体的に上昇し、年間成長率はニュージーランド準備銀行の8月の金融政策声明(MPS)での発表を実質的に上回っていました。この結果は、準備銀行がこの11月に追加緩和を実施した場合、来年の政策金利(OCR)の1.75%以下への切り下げさせる要因になる可能性があります」

「しかしながら、強い成長にもかかわらず依然インフレが低いままであることを考慮すれば、来年更なる追加緩和がなされることが十分予想され、インフレ指標は低いままとなるでしょう。また、11月に準備銀行がOCRを1.75%に切り下げるともみています」

「ニュージーランド成長の潜在的推進力は2016年上半期を大きく押し上げ、第二四半期のGDP指標が示す以上のものになる可能性があると私たちはみています」

「これらが非常に心強くある内は、現在準備銀行が焦点を当てている低インフレ問題が残ることから、さらなる追加緩和が行われるだろうと予想しています」

 

[図表2]ニュージーランドの年間成長率

57-3

また、ウエストパックのマイケル・ゴードン氏は、このデータは準備銀行が予想するものだったとしています。さらに以下のようにも述べました。

「GDP成長率が僅かに低かったものの、第一四半期(3月期)に上方修正があったため、今日のデータには準備銀行による追加緩和の実施タイミングに関するわたしたちの予想を変える要因はほとんどありませんでした」

「予想される供給能力への圧力(capacitypressure)およびインフレ圧力は、今日のデータを受けての予想と大まかな点で合致しています」

堅調なGDP成長を確実なものにする事と、インフレ率2%に引き上げるため、政策金利引き下げの圧力は強まるものと予想されます。

Author Profile

一色 良子
一色 良子Goo Property NZ Ltd. 代表取締役社長
元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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