今年のニュージーランドの住宅価格は、低金利と供給不足による後押しで上昇傾向となっています。今回は、ニュージーランドの不動産価格の動向とその理由、また、今後の見通しについて解説していきます。
不動産市場の活況は地方へも波及
ニュージーランド住宅不動産市場の今年の販売件数は、昨年と比べてやや高止まりしており、低金利と供給不足による後押しによって、未だに根強い需要があります。
その投資の多くはオークランドに向けられてはいるものの、ニュージーランド全体に需要があり、ハーコーツ社の過去3か月間の全地域での売上高は昨年度を大きく上回りました。また6月から5月までに7,425件の住宅を売上げ、昨年度の同期間に比べ売り上げを27.5%伸ばしました。
主要な都市部以外のほとんどの地方地区で販売件数や販売価格に上昇傾向がみられますが、これは買い手がオークランド市場やカンタベリー市場から離れ、都市部から離れた地域の不動産を買い始めていることを示しています。
金利引き下げも住宅購入の重要なけん引材料となっており、移住人口増によっても、地方地区を含めた多くの地域では価格が維持され、上昇しています。
また現在では、地方物件を購入するオークランド住民が増えており、ワイカトやベイ・オブ・プレンティを含む中央地域では、2014年の6月に比べ、76.3%もの売り上げ増が記録されました。
オークランドでは、2015年10月1日、準備銀行によるローン資産価値比率(LVR)規制が施行されました。これまでの買い手は、ローン頭金として購入物件価値の20%の頭金が必要でしたが、今後は30%に変更されます。その一方で、地方地区のローン頭金が10%にまで緩和されたことを受け、より多くの潜在投資家たちが地方市場に目を向ける事になることでしょう。
しかし、準備銀行の低金利政策と移住人口増がオークランドの活況な不動産市場をさらに後押しし、今後もその勢いは続くと予想され、多くのオークランド住民がオークランドの自宅を売り、地方物件を購入し、初めて自宅を購入する人々もまた、地方へ移り住み始めています。
オークランドの不動産人気は低金利と移民増加が後押し
多くの人がこのニュージーランドという優良市場に投資しており、国内の売上高は引き続き7000件/月辺りで推移すると考えられます。新年には多くの留学生がやってくることから、オークランドのアパート市場は史上類を見ない程の需要を迎えます。日々の通勤に疲れた重役たちが職場に近い住居を求めるため、オークランド市内のアパートなどは根強い需要は今後も続きます。
最近、世界株市場の脆弱性が露呈し、中国経済が私たちの経済に及ぼす影響について多くの議論がなされていますが、一方で金利は下がり続け、移民人口は記録的な上昇をみせているため、住宅不足の解消には、相当な時間がかかると見られています。また、オークランドは世界で最も住みやすい都市ランキングでその順位を上げ続けており、政府の介入を除いては大幅な下落要因は見て取れません。
今後、世界経済や株式市場のパフォーマンスが険しい道を歩む状況下になり、他種の投資が不安定になったとしても、逃避先となる不動産に資金が移されることと予想されます。
Author Profile
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元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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