現在のオークランドでは、何千ものアパートメントが建設されていますが、その多くは既に売約済みで、供給が需要に追い付かない状況にあります。 不動産広告には、毎回のように新規アパートメントが掲載されていますが、その多くはオフ・ザ・プラン(完成前の物件)での販売です。今回は、それらが建設されている場所、売れ行き、買い手について見ていきます。
今後3年間で約6000棟の建設という予測もあり
オークランドのヴァイアダクト地区は、新興住宅地で溢れています。今、90年代後半に始まった第一期ブーム、それをさらに上回る2005年第二期ブームに続く、第三期近代アパートメント建築ブームの途中であり、今後3年間で6000棟程の新築アパートメントが建てられると予測されているのです。
このブームによって、来年には約3,200棟のアパートメントが生み出され(2005年の3,700件に迫る)、今後さらに増え続けると予想されます。
●「どこ」にアパートが建てられているのか?
以前の建築ブームは、CBD(中央商業地区)の開発が中心でした。2005年頃のブームは留学ビザの認可が激増したことがその一端を担っており、それが多くの「靴箱」型アパートメントが産み出しました。開発がCBDに集中した前回のピーク時とは異なり、来年はCBD、都市周辺、郊外に渡って開発が進むと予想されています。
最初のオークランド市内のアパートメント調査報告では、18カ月間のアパートメント建築は今後、CBD(中央商業地区)で17%、都市周辺で45%、そして郊外で57%、それぞれ上昇すると予測しています。
オークランドのCBDは、高速道路網に囲まれた開発の中心です。次にグラフトンや、ニュートン、ポンソビーなどの都市近郊を含む周辺地区(パーネルからニューマーケットおよびエデン・テラスはこの境界線の外)、そして西側からグレイ・リンやハーン・ベイと続きます。オークランド地域の、都市周辺の境界線に含まれない地域すべてが郊外地区に該当します。
●「どんな」アパートが建てられているのか?
【オークランド市アルバニー地区】
都市周辺および郊外に計画されているアパートは、平均して5階建てで、アルバニーのローズガーデン・アパートメントおよびニューマーケットの88ブロードウェイ以外にも、CBD(中央商業地区)では、現在も200室あまりを有するアパート開発が予定されています。
最近のCBDの集合型アパートメントの広さは、
★ワン・ベッドルーム・ユニット・・・45~60㎡
★ツー・ベッドルーム・・・70~90㎡
★スリー・ベッドルーム・・・90~120㎡
となっています。また、高級アパートメントでは、約100㎡のワン・ベッドルームから260㎡のスリー・ベッドルームが平均的です。
既存のCBDの在庫物件には、3,700棟の借地物件と14,200棟の自由保有物件が含まれますが、集合型アパートメントはそのほとんどが自由保有物件(借地物件は住宅所有者が居住権を持ちながら借地料を支払うというもので、年間の借地料はその地価に応じて定期的に見直されます)です。
しかし、ウィンヤード・クオーター地区での計画は例外的で、購入価格に建設開始から123年分の借地代が既に含まれているという近代的な借地権の仕組みが人気を集めています。
集合型アパートメントのトレンドには、緑のある柔軟なレイアウトを伴った自然な外観が人気で、ワンベッド・ルームに多目的な「自由自在」な部屋の広さは、これまでにもっとも狭いとされてツーベッド・ルームよりも狭いものになります。
●「いくら」ぐらいの物件価格なのか?
不動産評論家たちは、買い手が新築物件に中古物件以上のお金を払うことから、「オフ・ザ・プラン(完成前の物件)で購入したアパートメントには、既存物件以上の付加価値がある」と言っています。
オフ・ザ・プラン(完成前の物件)開発で、同様の価格設定のアパートメントは、その時々で価格が異なる場合があり、開発計画が実行可能になるよう、初期設定価格は若干割引かれることがあります。時折開発業者は、いくつかのアパートメントを確保し、相場が上がったところで売り、最大限の利益を得ようとします。
理想的な都市周辺の立地条件で「住み良い」と考えるアパートメントは、オフ・ザ・プランのワン・ベッドルームで50万NZドル、ツー・ベッドルームで80万NZドル、スリー・ベッドルームで100万NZドルで売りに出されています。
また、買い手は支払い義務のある共益費も考慮する必要があり、その大部分は、保険や外装修繕費など、一戸建ての所有者であれば支払うべき運営費を賄うために使われています。
アパートの販売率と不動産マーケットへの影響は?
●「販売率」はどの程度なのか?
物件価格の高騰、渋滞の悪化、都心部施設の改善がみられる中、オークランドのアパートメント物件の売れ行きは良好で、その多くがオフ・ザ・プラン(完成前の物件)で成約しています。また、今年の第一四半期に前売りされた847棟のオークランドのアパートメントは、同時期に販売されたオークランドの既存アパートメントの数をこの10年で初めて上回っています。
大半の集合型アパート開発の売り上げの半分程度が投資目的です。大勢のベビーブーマー世代が「広さを必要としない」年齢に達し、高級アパートメントを求めています。CBDおよび周辺地区の高級物件開発に関して、問い合わせ者の平均年齢は60歳前後ということです。また、初めて住宅を購入する人は、新築のオフ・ザ・プラン・アパートを購入して得られるメリットについて、次のように述べています。
「これはキウイセイバー ホームスタート・グラント(持ち家助成金制度)を最大限利用できて、二人でアパートメントを共同購入する際の頭金としてさらに2万NZドルを追加できるかもしれないのです」
初めて住宅を買う人の中には、10%の頭金でオフ・ザ・プラン販売のアパートメントを確保し、完成・入居までにさらに貯金し、市場の相場上昇でキャピタルゲインを得ようとする人もいます。
●「市場への影響」はどうなっているのか?
【オークランドCBD(中央商業地区)】
アパートメント開発による供給は、オークランドの高まる住宅需要をほんのわずかに満たしているに過ぎません。
6,400室のアパートメント建設計画があるとしながらも、内1,100室が学生用の宿泊施設となり、500室が開発業者の賃貸貸し用物件で、残りの4,800室の未開発物件の75%近くが既に売約済みであり、現在ではわずかに1,300室がオフ・ザ・プラン(完成前の物件)として販売されているのです。
この物件数と、オークランド人口が2015年6月までの1年間に3万人近く増加(国内実質移住人口のおよそ半分に相当)したことを比較してみると、現在のアパートメントの供給は、過去10年間の人口増加を辛うじてカバーしているに過ぎません。今のオークランドの人口増加は、これまでに増して記録的なものになっているのです。
Author Profile
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1982年、大阪女学院短期大学英語科卒業。カリフォルニア大学デイビス校留学。帰国後、旅行会社のツアーコンダクターに従事。1987年、ニュージーランドツアーの添乗を機に、移住希望を持つ。
1995年1月の阪神・淡路大震災を経験し、1996年に移住を実現。 自己の居住用物件さえあれば、落ち着いて生活ができると感じ、ワンルームマンション購入を実行。その経験を生かし、不動産業界に参入。当時インターネット環境が整いつつある中、日本語ウェブサイトを開設し、留学・観光・不動産投資についてのコンサルティングを始める。
現在、ニュージーランドの大手不動産売買仲介会社であるHarcourts New Lynn(ハーコウツ・ニューリン)支店にてセールスコンサルタントとして活動しながら、日本人のための投資コンサルタント会社Goo Property NZの代表として活躍中。
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