ニュージーランドで不動産売買を成功させるには、なぜニュージーランドには「引越しシーズン」があるのか、また、どのような住宅が、どのような理由で好まれるのかを知る必要があります。
NZのクリスマスは雨の少ない「引越し日和」の日
第12回の連載で、ニュージーランドの人々は、クリスマス前に新居に引越する希望が多いということをお話しました。この時期になると、引越しもいよいよラストスパートです。オークションで希望する家を買えなかった方は、クリスマスは現状維持で過ごし、新年に再挑戦します。
「どうして年末までに引越を?」と、不思議に思われるかもしれませんが、ニュージーランドは日本と季節が逆であり、この時期が春・夏なのです。雨も少なく、引越日和であることも理由のひとつだと考えられます。
家の売買希望者、不動産業界ともに忙しい時期ですが、建築業界もラストスパートで動いています。この業者確保がまた難しく、腕のいい「売れっ子」の大工さんには予約が殺到してしまうため、なかなか思うように改装工事が進みません。
家の改装予定がある方は、1年前から半年前に業者を確保しておかないと、地域によっては年内の工事完成が難しくなります。
とはいえ彼らもビジネスですから、掛け持ちで工事を行い、アルバイトや下請け的な業者を探して対応します。それでも終わらない場合は、まずキッチンとリビングを完成させ、その他は年明けに・・・といった工夫をしながら工事を進めるのです。
なぜキッチンとリビングなのかといえば、ホームパーティーが多いニュージーランドでは、友人や親戚が集まるバーベキューパーティーが盛んな時期だからです。
クリスマス前後の数日と1月1日こそ祝日ムードですが、日本のお正月とは違い、1月2日以降は普段と変わらない夏の1日となります。新居に引越し、悠々と夏のホリデーを楽しむ家族がいる一方で、まだ引越作業も落ち着かず、改装工事が終わらない家には、1月2日から工事をしてくれる大工さんもいます。
このシーズンを新しい家でのんびり過ごせるか、それとも工事がまたいでしまうか・・・明暗を分けるのは、物件選択の「スピード」と「決断力」といっても過言ではないでしょう。
住む人々のルーツにより、好まれる家の構造も異なる
北半球のホワイト・クリスマスもいいですが、南半球の夏のクリスマスも粋なものです。
ビーチで泳ぎ、庭やデッキでカクテル&バーベキューパーティー。食べて、飲んで、おしゃべりして・・・1年で一番忙しく、楽しい時期でもあります。会社関係のパーティーはバンケットルーム、サークルグループならどこかのレストランやホテルで開催されますが、ファミリーや友人関係は、自宅でのホームパーティーです。
そのため、キッチンにはアイランドカウンターやL字型に広いベンチを置き、必ずオーブンレンジが備えつけられています。そこで肉を丸ごとローストにし、スライスして、デッキや庭で食べるのが定番です。
このように、多くのニュージーランド人のライフスタイルにマッチした自宅とは、キッチン、リビングを通り、フレンチドア(全面開閉できる引きドア式)を開け、デッキや庭へ続く動線のあるレイアウトです。
しかし、アジア系の開発会社が建築した新築物件では、そういったアウトドアな生活習慣を考えず、リビングからデッキに出るドアを作らずに、壁と普通の窓を設置しているケースが多くあります。そのため、デッキや庭に出るために、裏をぐるりと廻らないといけない構造になってしまうのです。
ニュージーランド人はすぐそれに気がつき、「ホームパーティーがやりくい」という理由で購入を却下します。
一方、アジア人は屋外での飲食をせず、キッチン&ダイニング、あるいはリビングルームで団欒する方が多いため、このような構造の家を選択します。
国が違えば文化が異なるもので、日本人からは「バスタブがないといやだ」という声を聞きますが、シャワーだけで過ごすニュージーランド人にとって、バスタブがないからその家を選択しないというケースは、あまりありません。特に市内中心のアパートメントには、バスタブの設置がない部屋も多くあります。
国際都市、他民族都市のオークランドでは、習慣・文化が異なり、住宅の面でも感覚の違いが見えてきますので、物件売買の際はこれらも考慮してください。
昔、日本人の家主ご自慢の、掘り炬燵を設置した和室のある家が販売されていました。海の景色が見え、部屋のサイズもロケーションもよく、気に入る方が多かったのですが、「この和室は使えない」の一言で、購入に至りませんでした。
他の条件がいいのだから、この一部屋くらい改装すればいいのに・・・と、当時の私は思ったのですが、なにしろ家主自慢の和室なので、「このよさを理解してくれる方に売りたい!」との一点張りでした。
そして粘った結果、韓国人の家族に購入していただきました。やはり、アジア人同士好みが合うのだな、と感じた、思い出深い売買の例でした。
何気ないポイントですが、「万人に合う形での家造り」と「特殊性を生かした家造り」の物差しが、どのように判断されるかで成功率が変化するのが、オークランドの住宅売買事情なのです。
Author Profile
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元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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