今回は、ニュージーランドの不動産投資家たちによる実際の経験をもとに、「良い物件を見つけるための考え方」「将来性を見極める着眼点」などをご紹介します。
30年間、成功を継続しているMさんのケース
30年にわたって最も成功している投資家のMさんは、1980年にオークランド市グレンフィールドの不動産投資を手始めに、これまでに45件以上の不動産投資を行ってきました。
長期投資家であるMさんは、ポートフォリオを組む上で明確な購入基準を設定しました。それは、「ロケーションがよく、将来性があり、Mさんにとって好条件で貸し出せる物件に投資する」というものです。
賃料で月々の支払いを賄える限り、収入にはある程度の余裕が生まれます。Mさんの主な収入は、上記の基準と、可能性を厳正に見極めた資産によってもたらされているのです。また、近隣の物件を複数買い、それをまとめて1つの大きなブロックとすることで、将来の総合開発に備えることも視野に入れています。
Mさんが初めて資産に興味を持ったのは、夫婦で海外暮らしをしていた頃でした。幼い子どもたちのために、安全で治安のよい場所に「わが家」と呼べる物件を探す必要があったのです。
当時、19%という金利にもかかわらず、2部屋の寝室がある物件の購入を決めました。週65NZドルの市場家賃を払い続け、やがて所有権が確立されると、それを元手にさらなる投資を行いました。
Mさんは成功を手にした今もなお、熱心な勉強家です。投資を志す人にたいして、「投資家たちの本を読むこと」「多くの人との情報交換を通じて自身の投資戦略を立てること」「専門家を探し、そのアドバイスに耳を傾けること」を勧めています。
以前Mさんは、1度だけ自身のルールに従わずに投資をしたところ、壊滅的な結果になってしまったそうです。アパートを購入したときに、「不動産賃貸管理マネージャーのアドバイスを得る」という、自身に課した宿題を怠ってしまったのでした。その結果、購入時の約25%の損失を出し、2度と同じ過ちを繰り返さないと心に決めたそうです。
Mさんは頻繁に自身のポートフォリオを点検します。不動産を巡る環境が不安定な時にあっても、掘り出し物があることを熟知しているからです。筆者の会社に資産管理を委ねているのは、市場を研究する時間を作り出すためです。その時間でトレンドの理解をすすめ、掘り出し物を見つけることができるのです。
【Mさんの住宅クイックガイド】
①今すぐ始めること
②頭金を貯め(資産投資での成功を目指すうえで最も大変な点)、そして不動産購入すること
③理想的な物件が現れるのを待たないこと。もっと手頃で賃貸での貸し出しが可能な物件を買い、本人は自分の理想とする地域で家を借りること
④基準の設定を確認すること
★ロケーション(都市計画)
★付加価値の可能性(改築による資産価値アップの可能性)
★テナントに問題がない
⑤プロの投資家になるには、所有物件賃貸管理を専門家に任せること
⑥銀行の支店長、不動産管理マネージャー、会計士、弁護士、そして販売のプロといった信頼できる専門家たちのアドバイスを得ること
⑦地域の資産投資家グループに参加し、そこで豊富な情報とサポートを得ること
年間35万NZドル以上の収入を得ているGさんのケース
Gさんは1987年に初めて物件を購入し、今では年間35万NZドル以上の家賃収入を得ています。最初の物件は友人との共同購入でしたが、それから3カ月以内にさらに3つの物件をフォレストレイク郊外に購入しました。
これらすべての物件には共通点があります。いずれも老朽化し、多くのメンテナンスが必要でしたが、同時に多くのリターンももたらしてくれたということです。
Gさんの不動産投資の動機は、「政府には老後必要な年金収入を期待できない」と考えたからでした。そこでGさんは、将来の収入は自分自身で得ようと決意しました。
Gさんは多様な資産ポートフォリオを組みます。彼の資産は、少ないメンテナンス、安定収入、高利回り、良好なロケーション、自己資本増加の見込みが強い・・・といった点でバランスがとれています。市況に関わらず積極的に投資するGさんが、購入物件を査定する際に考慮するのは、「購入価値と自身のポートフォリオ内のバランスにどう影響するか」です。
Gさんは、強力な擁護者のいる「チーム」での投資アプローチを行います。信頼できる専門家で身の回りを固め、契約する前にプロの意見に耳を傾けるのです。彼のチームには、銀行支店長、会計士、弁護士、不動産賃貸管理マネージャー、そして商売の現場にいる人たちがいます。
不動産投資を開始するにあたってGさんが推奨するのは、彼らと「素晴らしい関係を構築する」ことです。また同時に「好奇心が持つ力」も信じています。信頼を寄せるプロたちに沢山の質問をし、得られたアドバイスに注意深く耳を傾け、しかるべき基準を兼ね備えた戦略を打ち立て、その基準に従います。
Gさんもまた、自らが設定した基準を逸脱した時に唯一の失敗を経験しています。1996年に物件を購入した際、専門家に十分な意見を求めないまま、その物件に将来性があると判断したのでした。しかし、その将来性は現実とはならず、結果、18カ月後に損切りをすることになりました。そしてこれを教訓に、より良い物件に再投資を行いました。
Gさんが確信しているのは、「良い物件を買うということは、市場でアクティブにあり続ける方法の1つ」だということです。「しかるべきときに、しかるべき場所にいるだけでいいのです。あなたはそこにいればいい」と、Gさんはいいますが、これはとても賢明な意見だと思います。「しかるべきときに、しかるべき場所」とは、市況、販売動向、そして賃貸傾向を、常に把握しているということです。
「不動産仲介会社から送られてくる情報と、ウェブサイトに掲載された彼らの分析のおかげで、いまでは分析がずっと楽になりました」
「それでも、購買動向を自分で分析する努力を欠かしてはなりません!」
Gさんのポートフォリオには、最近、「家具完備の独立型スタジオユニット」が追加されました。もちろん、これが最後ということではありません。
「家は必要不可欠なもの。ハミルトンの人口増加が、住宅価格と賃料の両方にさらなる上昇圧力をかけることになります」
【Gさんの住宅クイックガイド】
①現役投資家および元投資家たちに沢山の質問をすること
★市況環境をよく知る不動産管理マネージャーから、常にアドバイスを得る
★様々な専門家たちからも、よいアドバイスを得る
★専門家、不動産管理マネージャー、銀行支店長、会計士、商売の現場にいる人などとともに行動する
②利回りがすべてではないと知ること
★利回りも大切だが、これは主要基準には含めない
★必要に迫られるまで売ってはならない
③物件はロケーションが第一
★物件年数による現在の維持費を意識する
★将来的な都市計画などに関連しそうな物件の将来性を見極める
Author Profile
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元ツアーコンダクター。世界を周る中で、オセアニアのニュージーランドとオーストラリアを添乗したことがきっかけで、NZオークランドに移住を決意。淡路阪神大震災を経験したこともあり、1996年にオークランドへ移住実行。
「住居さえあれば暮らしは成り立つ」とワンルームマンションを購入したことがきっかけで不動産業界に参入。
20年間所属していた現地大手不動産仲介会社Harcourts(ハーコウツ)から、2018年創業の新しい不動産仲介会社Arizto(アリスト)Ltdに移籍。デジタル化社会・SNS時代に適合した独自システムを活用しながら、新時代の不動産コンサルタント業務に従事。精力的に活動している。
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