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Currency Rate1NZDJPY 92.66 USD 0.596 2024年04月26日 07:55 AM  更新

不動産を持たない若年層を苦しめるNZの「土地利用規制」

2016年8月1日

連載コラム 一色 良子

土地 地価 海外不動産

現在ニュージーランドでは、都市部近郊に適用されている「土地利用制限」によって、貧しい若者が増加傾向にあります。なぜこのような事態になっているのか、理由を見ていきます。

 


 

景観維持などを目的とした規制によって「地価」が上昇

主だった政党の大半が都市境界の開発を取り止めたいと考える中で、土地利用規制はこの数週間の間、非常に多くのニュースで取り上げられました。

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成長中の都市で住宅地の供給を制限すれば何が起こるか。それは地価の上昇です。地価の上昇は、都市の開発拡大を制限することや、高さ制限により、起きると考えられます。

7月の後半に独立聴取小委員会が推奨する内容は、オークランド・ユニタリー・プラン(オークランド市都市開発計画)になるため、民衆の主な議題は、高さ制限に向くことが予想されます。

オークランドの都心部近郊に適用されている既存の高さ制限にどのような変化をもたらすのかはまだ分かっていませんが、グラタン・インスティテュートの調べによって、確実に言えることは、現状の規制による効果についてです。

このシンクタンクのリサーチにより、オークランドの都心部では数多くの仕事が生まれている一方、大半の住宅建築が都市境界で行われているという大きな不均衡があることがわかりました。

[図表]都市部から離れた都市境界(青い部分)に追いやられる若者

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都心部に仕事が集中する原因は、近代経済がサービス部門に大きく根差しているためであり、それが都心部近郊の価値を高めています。そして住宅建築が都市境界に集中するのは、都心部での建設を規制し、代わりに都市境界での住宅建築を後押しするといった限定的な土地利用方針がもたらした結果です。

その結果、都心部へのアクセスを重視する若年層を、住宅価格の手頃な都市境界へと押しやることで、公共交通機関による都市への通勤が長時間になり、仕事を得ることが難しくなっています。

これは若年所帯には特に深刻な問題です。グラタン・インスティテュートの調べにより、仕事と育児の両立が困難であるために、多くのひとり親家庭が労働市場からドロップアウトしていることが判明しました。

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若年層から不動産を持つ高齢層へ多くの富が集中・・・

オークランドでこれらの土地利用を限定する規制は、ほぼ全都市における住宅供給を激しく抑圧し、土地代を押し上げる結果となりました。

その結果、若年層から不動産を所有する高齢層へ多くの富が移ります。グラタン・インスティテュートは、オークランドでは今、財政赤字と資産価値を計算に含めると両親よりも貧しくなる世代が出現しているとしています。

こうしたサイクルは個人に対してだけでなく、より広い意味合いにおいて経済的にも、社会的にも悪影響を及ぼします。

都市こそが近代経済成長の推進力であることはよく知られていますが、土地利用制限により生じる若年層の生活拠点と勤務地との間のギャップがその推進力に陰りをもたらすことになるでしょう。また同時に、高齢世代が引退することにより、この貧しい若者世代がその分の税負担を強いられるのです。

グラタン・インスティテュートのリサーチ結果は、都市における住宅建築に向けた土地の解放することが必要不可欠であることを示しています。

このリサーチ結果が強調している点は、土地市場における効率性をあげて、不当な費用負担を若者世代に課すような不当な規制から、土地市場を解放することです。つまり、都市の成長を妨げる土地利用規制や高さ制限から都市を解放するということです。

これらのリポートから、土地規制や高さ制限への規制緩和の圧力が高まり、より広範囲における住宅開発が進められ、移民による住宅不足解消が一層進むことと予想されています。

Author Profile

一色 良子
一色 良子Goo Property NZ Ltd. 代表取締役社長
元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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